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熟練の酒飲みが集う居酒屋 渋谷「高太郎」|マッキー牧元の「行かねば損する東京の和食」

1年間の外食数は600軒以上。高級店からB級までをくまなく知り尽くすタベアルキスト、マッキー牧元さん。食べ歩きのプロ中のプロに、今行くべき東京の和食店を教えてもらいます。

さあ飲むぞ、と気分が高まる。渋谷「高太郎」

居酒屋は、古いほどいい。
カウンターに、壁に、天井に染みた時と客の愛情が、心をほぐし、酒をうまくするからだ。その道理は変わらない。だが、その道理が揺らいだのが「高太郎」だった。初めて訪れたのは、開店直後の2011年の秋だったと思う。当時30代だったご主人の林高太郎氏は、数々の店で働き、この店を開店させた。

初めて訪れた時、つき出しからしてやられた。
季節によって銘柄を変える大豆の煮浸しと青菜の浸しが出されるのである。季節への敬意に満ちて清々しく、煮豆という心憎い演出に、「さあ飲むぞ」という気分が高まっていく。

緩急自在な酒のレパートリー

酒の揃えもいい。
宗玄、喜久酔、石槌、七本槍、貴、秋鹿、凱陣、いずみ橋、竹雀、酔右衛門と十蔵に絞り、深めていく潔さ。それぞれに純米や純米吟醸、山廃など3種以上を揃え、店の方に任せれば、宗玄2種類、七本槍、悦凱陣と次第にボリューム感を、上げていってくれる。しかも、常温、ぬる燗、熱燗と、料理や酒に合わせて巧みに出してくれる。

酒飲みのツボをつく、数々のつまみ

料理がさらにいい。
旨みがのった、充分吟味したことが伝わるお造りはもちろんのこと、野菜料理が多く、ここもまた酒飲みのツボをつくところである。

例えば、
スペシャリテは、ポテサラとメンチカツで、一風変わった薫玉ポテサラは、淡い味のポテサラにドレッシング、玉子を合わせ、皿の上で初めて完成する味である。その仕組みに気づいて、また酒が進む。
メンチは肉の香りが素晴らしく、豊かな肉汁に秋鹿を合わせれば、一挙に力強く膨らんで、もう笑いが止まりません。酒をうまく飲まそうってえ魂胆がたまらない。ちきしょうめ。締めは炊き込みご飯もいいが、店主が毎日打つ讃岐うどんが待っている。つるると手繰り、コシに頷けば、もうあなたは戻れない。来週も来ちゃうぞ。

「お燗も料理だと思うんです」。酒飲みを喜ばすご主人の言葉

最後にご主人がいい。

料理のリズムよく、気負いが出ず、料理を作るのが楽しくてしょうがないという気配があって、その幸せ感が憑依するのである。だから、酒をちょいと飲み過ぎちゃう。肴を頼み過ぎちゃう。この危うさ。実はこの危うさこそ、酒飲みが、心底好むものなのです。こうして「高太郎」は瞬く間に人気店となって、予約至難の店となった。渋谷という土地柄で、最初は若い客も多かったが、次第に大人が集う店へと変わっていく。酒もいい、料理もいいとなれば、熟練の酒飲みが集うのは当然だが、それ以外に魅力は隠されていた。

ある日林さんが言われた。「お燗も料理だと思うんです」。その日の圧巻の一つは、突き出しに続いて出された、豆腐に合わせた「喜久酔特別純米」のぬる燗である。滋賀の「ごんざ」という豆を使った池袋「大桃豆腐」製の絹ごし豆腐に藻塩をかけただけのシンプルな皿に合わせられた。ぬる燗といっても、少しぬるさを感じる程度の日向燗に仕立てられた酒は、舌の上でそっと甘みを開く。口の中に入れた豆腐が、豆の甘みと香りを広げ始めた瞬間に、酒を少し呑み、合わせる。するとどうだろう。豆の甘みが軟らかくなって、ほんのりと色気が刺すではないか。この組み合わせと温度を考えたのは、大和優菜さんという女性の酒担当である。その後、彼女は巧みな温度で肴に合わせ、あるいは2種の日本酒を合わせたり、赤ワインと合わせたりと、様々な工夫で我々を喜ばせた。

「肴にどう合わせるかももちろんですが、それだけではなく、お客様がどんな風に料理や会話を楽しんでいらっしゃるか、お酒の進み具合はどうか、それを感じ取って酒を選び、燗の温度を変えたり、常温や冷を選んでいくことが大事だと思っています」

料理や酒が美味しいだけではない。この林さんの言葉こそが、「高太郎」が人気居酒屋となった理なのである。




(取説)

「高太郎」は現在16時開店、20時閉店。日曜は14時開店。以前は深夜まで営業していたが、時短要請がなくなっても16時開店、23時閉店予定だという。予約の電話は営業中は不可なので要注意。予算は、酒を飲んで8,000円から12,000円。以下、ある日の料理と酒を記す(★は合わせられた酒)。

青菜と鞍掛豆
★七本槍の濁りとビール

お刺身――ヒラメ、釣り鰺、シャコ、さわら酢締め炙り、酢飯を添えて
★宗玄の常温

占冠村伊達さんの百合根「白銀」素揚げ
★長珍常温

占冠村伊達さんの百合根「白銀」素揚げ
★長珍常温

酒肴3点盛り合わせ――茶ぶりあかなまこ、花ワサビとささみ、レンコンとアオリイカ明太子和え、燻製卵ポテトサラダ
★秋鹿   ★旭菊

讃岐メンチカツ
★七本槍

大桃さん厚揚げの揚げたて
★竹雀 ★群馬泉

釜揚げしらすとクレソンのサラダ トマトフライドポテト粒マスタードドレッシング
★梅酒と白ワインのカクテル

トマト肉豆腐
★悦凱陣

土鍋ご飯
ぶっかけうどん
八朔餅とイチゴアイス




 

マッキー牧元

マッキー牧元

1955年東京出身。㈱味の手帖 取締役編集顧問 タベアルキスト。日本国内、海外を、年間600食ほど食べ歩き、雑誌、テレビなどで食情報を発信。「味の手帖」「朝日新聞WEB」「料理王国」「食楽」他連載多数。三越日本橋街大学講師、日本鍋奉行協会顧問。最新刊は「出世酒場」集英社刊。

高太郎コウタロウ

住所:
渋谷区桜丘町28-2
三笠ビル 1F
TEL:
03-5428-5705
アクセス:
JR山手線・埼京線など各線渋谷駅より 徒歩5〜8分
営業時間:
16時開店 20時閉店。土・日曜は14時開店。 ※時短要請解除後は,16時開店 23時閉店予定
定休日:
月曜日 第一第三火曜日 イベント参加などの場合は定休日変更あり。
支払い方法:
カード可 (JCB、AMEX、Diners、VISA、Master)・ 電子マネー不可
URL:
https://www.facebook.com/sibuya.kotaro

更新: 2021年3月8日

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