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江戸切子の中で揺らぐ、“凛とした”コーヒー 錦糸町「すみだ珈琲」|RINの行かねば損する東京のカフェ

自称「スコーンの人」。作り手によって千差万別の“個性のカタマリ”、スコーンに魅了され、十数年にわたりカフェを訪ねてはお菓子やお店に表れる店主の「好き」を楽しんでいる、カフェライターRINさんが、「みんな違ってみんないい。 だからカフェって楽しい!」と思わせてくれる、個性豊かな東京のカフェや喫茶店をお伝えします。

カフェや喫茶店を訪れた時、その店がどんなカップでコーヒーを提供してくれるのか、気に留めたことがありますか? デザイン、手触り、飲み口の質感……。あれこれとデコレーションできないコーヒーだからこそ、それを届けるカップには、さまざまなドラマや店主からのメッセージが隠れています。

江戸切子でコーヒーが飲める店。自家焙煎コーヒー店「すみだ珈琲」

ものづくりの街として古くから発展してきた東京・墨田区に、東京スカイツリーが開業してから過日で丸9年が経ちました。近代的でありながらも、伝統的な日本建築に見られるしなやかな曲線美を取り入れたスカイツリー。今回ご紹介する「すみだ珈琲」があるのも、そんなものづくりの精神が息づく、すみだの街。東京の伝統工芸である江戸切子でコーヒーを提供する自家焙煎コーヒー店です。

店主の廣田さんは以前、「子どもの頃、もともと同区内でガラス業を営んでいた父親の商いの関係で、売り物にならない江戸切子を日常的に使っていた」と話してくれたことがあります。墨田区は昔から切子職人が多く集まる街。廣田さんがこの街でコーヒー店を始めることを決めた10年前、「せっかくなら当時の自分のように、お客様にも江戸切子を使ってもらいたい」と、お父様と共同して、熱い飲み物も入れられる江戸切子のコーヒーカップを開発したのだそう。

できあがったオリジナルカップは、七宝や市松などの11パターンの伝統紋様が、青・ピンクの2色ずつで計22種類。メニュー表にはカップデザインが写真付きで一覧になっていて、好きな柄と色を選ぶことができます。

切子の中で輝く、まるで宝石のようなコーヒー

今でこそ、デザイン性や機能性が高い伝統工芸品も増え、現代の暮らしに馴染むようにさまざまに進化していますが、当時はまだそんな動きも活発ではなかった時分でしょう。かくいうわたしもお恥ずかしながら、江戸切子は「高級割烹でブランド酒を呑むグラス」というイメージを長らく持っていました。

「すみだブレンド(浅煎り・中深煎り・深煎り)」のほか、シングルオリジンも数種類ラインアップ。

コーヒーカップの形をした江戸切子をはじめて目にした瞬間は、風情あるその姿に、なんとも言えず涼やかな気持ちになったものです。繊細な細工が施されたグラスの中で、漆黒のコーヒーがキラキラと輝きながら揺れる様子は、重厚感ある焼き物のあたたかさとも、無地のグラスのシャープさとも違う凛とした趣。飲み進めていくごとに、少しずつ紋様がくっきりと見えるようになるのですが、早く全貌を見たいとワクワクする反面、この粋なコーヒーをじっくりと楽しみたいという気持ちが入り混じって、どこかもどかしい……。そんな感情は、幾度か“杯を重ねた”今でも変わりません。

今こそ、すみだの街で江戸文化に触れる時

自家製のコーヒーソースを使った「コーヒーソフトクリーム&ゼリー」は夏の名物メニュー。

先日訪れた際も、「こんなご時世だからこそ、少しの時間でもいいから、江戸切子で美味しいコーヒーを飲む穏やかな時を過ごしたい」と、常連のお客様が多く顔を見せると聞き、心底うなずくばかり。

もちろんコーヒーに合わせて、手作りの焼き菓子やトーストなどの軽食もラインアップされています。粉物のお菓子に目がないわたしは、梅雨だろうと夏だろうと、コーヒーには焼き菓子を合わせるのが好きなのですが、これからの暑い時期には「コーヒーソフトクリーム&ゼリー」もぜひおすすめ。ソフトクリーム、ゼリー、ソースにまで自慢のコーヒーをたっぷり使ったコーヒー三昧のひんやりスイーツです。

昨年の春からは、各種テイクアウトも始まりました。さすがに江戸切子で……、というわけにはいかないものの、テイクアウトカップ、クリアバッグ、そして紙採集家の堤信子さんもおすすめされていたドリップバッグのデザインひとつにも、自家焙煎コーヒー店という立場ですみだの街でものづくりに取り組んできた「すみだ珈琲」の息吹が感じられます。

「江戸切子のカップで、美味しいコーヒー飲んできたよ」と、思わず誰かに伝えたくなる「すみだ珈琲」。なかなか遠くへ旅に出かけられない日々が続きますが、そんな今だからこそ、一杯のコーヒーで江戸文化に触れてみるのもいいものです。

すみだ珈琲スミダコーヒー

住所:
東京都墨田区太平4-7-11
TEL:
03-5637-7783
アクセス:
JR線 ・東京メトロ半蔵門線 錦糸町駅より徒歩10分
営業時間:
11:00〜19:00
定休日:
第2・4火曜、水曜
支払い方法:
現金、一部QR決済
URL:
http://sumidacoffee.jp

更新: 2021年5月24日

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