六本木の喧騒の中にパリ。定番をきっちりと。ビストロ「Ma Cuisine」| 山脇りこの「行かねば損する東京のビストロ」
ビストロってなんだろ?フランスで言うところの、気楽に食べて飲める、日常づかいのお店。語源はパリにいたロシア人が「ビストロ(早く!)」と言って、料理を急がせたからという説も……。肩ひじ張らずに、食べて飲んで、幸せになる、そんな東京のビストロを、ヴァンナチュール好きの料理家、山脇りこさんがご紹介します。
Openから1年でビブグルマンに
“イカソン(行かねば損する東京のビストロ)”でご紹介したい! と思いながらぼやぼやしていたら、 openからわずか1年あまりで、あれよあれよと「ミシュラン2021」で、ビブグルマンになってしまった、いや、なるべくしてなった「Ma Cuisine」。
ビブグルマンの“ビブ”はミシュランのマスコットキャラクターであるビバンダム(Bibendum)の愛称だそうだけど、思えばちょっとシェフに似ているような気がする(すみません)。なにしろ笑顔が優しくって、全身から美味しいオーラが放たれてるんですもん。
百戦錬磨のグルメ3賢人も太鼓判
入口は、六本木通りに面したビルの地下なので見逃さないように。
こちらを知ったきっかけは、私が密かに信頼を寄せて追いかけているグルメ3賢人が、目を細めて喜び、ほめていたから。3賢人それぞれは全くつながっていなくて、それぞれ別のタイミングで訪ねているのに、そろって絶賛。美味しいもの好き、流行の料理になびかない、百戦錬磨の外食回数、店にこびない3人。うむ、行くしか あるまい……ってことでグーグルマップを見ながらたどり着いたのは、六本木のほぼ真ん中。国道246号線に面 したビルの地下。
ドアをあけると、「バー? と思うような内装に、ちょっとひるんだ」と賢人の1人が言っていたとおり。しかし メニューを見れば、今ではもうフランスのビストロでですらもめったに食べられなくなった伝統的な料理から、 軽やかな今どきの料理までずらり。その中に、しっかりと東京の旬が忍ばせてあり、悩みに悩む。なにしろ、種類も多いのだ。
「美味しい」が思わず飛び出す、絶妙な味
「フロマージュ・ド・テット」。見よ、この美しき仕事。
1皿目に選んだのは、ビストロらしい料理ながら、そうそうお目にかからない「フロマージュ・ド・テット (fromage de tête)」 。豚の頭、そのほかの部位のいわば煮こごりだ。薄くスライスされた姿が美しい、伝統的なスタイル。こちらもあまり見かけなくなった、グリビッシュソースが添えてある。マスタードをオリーブオイルで乳化させて、そこに赤ワインビネガー、エシャロット、パセリ、ケッパー、コルニッションのみじん切りなど、店によってお好みのハーブが加えてある。こちらはさらりと上品な仕上がり。
いやはや、美味しいじゃないかー! どうぞ、ボキャ貧とディスってください。思わずその言葉が出たのだから仕方ない。豚の臭みはよき香りに変貌してきちんと存在し、全体のしまり具合が何とも絶妙。ほどよくきりり、しかし堅物すぎない。これは、賢人たちが唸るのもわかる。
グランメゾンで研鑽を積んだ本格派のシェフ
シーズン盛りだったキノコ類を合わせて。塩はきつすぎず、香りを殺さず、そしてキノコなのに、食べ応えがある。
池尻綾介シェフは、フレンチ好きの女子なら知らない人はいない、一斉を風靡した「白金 シェ トモ」のシェフを経て、渡仏。シャンパーニュ地方の星つきの名店で研鑽を積み、帰国。「ひらまつ」の本店や「メゾン ポール・ポキューズ」で腕を振るった本格派だ。グランメゾンのような美しき料理には、理由がちゃんとあるのですよね。
季節を閉じ込めたテリーヌは、切り口ぴしっと、美しい。
フォアグラが鎮座する季節のテリーヌは、フォアグラだけど品よく、美しい断面に萌える。切り口、食材の並び、バランス、完璧だ。カジュアルな中に、まがいものではない確かな技術が潜む。それこそがシェフの、「マ・キュイジーヌ」の、真骨頂なのだと思う。器も、ときにあえて、グランメゾンのようなチョイスで、料理がさらに輝いている。
ワインだけではない。ハイボールなチョイスも◎!
どうしても食べたくなった、「ミラノ風のカツレツ」。これが完璧だった! ハイボールがマッチ!
特筆すべきは、ワイン以外の選択肢もあるということ。ウイスキーは7、8種。シングルモルトも充実している。糖質ゼロで人気のハイボールも愉しめる。ぜったいワイン! と思い込んでいたビストロ料理に、ハイボールも合うじゃん! と発見した。もちろん、ワインも充実している。
メニューは季節で変わり、冬場はおいしい牡蠣も!
お隣にいたお客様は、「ここのカスレが忘れられなくて、来ちゃったよー」と。ふむふむ、これからの寒い夜、それは確かに魅力的。次回は! と誓った。
すっかり、リヨンか? パリの路地裏か? という気分で外へ出たら、六本木の喧騒。タイムスリップしたかのようで、ヒルズの明かりが、ブレードランナーみたいだった。
※FBをフォローするのがおすすめ。漫才のようなくすっと笑える投稿が楽しい。
山脇りこ
料理家。東京・代官山で料理教室「リコズキッチン」を主宰。雑誌、テレビ、ラジオなどでも活躍中。「グルマン世界料理本大賞2014」で「昆布レシピ95」がグランプリ受賞。「明日から、料理上手」(小学館)、「いとしの自家製」(ぴあ)など著書多数。旅好きで、美味しいものがあると聞けば、どんなに遠くてもでかけていく、食いしん坊。http://rikoskitchen.com/
Ma Cuisineマ・キュイジーヌ
- 住所:
- 東京都港区西麻布1-2-14
デュオ スカーラ西麻布WEST B1F - TEL:
- 03-6455-4426
- アクセス:
- 東京メトロ・都営地下鉄 六本木駅より徒歩約7分。
- 営業時間:
- 18:00〜翌3:00(L.O 2:00) ※東京都の自粛要請などにより、営業時間は変更することがあります。
- 定休日:
- 水曜日
- 支払い方法:
- カード可 (VISA、Master、AMEX) 電子マネー不可
- URL:
- https://www.facebook.com/nishiazabu2019/
更新: 2021年1月15日
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