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RESTAURANT

編集部のお気に入りのレストランをご紹介します

職人の店。 吉祥寺「中國菜 四川 雲蓉(ユンロン)」|サトタカの「行かねば損する東京の中華料理店」

中国料理に魅せられて、国内はもとより中国にも足繁く通って取材する中国料理探訪家・サトタカさん。“中国を食べ尽くす”プロに、今行くべき東京の中華料理店を教えてもらいます。

中華料理をもっと知りたくなったら、吉祥寺に行こう

ある日の宴会メニュー。菜譜(メニュー)を流麗な筆致は、同じ敷地で三代にわたり印章屋を営む御尊父によるもの。

人についても、場所についても、心が動くともっと知りたくなる。

「旅行が楽しかったから、次は言葉を話せるようになりたい」とか、「体験ダイビングがよかったから、もっと潜れるよう免許をとってみようかな」とか。

食も然り。鮨のネタ、パスタの名称、ワインのぶどう。「いいな」と思ったものについて少し学び、楽しむための手がかりを得ると、新たな扉が開き、より深く味わえるようになる。

中華でも、扉を開いてくれる店がある。「中國菜 四川 雲蓉(ユンロン)」もそのひとつだ。

「知りたい!」に応えてくれる料理

魚香(ユィシァン)の技法を使ったワタリガニの一品。肉にも魚介にも相性がいい調味法だ。

実はこの店を始めて訪れた時、しばらく忘れていた感情が沸き上がった。店主の北村和人さんの料理、そして料理を語る佇まいを見て、自分が中華にハマり始めた頃に感じた「ときめき」を思い出したのだ。

こちらのテーブルに並ぶのは、中国西南部・四川省の伝統料理が中心。そこには四川料理の基本的な「味のかたち」がある。

たとえば、四川の伝統的かつ代表的な調味法「魚香(ユィシァン)」。葱、生姜、にんにくなどの香味野菜を用い、甘さ、辛さ、酸味のバランスが要となる味付けだ。

現地では類似する味付けも多いことから、料理学校の実技試験にも出るような調味法だが、魚香の料理をこの店で食べると「なるほどこのくらい甘味だったか」と、改めて納得してしまう自分がいる。

もちろん、現地でも店や料理本によっていろんな作り方がある。しかし、北村さんが歩んできた道、そして、黙っていてもにじみ出る「職人」の佇まいに説得力があるのだ。

宮保(ゴンバオ)も四川料理定番の技法。今の時期は牡蠣にぴったりの調味法だ。

また、昔から受け継がれた中国料理には、「どうしてそんなもの作っちゃったの?」というような、恐ろしく手間のかかる料理や想像を絶する創造がある。

この店のメニューには、その手の料理で「食鶏不見鶏(鶏のかたちは見えないけれど鶏を食べる)」と言われる四川の伝統名菜もある。

作り方は、豚の皮の上で(まずこの時点で特殊だ)、筋取りした新鮮な鶏のむね肉をひたすら包丁で叩くこと2時間半。

かたちのなくなった鶏に、卵白と片栗粉少々、上等なスープを加えて肉に吸わせ、ふわりと仕立てた「雪花鶏淖(シュェファジーナオ:鶏のふわふわ炒め 金華ハムの香り)」がそれだ。

口にすると、鶏の濃厚な風味がじわじわと広がり、余韻が長くつづく。唐辛子の辛さも花椒の痺れもない、実に上品な四川料理である。

雪花鶏淖(シュェファジーナオ:鶏のふわふわ炒め 金華ハムの香り)。事前に要予約。

小学生で陳建民のレシピを再現。成都で伝統料理の薫陶を受ける

回鍋甜焼白(ホイグゥオテンシャオバイ)。回鍋とはもう一度鍋に戻す、という意味。豚肉と小豆餡を使った、甘い味わいの四川料理だ。

「中華の道に進んだのは、家の書棚に2冊、陳建民さんの本があったからなんです。小学生の頃、それを見て片っ端から作っていました」

そう話してくれた北村さんの歩みは料理ひと筋。近所の中華料理店「桃園」で、時給300円のアルバイトを始めたのが15歳の時。料理専門学校には行かず、気になる料理教室を3つ掛け持ちし、人気の四川料理店に就職した。

現在の方向性を決めたのは、四川省成都市の名店「芙蓉鳳花酒楼」に入ってから。ここの味に惚れ込み、なんどもアプローチして、厨房で鍋を振るまでに成長。

実はこうした修業、今では、お金を払ってもできるものではない。「本当は四川人しか鍋は振れないんです。運とタイミングがよかったんです」。

聞けば、「帰国後も年に一度は店に行き、厨房で鍋を振らせてもらっています」という。修業先でも評価され、愛されていたことがわかるエピソードだ。

基本を知り、四川伝統料理の深淵に触れる

最近中華がおもしろいけど、どこで基本を知ればいいのかな? と思っている方は、きっと少なくないと思う。そんな時に足を運んでほしいのが、こんな店だ。

「入り口」というよりも、もっと知りたくなった人が「次に行く」店。麻婆豆腐や火鍋は知っているけど、中華の深淵を感じさせてくれるような料理と出合いたい。基本の「味のかたち」を知りたい……。そう思っている方に、特におすすめしたい。

よだれ鶏。日本ではいろんなアレンジが生まれた料理でもあるので、こういう四川料理店で一度食べておくのもいい。

ちなみに席は12席。料理人1人、サービス1人の小さな店なので、事前にコースを予約するとお互いに安心だろう。

おすすめは8,000円(税別)のおまかせコース。すべてが四川料理だけではないので、学びたい人は、できれば電話予約時に「四川の伝統的な調味法を網羅してほしい」とか、「雪花鶏淖と麻婆豆腐を入れたおまかせで」というようにリクエストするといい。

そして、基本を知ると、巷の人気店がどうアレンジしているのかも、おぼろげながらわかるようになってくる。楽しみながら回を重ねるうちに、きっとあなたの「チュウカビリティ」は向上しているはずだ。

店主の北村和人さん(右)。この日はお父様(左)がサービスを担当!

サトタカ(佐藤貴子)

サトタカ(佐藤貴子)

食と旅を中心としたエディター、ライター、コーディネーター。大学卒業後、大手エンタテインメント企業で映像や音楽コンテンツの仕入、映画のPR等を務めた時、担当した映画監督が大の中華好きだったことから中華にハマる。
独立後、中華食材専門商社の小売向ECサイトの立ち上げと運営を通じて中華食材に精通。雑誌、会報誌、ウェブ等で中華に関する執筆多数。中華がわかるウェブマガジン『80C(ハオチー)』ディレクター。さまざまなテーマの中華食事会も企画する。

中國菜 四川 雲蓉ユンロン

住所:
東京都武蔵野市吉祥寺本町2-14-1 青雲堂右側
TEL:
0422-27-5988
アクセス:
JR中央線・京王井の頭線吉祥寺駅から徒歩約6分
営業時間:
11:30~14:30(L.O. 14:00)、18:00~22:00(L.O. 21:00)
定休日:
火曜日・水曜日(祝日の場合翌日定休)

更新: 2020年2月6日

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