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芯まで冷えた身体に優しい。関東風あんかけうどん  日本橋「室町砂場(むろまちすなば)」|マッキー牧元の「行かねば損する東京の和食」

1年間の外食数は600軒以上。高級店からB級までをくまなく知り尽くすタベアルキスト、マッキー牧元さん。食べ歩きのプロ中のプロに、今行くべき東京の和食店を教えてもらいます。

日本橋「室町砂場」

明治2年に創業した店を、五代目となる現当主・村松毅さんが引き継いでいる。東京を代表する老舗蕎麦屋。「天もり」発祥の店としても知られる。「いらっしゃ〜い」「ありがとう存じます」と声をかけ、キビキビとした女店員のサービスがみごとで心地よい。五代目となって製粉の技術が向上したことも手伝い、蕎麦は正確な二八の割合に変える。さらにここ8年はもっと風味を出すため、挽きぐるみを使っている。伝統的な蕎麦や肴に加え、桜切り蕎麦や蕎麦寿司、蛍烏賊と野萱草の酢の物や、桜エビとうるいのかき揚げに、季節の洗練が集約している。 冬の「あられ(貝柱)蕎麦」、秋の「松茸蕎麦」に加え、春の「筍蕎麦」、夏の「涼味とろろ蕎麦」はそれらを代表する種蕎麦で、「筍蕎麦」は濃口ベースのかけつゆに若芽が合わないと考えて菜の花を添え、「涼味とろろ蕎麦」は薄口醤油で仕立てたつゆの上にとろろを流してガラスの器に入れ、薄茶と白の二層を見せて涼しさを演出する。また懐石蕎麦コースでは、季節の変わり蕎麦や、蕎麦がきも提供する。 名物の「天もり」は、三代目が閉店後の賄いで辛汁に余った天かすを入れて食べたらおいしかったために生まれた。

なんでもある東京に、すぽっと抜け落ちた関西風あんかけうどん

体の芯が凍える日が続くと、「あんかけうどん」が無性に食べたくなる。

熱々のあんが絡まったうどんを、フーフーと息をかけながら、ハフハフ食べる。体の深部から温まって、心も柔らかくなる。そう思っても、東京で「あんかけうどん」を食べることは、叶わない。街場の蕎麦屋で用意しているところが、あまりないのである。

この「あんかけうどん」とは、京都や大阪で食べる、いたってシンプルな「あんかけうどん」である。「カレーあんかけうどん」「なすあんかけうどん」「黒酢あんかけうどん」「麻婆あんかけうどん」は、あんかけであるが、私が望む「あんかけうどん」ではない。

美味しい出汁をあんにし、揚げと九条ネギの細切りと生姜を入れた、「あんかけうどん」である。東京には世界中の食文化が結集しているのに、関西風「あんかけうどん」は、すぽっと抜け落ちている。そこで僕は老舗の蕎麦屋に行く。神田駅近くにある「室町砂場」である。

東京での「あんかけうどん」は、日本橋老舗「室町砂場」で

まずは、“蕎麦前”ならぬ、“うどん前“と洒落てみよう。

焼き海苔と板わさを頼み、燗酒を一本呑む。そうだ、お新香も頼もう。 お銚子が一本空いて、調子が出て来た。

もう一本頼み、「焼きねぎ(ネギを焼いて焼き鳥の甘辛タレをつけたもの)」、卵焼きといってみよう。 卵焼きは、甘辛いこっくりとした江戸風で、燗酒との相性が実によろしい。

ここで蕎麦を頼む時、冬なら頼みたい肴がある。茶碗蒸しにうどんを入れた「小田巻蒸し」である。熱々のこいつを、ふーふーと言いながら食べ、燗酒をちびちび飲むのはたまらない。だが、これから食べる「あんかけうどん」の楽しみが削がれてしまうので、今日はやめとこう。さらにいつもならここで、名物「天もり」か「天ざる」を頼むことだが、今日は初心貫徹「あんかけうどん」である。

具沢山が愉快な「室町砂場」のあんかけうどん

先に述べたとおり、関西風「あんかけうどん」は、刻んだお揚げにネギと生姜というシンプルさであるが、ここの「あんかけうどん」はそれとは異なり具が多い。卵焼きにエビ、椎茸、蒲鉾、三つ葉、麩という布陣である。

息を吹きかけながら慎重に飲めば、とびきり熱いつゆが静かに舌の上に広がっていく。見た目は醤油色だが、きりりと味が締まった甘辛味で、江戸の心意気が漂っている。とろみ具合が強く、うどんを持ち上げる手が重い。うどんはどこまでも軟らかく、この主張のなさがあんのとろみと合うんだな。中細で軟らかく、どろりとしたあんと同化するように崩れていく。

卵焼きは上品な味わいで、椎茸はしっとりと味がしみている。こちらも酒の肴になる。

おじさん一人、「あんかけうどん」をつまみにして、燗酒をゆっくりとやる。そんなゼータクな午後があっても、よろしいじゃございませんか!

マッキー牧元

マッキー牧元

1955年東京出身。㈱味の手帖 取締役編集顧問 タベアルキスト。日本国内、海外を、年間600食ほど食べ歩き、雑誌、テレビなどで食情報を発信。「味の手帖」「朝日新聞WEB」「料理王国」「食楽」他連載多数。三越日本橋街大学講師、日本鍋奉行協会顧問。最新刊は「出世酒場」集英社刊。

室町砂場

住所:
東京都中央区日本橋室町4-1-13
TEL:
03-3241-4038
アクセス:
JR神田駅より徒歩4分 、JR新日本橋駅より徒歩3分、東京メトロ三越前駅より徒歩3分
営業時間:
月~金 11:30~21:00(L.O.20:30) 土 11:30~16:00(L.O.15:30)
定休日:
日曜日・祝日

更新: 2020年1月9日

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