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保守舌も冒険舌も口福なお持ち帰り。荒木町「の弥七」|サトタカの「行かねば損する東京の中華料理店」

中国料理に魅せられて、国内はもとより中国にも足繁く通って取材する中国料理探訪家・サトタカさん。“中国を食べ尽くす”プロに、今行くべき東京の中華料理店を教えてもらいます。

食いしん坊にもいろんなタイプがいるが、私の周りの食いしん坊は、大きく2タイプに分かれるようだ。

まずは好奇心旺盛な「冒険舌」タイプ。彼らはなんでも食べようとし、実際に食べ、味覚の幅を広げていく。そしてもう一派が「保守舌」タイプ。食べることをこよなく愛しているが、実は冒険はしたくない。自分の感性が認めるおいしいもので満たされたいのが、このタイプだ。

そして保守舌の発見は、ある日突然やってくる。ちょっと変わった料理に対し、相手の箸が進んでいないことが目に留まり、「おや…?」となって気づいたりするのだ。身近で思い当たる人、いるでしょう? 私の身近なところでは、夫である。

とはいえ、おいしい出合いを求める気持ちは、冒険舌も保守舌も等しく高い。では、そのどちらをも満足させるチョイスとは、どんな料理なのだろうか。現時点で、私の解はひとつある。

既知の料理と食材の掛け合わせで、新鮮な感動を生み出す店。

それは、誰もが知る〈冒険しなくていい料理〉を、表現したい料理に合わせて〈適切かつ上質な食材〉を使い、結果的に新鮮な感動をもたらしてくれる店だ。

知っている料理という安心と、吟味された食材という安心を掛け合わせ、「おっ、やるなあ」という新鮮な気持ちにさせてくれるなんて、なかなかハードルの高い超保守のようだが、ここは〈アウトプットが新鮮〉というところが肝である。例えば、荒木町の「の弥七」がそうだ。

「の弥七」店主の山本眞也さんは、和食と中華両方の技法をシームレスに使いこなし、独自の料理を作り上げてこられた方。

2014年の開店当初は「これは中華なの? 和食なの?」という疑問を呈するお客さまも少なくなかったそうだが、今ではその世界観と料理とを丸ごと楽しんでくださるお客さまに支えられ、このコロナ禍でも安定した営業を続けている。

聞けばなんと、リピーターが9割。妥協なき食材で、華美にならず、日本人がしみじみおいしいと思う中華を作ろうと、自ら信じた道を貫いた結果だと思う。

店内はゆったりとしたカウンターと広めの個室。現在は1日4組までに制限し、ゆったりと使ってもらっている。

そんな山本さんの店で、常連のお客さま向けに作っている、お持ち帰りの詰め合わせを先日注文した。これが、各店いろいろあるお持ち帰りの中でも、群を抜いてクオリティが高く、思わず唸ってしまった。

箱の中に詰められているのは、麻婆豆腐、エビチリ、春巻や叉焼など、ぱっと見定番の中華。しかし、口にして驚いた。山本さんがこの6年間で積み上げた揺るぎないものが、ここに詰まっていたからだ。

こちらが2箱で6,000円(税込)。円盤型のオードブル容器に盛り付けた4人前1万円(税込)もある。

「エビチリには、活けの車えびを使っています。ここで店の料理と差をつけて、食材の質を落とすのは嫌だなと思って」

「よだれ鶏っていろんな店で食べられますよね。なら、その味付けや食材に季節感があってもいいなと思うんですよ。それで『よだれ蛸』を作ったんです。蛸は佐島の蛸ですが、この下処理の仕方は日持ちしないので、日本料理でも中華でもやらない方法です。これがめっちゃおいしいんですよ」

「卵焼きはニラ玉のイメージなんです。これもめっちゃうまい! 実はちょっと蝦醤(えび味噌)を使っています」

持ち帰る前に、料理について山本さんに料理の話を聞いている時間の、なんと楽しく、幸せだったこと! そう、私は信頼している料理人が「これめっちゃおいしいです!」と自信をもって言える料理こそ、最高だと思っている。作り手自身がその味に満足しなければ、食材も料理も“成仏”しない。迷いない言葉を聞いて、うれしかった。

そして帰宅して食べた料理のおいしかったこと……! 当然、保守舌の夫も、冒険舌の私も、満足したことはいうまでもない。

料理はその時々で変更があります。この日のお持ち帰りは、活けの車海老チリソース、赤こんにゃく入り麻婆豆腐、叉焼、北斗大豆の甘炊き、桜海老入り隠元の干煸(ガンピィエン)、エビ味噌入りニラ玉、海老と原木しいたけの春巻き、昆布出汁ジュレがけよだれ蛸、茄子豆腐。2人前6,000円(税込)、4人前10,000円(税込)。ごはんはつきません。暑くなってきましたので、お持ち帰り後はすぐにお召し上がりください。

注文方法:電話で予約してください。

サトタカ(佐藤貴子)

サトタカ(佐藤貴子)

食と旅を中心としたエディター、ライター、コーディネーター。大学卒業後、大手エンタテインメント企業で映像や音楽コンテンツの仕入、映画のPR等を務めた時、担当した映画監督が大の中華好きだったことから中華にハマる。
独立後、中華食材専門商社の小売向ECサイトの立ち上げと運営を通じて中華食材に精通。雑誌、会報誌、ウェブ等で中華に関する執筆多数。中華がわかるウェブマガジン『80C(ハオチー)』ディレクター。さまざまなテーマの中華食事会も企画する。

の弥七ノヤシチ

住所:
東京都新宿区荒木町2-9
MIT四ッ谷三丁目ビル 1F
TEL:
03-3226-7055
アクセス:
東京メトロ丸の内線「四谷三丁目駅」より徒歩3分
営業時間:
昼 11:30~14:30(予約のみ) 夜 17:30~21:00(最終入店時間)
定休日:
日曜日
支払い方法:
各種クレジットカード可
URL:
http://noyashichi.com/

更新: 2020年8月14日

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