大正浪漫あふるるカフェで味わう、ハイカラ気分 府中「珈琲屋 マロコ」|RINの行かねば損する「東京のカフェ」
自称「スコーンの人」。作り手によって千差万別の“個性のカタマリ”、スコーンに魅了され、十数年にわたりカフェを訪ねてはお菓子やお店に表れる店主の「好き」を楽しんでいる、カフェブロガーRINさんが、「みんな違ってみんないい。 だからカフェって楽しい!」と思わせてくれる、個性豊かな東京のカフェや喫茶店をお伝えします。
府中の街で50年。牛乳屋から始まった珈琲屋
思わず声に出して呼びたくなる愛らしい響き、「マロコ」。「珈琲屋 マロコ」があるのは、京王線府中駅から歩いて3分ほどのところ。昔ながらの大きな赤い郵便ポストと紺色の暖簾を携え、どっしりと店を構えています。
大正浪漫あふれる風貌は、映画のセットさながら。千本格子の引き戸を右に引くとと同時にガラガラと鳴る乾いた音や、手に伝わってくる小刻みの振動は、ハンドルの開き戸が当たり前となった今の時代にはちょっと新鮮です。
府中の街に「珈琲屋 マロコ」が創業したのは、1970年のこと。当初は牛乳配達屋でした。実は「マロコ」とは、ロシア語で“牛乳”という意味。その後、珈琲屋に生まれ変わってから49年。建物の老朽化で2015年に一度はその幕を下ろしましたが、2018年8月、街の人の声に押され、ふたたびこの街で時を刻み始めました。
店内には、江戸から大正時代にかけて描かれた浮世絵や引き札、世界各国の古時計、ヨーロッパのランプシェードなど、まるで歴史資料館のごとくさまざまな骨董品が並びます。これらはすべてオーナーの佐野邦男さんのコレクション。買い付けたもののほか、足踏みミシンを利用したテーブル、至るところに飾られた焼き物などの手作りの品も。
時々店の様子を見に訪れる佐野さんと居合わせたらラッキー! それぞれの品にまつわるエピソードや創業当時の府中の街の様子など、とても興味深い話を聞くことができますよ。
囲炉裏を囲んで嗜むコーヒーとスコーン
そんな「マロコ」の中でも特にわたしがお気に入りの居場所が、店の中央にある囲炉裏を囲む席。まさか令和の時代の東京のコーヒー店で、鉄瓶がゆらゆらと揺れる囲炉裏を目の前にカフェタイムを過ごすだなんて、思いもしないではありませんか。
ここで「スコーン」と深煎りの「ふちゅうブレンド」をいただくのが定番です。プレーンや抹茶、チョコなど、4〜5種類の中から好きなものを2つ選べるスコーンは、現在、主に店を切り盛りする店長の坂口晴美さんのオリジナルレシピ。どことなく小判を思い起こさせる独特の長方形と、ミルクのまろやかな甘みをしっかりと感じるやさしい美味しさ。囲炉裏を囲み、焼き物のプレートとカップでいただくスコーンとコーヒーのハイカラなこと!
海苔と刻み昆布入り どこか懐かしさを感じる「たまごサンド」
しっかりめにお腹を満たしたいなら、ぜひ「たまごサンド」を。食事メニューは、地元のベーカリーの食パンを使ったトーストやサンドウィッチがメインです。
2018年の再オープンに合わせて「この店らしい新しい名物を」と、坂口さんが考案した「たまごサンド」は、刻み昆布入りのたまご焼きと海苔をサンドした和風テイスト。こんがり焼かれたサクサクのパンの香ばしさ、昆布のコリコリとした食感、磯の香りと甘糀のまろやかな甘みが絶妙のバランス! はじめて出合うはずなのにどこかホッとする美味しさは、長年の「マロコ」ファンにも新たな世代のファンにも愛されていくことでしょう。
都心から少しだけ足を伸ばすことで出合える、静かな非日常のカフェ時間。時々こうしてカフェのために、“東京のはしっこ”に出かけてみるのもいいものです。
RIN
スコーンの人/カフェライター/カフェブロガー。学生時代からカフェを巡り始めて十余年。 つくり手によって千差万別に表現されるスコーンに魅了され、 スコーンを通して店主の「好き」や個性を探る。ウェブを中心にオールジャンルのカフェライターとしても活動。
自主制作エッセイ「粉のカタマリ。」「粉のカタマリ。ツゥ」を手がけるほか、カフェとコラボレーションしイベントなども行う。(インスタグラム @rin_125 )
珈琲屋 マロコ
- 住所:
- 東京都府中市府中町2-6-1 プラウド府中セントラル
- TEL:
- 042-361-2464
- アクセス:
- 京王線府中駅より徒歩5分
- 営業時間:
- 11:00〜19:00
- 定休日:
- 火曜日
- 支払い方法:
- 現金のみ
- URL:
- https://www.instagram.com/marokocoffee/
更新: 2020年3月5日
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