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RESTAURANT

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タベアルキストが唸った新しい鮨屋 表参道「鮨あお」|マッキー牧元の「行かねば損する東京の和食」

1年間の外食数は600軒以上。高級店からB級までをくまなく知り尽くすタベアルキスト、マッキー牧元さん。食べ歩きのプロ中のプロに、今行くべき東京の和食店を教えてもらいます。

超有名店の一番弟子が満を侍してオープン

マコガレイ

久々に、美しい握りに出合った。

溜塗(ためぬり)の鮨板に置かれた握りは、凛として揺るぎない。
酢飯は、扇の地紙型に整えられ、魚とのバランスも、申し分ない。
手をつけるのをためらい、しばらく眺めていたい美しさがある。
彼の師匠に尋ねたことがある。

「もし今の若い鮨職人に言うことがあるとすればなんですか?」

90を超えた彼は答えた。

「握りなさい。とにかく握りなさい。寝る間を惜しんで握りなさい」

師匠とは、「すきやばし次郎」の小野二郎氏である。
「すきやばし次郎」に行くと、板場にいつもすきっとした青年が立ち、仕事をしていた。息子さんの小野禎一さんの左横に立ち、魚を切る。小野二郎さんが不在の時は、小野禎一さんの左横に立って、寿司を握っていた。いつも仕事姿が綺麗だなあと思っていた職人である。厳しいことで知られるその店で十数年も修業され、一目置かれるようになった。

岡崎亮氏34歳。「すきやばし次郎」史上最高の弟子と呼ばれた男である。彼は独立し、今年6月に表参道にて「鮨あお」を開店した。訪れて驚いた。

修業先へのオマージュを感じさせる店内

とり貝

カウンターが素晴らしい。白木ではなく、一面、拭き漆で塗り重ねられている。白木と違い、食べるこちら側の背筋をまっすぐにさせるような品格がある。昔一流の鮨店や割烹のカウンターは、皆、漆塗りだったという。「すきやばし次郎」がそうであるように、修業先へのオマージュなのだろう。まだ若いのに、その心根がなんとも嬉しかった。

夜のおまかせコースは27,500円(税別)〜で、つまみが6品、握りが17種類という構成である。水曜と土曜日のみ、お昼もやっていて、そちらは握りのコースで23,000円(税別)〜になるという。

握りへと誘うおつまみ

アオリイカとエビ、ウニの卵黄醤油和え

「おつまみの仕事ははじめてなので、勝手がわからなくて」と言っていたが、僕がいただいた時には、食感の対が楽しい「まだことじゅんさい」、香り高い「蒸し鮑」、思わず酒が恋しくなる「アオリイカとエビ、ウニの卵黄醤油和え」、品のある甘みに思わず頬が緩む「蒸し甘鯛」など、それぞれに美味しさがありながら、握りの前につまみの味が出過ぎない意味を知った仕事だった。

そして握りである。

完成度の高い鮨飯とネタ

シマアジ

ここ4〜5年で新しくできた寿司屋の握りの中では、群を抜いている。

まず酢飯が素晴らしい。人肌に整えられ、酢と塩がきっちりと効いた酢飯は、魚の輪郭を明確にし、その旨みと見事に抱き合う。しっかり絞められたコハダと出合った時、互いの酸味が一緒になって喉を鳴らす。シマアジの品のある脂の甘みを受け止め、優美に口の中を舞う。赤身のきりりとした酸味と抱き合い、勇壮な味わいを膨らます。最近の赤酢を使った旨みのある酢飯もいいが、こうした酢飯をいただくと、これこそスキッとして飾らない江戸っ子の粋ではないかと思う。

イワシ

ネタの数々も、一流である。

大トロ

次郎譲りのイワシやアジは、キレのいい脂がみっちりと乗って、繊維がないかのように、ムースのごとく消えてゆく。中トロや大トロは、脂がなんとも上品で、瞬く間に舌と同化する。とり貝は分厚く、メロンのような香りが鼻に抜けていく。

スミイカ

赤身

なかでも素晴らしかったのは赤身である。なんともキメが細かく、しなやかで滑らかである。口に運び、噛み、上顎に押し付けるようにして潰すと、爽やかな血の香りに酢飯の香りが寄り添い、鉄分の滋味が舌を刺す。これぞ赤身の握りの醍醐味である。

将来が楽しみでならない、有望な鮨職人

穴子

そして最後は玉子が出される。

「すきやばし次郎」では長年玉子を焼いていた。卵に大和芋と海老を入れて、丹念にあたり、1時間かけて焼く。できるようになるまでには、早い人でも1年かかるという。卵の自然な甘みを、素直に出した味わいが優しい。中心をレアに、しっとりと仕上げてあって、それがどうにも色っぽい。ここでは、新しくロール状に少量の酢飯とくるりと巻いた玉子巻きにして出してくれる。

つまみを食べ、握りを17種類食べた。もうお腹は満腹なはずである。しかし、まだ食べたいという欲求が渦巻いていて、鉄火巻きとおぼろ巻きを頼んでしまった。いい鮨とはそういうものである。現実的な満腹感覚を超えて、さらに食べたくなる。

ああ。今後、彼の鮨がどのように成長していくか、楽しみでたまらない。

マッキー牧元

マッキー牧元

1955年東京出身。㈱味の手帖 取締役編集顧問 タベアルキスト。日本国内、海外を、年間600食ほど食べ歩き、雑誌、テレビなどで食情報を発信。「味の手帖」「朝日新聞WEB」「料理王国」「食楽」他連載多数。三越日本橋街大学講師、日本鍋奉行協会顧問。最新刊は「出世酒場」集英社刊。

鮨あおスシ アオ

コースの値段は文中に記した。酒は神雷、新政エクリュ、七本槍など、ほかの鮨屋では見かけない、センスのある品揃え。開店後より満席が続く。予約は予約サイトOMAKASEからのみ受付。

住所:
東京都港区北青山三丁目10番13号
FPG links OMOTESANDO B棟2F
TEL:
03-6450-5235
アクセス:
東京メトロ銀座線・千代田線・半蔵門線「表参道駅」B2出口より徒歩2分
営業時間:
昼(水・土のみ営業/1回転制)12:00〜 / 夜(2回転制)①17:30〜 ②20:30〜
定休日:
日曜/第1・第3月曜/祝日の月曜
支払い方法:
カード可 (VISA、Master、JCB、AMEX、Diners)
URL:
https://sushiao.co.jp/

更新: 2020年9月4日

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