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おいしい手に会いに行こう! 食べて、しゃべって、幸せ。目黒「UNIQUE(ユニック)」| 山脇りこの行かねば損する東京のビストロ

ビストロってなんだろ? フランスで言うところの、気楽に食べて飲める、日常づかいのお店。語源はパリにいたロシア人が「ビストロ(早く!)」と言って、料理を急がせたからという説も……。肩ひじ張らずに、食べて飲んで、幸せになる、そんな東京のビストロを、ヴァンナチュール好きの料理家、山脇りこさんがご紹介します。

目黒駅から権之助坂をだらだら下り、大鳥神社からゆるゆると少し登り始めて、そろそろ着くと助かるなと思ったあたりに「UNIQUE」はある。シェフのそっけない「いらっしゃいませ」に迎えられると、なんでなのか、ほっとする。

パリのビストロ、2つ星「エレーヌダローズHélène Darroze」(女性シェフで、ロンドンでも★を)を経て、独立。7年目を迎えた。

中井雅明 シェフは、おいしそうだ

食べてみたら、という意味ではなく、この人はおいしいものを作るに違いないと、その風貌が教えていると思う。

ある時、お天気に恵まれなかった町場のバーベキュー場でのイベントで、小雨の中、中井シェフが肉を焼いていた。どう考えてもシュールな景色なのに、劇画みたいな感じで「うまそー!」と、シェフの横に文字が浮かんで見えた。そして、ホントにとびきりおいしかった。なんでだろう? と、じっと見ていたら、気づいた。

手だ。この人は、ぜったいにおいしいものを作りそうな手をしている。

今日は、その手が見える特等席のカウンターに、案内してもらった。

ワインは主に自然派。自家製のパンにはバターではなく、リエット。もちろん自家製。

今宵はアラカルトにした(おまかせコースもある)。おすすめされたワインは、フランス料理ながら、イタリアの自然派。

「前は、ブルゴーニュばかりだったんですが、あれ、と思うことがあって。イタリアもおいしいワインあるなー、と」

パテ・ド・カンパーニュは基本がぎゅっと詰まった間違いない味。

この日、前菜に選んだのは、パテ・ド・カンパーニュ、そして、カリフラワーのムース。

塩味が強すぎなくて食べ飽きないパテ・ド・カンパーニュには、塩漬けにして熟成させた熊のラルドが添えてある。美しい、そして熊なのに! 野性味より、洗練を感じる。

カリフラワーのムースは、コンソメのジュレ、カニ、そして雲丹と。

「カリフラワーのムース、好きだよね? 今まで毎回、あれば必ず頼んでますよね」。おおおそうだっけ? と言いながら、ひとくち食べて、うん、これ毎日でも食べたいからなと、デレデレにゆるむ。中に潜む雲丹のことがメニューに一切書かれていないのも、いい。

ビスクはガツンとくる旨み、香り、しっかりめの塩、これはパリの味。

スープは、完璧なビスク。一口目で、甲殻類→海→脳内で、セバスチャンが、♪Under the sea♪と、リトルマーメイドさながらに歌いだす。食べすすめるうちに、旨みに打ちのめされて寡黙になるのだけど……。最後は皿が真っ白になるまで、パンが止まらない。そう、このパンが曲者で、シェフが毎日ここで焼いている。

無駄な動きなし。7年目に入りますます磨きがかかる神ワンオペ!

キッチンはピカピカだ。料理しながらも磨いている。

シェフはワンオペだ。この日も満席。ひとりで18人にワインを選び、料理を出す。なかなかしびれるのではないか? と思う。

「100パーセント完璧を目指すとたぶん破綻するので、80パーセントくらいでできたらいいかなと思うんですよ。どうしても無理な時は、常連さんならワインを運んでもらったりします」

そこには、ほどよい価格でお腹いっぱい食べて飲んで楽しんでほしい、というシェフの思いもある。実際は、見ていて気持ちいいほどの手際のよさ。パリの2つ星で修業したシェフだ。鍛え方が違うし、当たり前と言われればそうだけど、段取りのよさ、スマートさが際立つ。温める、焼く、寝かせる、盛り付けるで、無駄な動きはなし。タイミングはほぼ完ぺきに、魔法のように料理が出てくる。より使いやすく改良を重ね、使い込まれたキッチンは、7年目に入った今もピカピカだ。

メインの月の輪熊。「割といろんなところから仕入れてます。今日は富山」。

メインは、月の輪熊のパイ包み。いかにもビストロらしい、伝統的なパイの姿に萌える。中にはどっしりと熊肉、そして品のいい、しつこすぎないフォアグラが待っている。このバランスのよさよ、嗚呼。

料理の説明は最小限。語らないけど、皿の中に全部ある。

頭で食べない、好きな人と楽しく会話しながら、笑って、満腹になって幸せ。これって、そうそう、ビストロの醍醐味だ。

デザートの一択は、プリン。定番中の定番を、中井流に。かため、重めなのに、しっとりなめらか。いい夢見れそうだ。

プリンは、ひとりじめしたくなる。いや、しよう。

フランス語のUnique=ユニックは、つまりユニーク。特異な、とか、ちょいと風変わりな、という意味だと思っていた。調べてみたら、まず、「唯一の、ただひとつの」という意味があり、「卓越した、比類なき」という意味があると知った。ちなみに、la fille unique とは一人娘のことらしい。もちろん、風変わりなという意味もある。

うん、思えば、ここにしかない独特な雰囲気のある店であり、卓越した技術が底光りする料理であり、そして、ちょっと風変わりなシェフだ。

好きな人と、わくわくとゆるやかな坂を上って、“おいしい手”に会いに行こう。

JR目黒駅を背に右手。階段を昇れば、シェフが待っている。

山脇りこ

山脇りこ

料理家。東京・代官山で料理教室「リコズキッチン」を主宰。雑誌、テレビ、ラジオなどでも活躍中。「グルマン世界料理本大賞2014」で「昆布レシピ95」がグランプリ受賞。「明日から、料理上手」(小学館)、「いとしの自家製」(ぴあ)など著書多数。旅好きで、美味しいものがあると聞けば、どんなに遠くてもでかけていく、食いしん坊。http://rikoskitchen.com/

UNIQUEユニック

住所:
東京都目黒区目黒3-12-3松田ビル1階
TEL:
03-6451-0570
アクセス:
目黒駅より徒歩12分、バスで大鳥神社前より徒歩1分、東急東横線中目黒駅より徒歩15分
営業時間:
ランチ/金、土、日曜12:00~15:00(L.O. 14:00)*火、水、木曜のランチは事前予約のみ。 ディナー/火~日曜 18:00~24:00(L.O. 22:30)
定休日:
月曜日
URL:
https://restaurant-unique.jimdofree.com/

更新: 2020年2月20日

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