RESTAURANT

編集部のお気に入りのレストランをご紹介します

本物の自然派ワインが待っている。人形町「ラ ピヨッシュ」| 山脇りこの「行かねば損する東京のビストロ」

ビストロってなんだろ?フランスで言うところの、気楽に食べて飲める、日常づかいのお店。語源はパリにいたロシア人が「ビストロ(早く!)」と言って、料理を急がせたからという説も……。肩ひじ張らずに、食べて飲んで、幸せになる、そんな東京のビストロを、ヴァンナチュール好きの料理家、山脇りこさんがご紹介します。

生産者の魂が宿るワインを。人形町「ラ ピヨッシュ」

人形町駅から歩いて5分ほど。緑とウッドデッキ、ずらっと並んだ空き瓶を目印に。

「ラ ピヨッシュ」と言えば、「自然派ワイン=ヴァンナチュールだ」と私は思っています。これには誰も異論はないはず?!

はじめて行ったのは、アイフォンによれば、2013年の冬のこと(別人かと思ったよ、自分!という衝撃あり)。Facebookでたまたまオーナーである林真也さんの開業時のポストを見たのがきっかけでした。SNSでopenになっているので、引用します。

「La Pioche とは仏語で”つるはし・鍬”の意。
私は約1年間フランス・サヴォワ地方で、
ブドウ栽培を”手作業”で行わせていただく機会がありました。
その作業といったら困難を極め、毎日疲労困憊……。
本物の自然派のワイン生産者たちは毎日こんな大変な思いを……。
しかし、その生産者のみならず、同じような
”思い”のもとに造られたワインたちは、エネルギーに満ち、
生産者の”魂”がより宿ります。
そんなワインたちは人の心を動かし、活力を与えます。
(私はぞっこんです!)」

100パーセント”本物”の自然派のワインと、こだわりの生産者による自然派野菜。原始的にシンプルに炭火で調理する”美味い”肉……今も変わらず、もうこの通りのお店です。

空き瓶が垂涎のラインナップ。

黒板に書かれたメニューの中から食べたい料理の目星をつけたら、「ジーザスクライスト・スーパースター」に出演されていそうな林さんに伝え、ワインを相談する。料理の分量の加減や様子も教えてくれて、お願いすると、今夜のワイン候補が並べられます。あとは、勘でいいし、勘でもいいし、勘でいいんじゃないかな。そう、この店ならば。

ヴァンナチュールが好きですか?

メニューは黒板に。あれも、これも、といつも迷う。

ところで、ヴァンナチュール=自然派ワインが好きですか? 自然派とかそうじゃないとかにこだわらず、美味しいと感じるワインが好き……それ! ほんと、正解だと思います。なのに、なんで私がヴァンナチュールしか飲まないぞ! といつも心の中で叫んでいるのか。そもそもヴァンナチュールとはなにか? っていうのはまた別の話、ここでは端折るとして(わからない方はググってくださいませ)。

ある日のメヒカリのフリット。カリッと、衣も美味しい。

私のヴァンナチュールと出会いは、2005年のこと。通っていたとある料理学校で、フランスから帰国したばかりのシェフが試食の時に必ず出したから。それはそれはそれは、強烈な出会いでしたよ。「なんだこれは? 謎の香りのぶどうジュースか?」 とか、「馬糞の香り?」 とか思ったのを印象深くおぼえています。総じて、これは果たしてワインなのだろうか? とww。

その数年後、「このワイン、これまでで一番好きかも?」とぞっこんほれ込んだワインが、マルセル・ラピエールという人が造ったガメイ(!)の赤だと知り、「これぞヴァンナチュールだよ!」と教えられ、「ええ? あの時の? あの驚いたワインのな・か・ま? しかもなにこれ、1本飲んでも悪酔いしないぢゃないかー!」と。

ヴァンナチュールがある店を探せ!そこに、キラ星のように現れた。

この日は、Rive Droiteに。ロワール。右岸の意味。たしか、これもヴァンクールさんだったと思う。

さらに時は過ぎ、2011年。「どうしたらあの子! がいつも飲めるのか?」。いろいろ探していた私。友人から「知り合いにナチュールワインだけを扱う会社を立ちあげた人がいて、とっても美味しいんだよ」と、インポーターである「ヴァンクール」さんの存在を教えてもらいました。「そうか、裏に“ヴァンクール”って書いてあるワインを買えばいいんだよ」と学習。合わせて、同じようなインポーターさんを複数知り、そんなインポーターさんのワインを主に扱う酒屋さん(東京・大森にある『はしごや酒肆』さん。今も99パーセント、こちらで購入しています)を探し当てました。

しかし、当時は今のように「ヴァンナチュールが標準装備」「ヴァンナチュールがないなんてありえない」という状況ではなかった。どうでもいい私の話が長くなったけど、そんな中でみつけたのが、林さんのあの言葉だったのです。

ヴァンナチュールの世界がぐんぐん広がるラインナップ

アスパラ太目ちゃんは、炭火で。ブロッコリーもうれしい。

お店に行ってみたら、ワインは100パーセント、ストレスフリー(私にとって)。そして、料理がとっても美味しかった。最初に感じたのは、野菜が別格だってこと。それらに合わせて、見たこともなかったワインもいろいろ発見し、多様なヴァンナチュールの探し方のヒントをいただきました。

その後、どんどんヴァンナチュールは進化し、造り手さんも増え、インポーターさんも素敵な造り手さんをすごい勢いで発掘してきて、それが飲めるお店も増えました。今は、ヴァンナチュールだけがいいとは言わないけど、それを1本もおいていないお店ってどうなんだろう? と思うまでになりました(あくまで個人の感想です)。

魚も美味しいのだ。特にカルパチョのファン。

過日、“肉の神様”こと、滋賀の精肉店「サカエヤ」の新保吉伸氏が、北海道・様似(さまに)の完全放牧牛ジビーフを「林さんがどんなワインを合わせてくるか? それが楽しみで『ラ ピヨッシュ』に送った」と。生産者さんも、仲卸さんも、シェフやソムリエさんも、「これに林さんなら何を合わせる?」と、そう考える。私たちは、「こうきたかー!」を楽しみに、嬉々としてただ席に着けばいいのです。なんて幸せなんだ。

 

蘊蓄無用、ただそこに座れば「おいちー」と身体に染みるワインが!

肉もまちがいなし。豚、羊、牛、鶏、など選択肢も充実。こちらは短角牛。

はじめはシンプルに、「悪酔いしない」が理由で飲みはじめたヴァンナチュール。今もそれは私にとって大きな魅力です。特に最近は、「なんで悪酔いしないのか?」、すこぶる気持ちのいいほろ酔いでつらつら考えると、ちょっと空恐ろしい気持ちになるのです。だってね、身体に負担がかかる何かが、悪酔いワインには入っているんじゃないかって思うから。

世の中には食べすぎちゃだめだよって言われる食材が多々あるけど、ここまでわかりやすいものはそんなにないんじゃないかしらん? 「一晩でできる人体実験」と、私は呼んでいます。“馬糞の香り”から早16年、私が変わったのか? もはや、あちらのワインは別の酒類とまで思っています。過日も、「ラ ピヨッシュ」へ伺った次の日の朝、「ワインも料理も、翌日に重い影を落とさないステキさ」を再確認しました。

数か所だけど、フランスでヴァンナチュールの造り手さんを訪ねてみたら、林さんが書かれている通り、「なんでそこまで?」な大変な作業を、情熱で成し遂げている人々がいて、ホント泣けました。立っていられないほどの急斜面でぶどうと話す人、樽に耳をあててワインの声を聴く人。真っ当なワインを造りたい、自分や家族が飲むからね、って。魂込めて造られたものは強いです。

デザートはプリン。めちゃくちゃ美味しいの.

もし、これからヴァンナチュール=自然派ワインを……という方は、まずは林さんの元へ行くのをおすすめしたい。ややこしい蘊蓄は抜きで、ただ、席に着けば、「おいちー! 幸せ」と思う。そして、翌朝の爽快さが約束された“魂のこもったワイン”を出してくれます。

山脇りこ

山脇りこ

料理家。東京・代官山で料理教室「リコズキッチン」を主宰。雑誌、テレビ、ラジオなどでも活躍中。「グルマン世界料理本大賞2014」で「昆布レシピ95」がグランプリ受賞。「明日から、料理上手」(小学館)、「いとしの自家製」(ぴあ)など著書多数。旅好きで、美味しいものがあると聞けば、どんなに遠くてもでかけていく、食いしん坊。http://rikoskitchen.com/

La Pioche ラ ピヨッシュ

住所:
東京都中央区日本橋蛎殻町1-18-1
TEL:
03-3669-7988
アクセス:
東京メトロ水天宮前 徒歩2分、日比谷線・東西線 茅場町 徒歩5分、東京メトロ日比谷線・都営浅草線 人形町から徒歩6分
営業時間:
[月~金] 17:30~翌1:00(L.O.23:00)  [土・日・祝] 16:00~24:00(L.O.23:00)  ※コロナ中は変更あり。お店にお問い合わせ下さい。
定休日:
不定休
支払い方法:
カード可 (Visa.Master)・電子マネー不可
URL:
https://www.facebook.com/2013lapioche

更新: 2021年3月27日

この記事が気に入ったら
「シェア」しよう

最後までお読みいただき、ありがとうございます

他のRESTAURANT記事を見る

おすすめ記事を見る


pagetop