• 「ああ、なぜこんな店が東京にないのだろう」 名古屋「花いち」|マッキー牧元の美味しいから旅をするのだ!

    「ああ、なぜこんな店が東京にないのだろう」 名古屋「花いち」|マッキー牧元の美味しいから旅をするのだ!

    第八千九百七の夜だった。 40年弱営まれてきた店は、名古屋の閑静な住宅街の中で灯りを落とし、ひっそりと佇んでいる。開店から第八千九百七日目の夜だった。「いらっしゃいませ」。いつものように、上品な奥さんと優しい目をしたご主人が挨拶する。流麗な字で書かれた品書きに目を走らせる。 「どれも頼みたい」。この店に来るたびにそう思う。 この店を初めて訪れたのは、2004年だった。最寄り駅から歩くこと15分。ひっそりと住宅街に身を沈め、表札も看板もない。赤みを帯びた黄色い、朽葉色の瓦に生成りの土壁が品を漂わせ、よしずの前には、つつじとむくげが青々と茂って、風に揺られていた。


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