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新小岩「貴州火鍋」で発酵・鍋・ドクダミ・唐辛子の世界へ!|サトタカの「行かねば損する東京の中華料理店」

中国料理に魅せられて、国内はもとより中国にも足繁く通って取材する中国料理探訪家・サトタカさん。“中国を食べ尽くす”プロに、今行くべき東京の中華料理店を教えてもらいます。

火鍋というと、辛くて痺れる麻辣味をイメージする方が多いかもしれない。しかし、火鍋とは中国における鍋料理の総称であり、辛くなくても火鍋だ。今回ご紹介する「貴州火鍋」の店名も、直訳すると「貴州の鍋料理」という意味になる。

貴州料理の特徴は醗酵・鍋・ドクダミ・唐辛子

とはいえ「貴州」にピンとこない人が多かろう。そもそもこの地域は、留学生や駐在員の間で「貴州省と青海省だけは最後まで行かなかった」なんていわれる場所。「天に三日の晴天なし、地に三里の平地なし」という言葉もあるほどで、長らく中国の経済発展から取り残されてきた(最近はちょっと違うが)。

 

しかし、私がここ数年訪れた場所の中で、最もハマってしまった場所がここ貴州だった。省都の貴陽こそ大都市だが、山深い地域のあちこちに、苗(ミャオ)族、侗(トン)族、水族など、少数民族の集落が点在しており、集落の美しさもあれば手つかずの自然もある。

侗族が住む集落、肇興村(ちょうこうむら)を高台から臨む。

「文化は辺境に残る」という言葉もあるとおり、とりわけ食文化のユニークさは一周回って世界最先端。その特徴を4つにまとめると、醗酵・鍋・ドクダミ・唐辛子だ。

めくるめく貴州の醗酵鍋の世界

そこで鍋の話に戻るが、貴州省には鍋料理のバリエーションが非常に多い。鍋の味のベースになるものを中国では鍋底というが、貴州ではこの鍋底にさまざまな醗酵食材を使うのがユニークだ。

醗酵の素となるのは、トマト、青菜、米のとぎ汁、わらびなど多種多様。これらを乳酸醗酵させた酸味と旨みは独特のものであり、初めて食べる人にとっては「こんな味があったのか!」という新鮮な感動が沸き上がること必至。「貴州火鍋」では、仕込み済の鍋底があれば、発酵トマトの鍋・紅酸湯(ホンスァンタン)が味わえる。

高菜を発酵させた漬物。そのまま食べてもいいし、炒めたり鍋底にしたりする。ピンクのドリンクは実は高菜醗酵の汁。まろやかな酸味なのでそのまま飲んでも美味しい酵素ドリンク。

発酵トマトをベースにした紅酸湯(ホンスァンタン)。

そして乳酸醗酵ではないが、異なる醗酵風味で日本人もハマる鍋といえば「豆豉火鍋(とうちひなべ)」。端的にいうと干し納豆の鍋だ。

豆豉火鍋の仕込みの様子。

何を隠そう、私が貴州料理で最初にハマったのがこの火鍋。豆豉(とうち)というと、一般的に黒くねっちょりとした大徳寺納豆のようなものを指すが、貴州省では蒸した大豆を葉で包んで納豆を作り、それを乾燥させたものを干豆豉と呼ぶ。

しかし、現地の農村で作られる貴州の干豆豉は、日本では手に入らない。そこで、ここ「貴州火鍋」では、日本の納豆に塩をし、天日干しにして風味を凝縮。見事、豆豉火鍋を再現したのだ。

もちろん「貴州火鍋」という店名だからといって、鍋料理だけではない。この自家製干豆豉をたっぷり使った炒めものも、納豆を食べ慣れた日本人になじみやすくおすすめの一皿。豆の粒感や味わいも、改めてしっかりと感じられることだろう。

干豆豉と豚肉の炒め。ごはんが進みまくる一皿。

ほかにも、発酵唐辛子で魚一匹をまるっと煮込んだ糟辣魚(ざおらーゆい)、自家製の腊肉(ラーロウ:干し肉)と野菜の炒めも味わってほしいし、チャレンジャーならドクダミの根も試したいところ。なぜならドクダミは貴州料理と切ってもきれない存在。炒めて食べることもあれば、鍋のつけだれとなって、香菜に負けずとも劣らぬ存在感を発揮する。

糟辣魚(ザオラーユイ)。魚は季節によって変わるが、スズキなどを使用。

ドクダミの根と自家製腊肉(ラーロウ:干し肉)。ハマるとクセになる。常時あるわけではないので、事前に問い合わせを。

余談だが、貴州省は中国の中でも新型コロナウイルスの罹患者が圧倒的に少なく、「やはりドクダミの抗菌効果が……」なんて噂がSNSではまことしやかに流れていた。最近はドクダミ入りヨーグルトが発売されたそうで、これまた貴州ならではといえる。

辛さは貴州人のおもてなしの心の現れ?

ちなみに貴州省だけでも日本のおよそ半分の面積があるため、同じ省内でも、地域によって食文化には違いがある。

その視点で見ると、「貴州火鍋」は辛さの勝る地域だ。店主・林さんと料理を手掛ける義理のお姉さんは、ともに貴州省北部の遵義(じゅんぎ)出身。遵義といえば中国最大級の唐辛子市場がある場所で、遵義産といえば中国でもトップブランドだ。

遵義郊外の蝦子鎮にある唐辛子ストリート。

この店ではその中でも「満天星」というシャープでキレのいい辛さを持つ品種を使用。最近は「ヒー!辛い!」という日本人の悲鳴を受けて、非常にちょうどいい感じの辛さに落ち着いているが、心配な人はオーダー時に「微辛(ウェイラー)」と念押ししよう。

しかし「けっこういける口だな」と判断されたら、もしかして、悶絶級の辛さで出てくるかもしれない。そんな時はこう思おう。貴州人の友人曰く「辛さは貴州人のおもてなしの心」。ここは食を通じて、現地の食文化を知る場なのである。

サトタカ(佐藤貴子)

サトタカ(佐藤貴子)

食と旅を中心としたエディター、ライター、コーディネーター。大学卒業後、大手エンタテインメント企業で映像や音楽コンテンツの仕入、映画のPR等を務めた時、担当した映画監督が大の中華好きだったことから中華にハマる。
独立後、中華食材専門商社の小売向ECサイトの立ち上げと運営を通じて中華食材に精通。雑誌、会報誌、ウェブ等で中華に関する執筆多数。中華がわかるウェブマガジン『80C(ハオチー)』ディレクター。さまざまなテーマの中華食事会も企画する。

貴州火鍋キシュウヒナベ

住所:
東京都葛飾区新小岩1-55-1
多田ビル1F
TEL:
03-3656-6250
アクセス:
JR総武線 新小岩駅南口から徒歩6分
営業時間:
18:00~22:30
定休日:
日曜日

更新: 2020年7月8日

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