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日本料理の理り(ことわり)を極める店 二子玉川「花冠陽明庵(はなかんむり ようめいあん)」|マッキー牧元の「行かねば損する東京の和食」

1年間の外食数は600軒以上。高級店からB級までをくまなく知り尽くすタベアルキスト、マッキー牧元さん。食べ歩きのプロ中のプロに、今行くべき東京の和食店を教えてもらいます。

「花冠 陽明庵」

予約制でカウンターのみ。紹介制だが予約する時に「FOOD PORT.の牧元の記事を見た」(有効期間:2020年2月末日迄)とお伝えください。食事代12,000円(税込)〜。ただし、料理により食事代が異なるので要確認。サービス料1,500円。全体的にかなりボリュームがあるので、お腹をすかしていくこと。料理だけでなく、松本さんが話される、日本料理や京都の歴史、秘話などもご馳走。この項のハンバーグのように、主菜となる特別料理は月替わり。

料理人、食品学者、作家。三つの顔を持つご主人

二子玉川のマンションの一室で、ひっそりと営まれている料理店がある。その名を「花冠 陽明庵」という。もしあなたが日本料理を好きで、さらなる高みと深みを目指したいと思っているなら、この店に通うことをおすすめしたい。

店主は料理人でもあり、食品学者でもあり、作家でもある松本栄文(まつもとさかふみ)氏である。松本氏は、国内最大級の食の著作家ネットワークである「一般社団法人日本食文化会議」の理事長であり、全国各地で「日本文化を愛でる会」を主宰して、日本の伝承・伝統文化の普及に努められている。

日本料理の歴史や背景はもちろんのこと、使われる食材や調味料を極められている方でもあり、なによりも「日本料理の理り(ことわり)」に精通していらっしゃる。それゆえに、どんな割烹、料亭に出かけようとも出合えぬ料理をいただくことができる。

日本料理の歴史に触れる料理

それでは10月中旬に出された料理をご紹介しよう。最初に、黒塗りの折敷に白い小皿に盛られた9品の酒肴が運ばれる。写真の手前左から右へ、鯛の「魚なます」、ウニと合わせるのは公家の食べ方で、武士はわさびと合わせて食べたと説明される「蒲鉾ウニ挟み」、西太后の好物だったとされる「芥子菜甘酢漬け」、後列は「高座豚の干し肉」と「クリームチーズと梅干し」、公家は大根おろしを雪と呼んだことから名づけられた「サザエの雪なます」が並ぶ。遅れて「枝豆の漬物」、日本酒と塩でさっと茹でた「ボタン海老の浜茹で」と「一年もの干し鮎」。

日本の最高峰の素材を突き詰める

酒が進む。どれも味わいの芯が深い。

たとえば、「クリームチーズと梅干し」のクリームチーズは、日本で160頭しかいない貴重なガンジー牛の生乳だけで作ったもので、生クリームを加えていないためミルクチーズと呼んでいるという。新潟県長岡の牧場のミルクを佐渡島へ送り、松本氏が乳酸菌や発酵時間等を監修して作ったオリジナルチーズである。

また、梅干しに使用しているハチミツは埼玉の百花蜜だが、濃厚な早朝採取のものではなく、午後の薄まったハチミツを使用することで後味がベタつかず、ハチミツ臭くない梅干しに仕上げたという。

チーズは澄んだ味わいで乳のほの甘い香りが漂い、梅干しは甘みがすっきりとして、丸い酸味がチーズの乳酸と自然に抱き合う。このように一品一品、日本で作る最高峰を突き詰められているからこそ、味が美しく、深いのである。

タベアルキストを圧倒するお椀とハンバーグ

続いては、よもぎ餅を椀種にした白味噌椀が出された。汁は、どこまでも滑らかで甘さが優美である。ポタージュのように口の中を舐めつくしながら旨みを広げ、ゆっくり喉へと落ちていく。そして、よもぎ餅の香り高いこと。幸せな時間がゆったりと流れる。

次が本日の主役、松阪肉のハンバーグである。

「筋肉は筋肉らしく食べたい、それが私なりの牛への敬意です」と、松本さんは言われる。そのハンバーグは、つなぎを一切入れない。薄切り肉に塩をし、40分こね続けて結着させる。

肉汁や脂に頼らないハンバーグは、肉の味と香りを叩きつける。噛むたびに、肉の滋味が膨らんでいく。 肉の勇壮が鼻息を荒くし、体を上気させる。

軟らかいながら、肉塊に齧りついているような興奮があって、「肉を喰らっているぞ」と、叫びたい衝動にかられる。こんなハンバーグは、食べたことがない。

「花冠」の要、おむすびは、恍惚の味

さて、最後は素朴に、海苔を巻いたおむすびが出される。

これとて質が違う。

米は山形県東置賜郡の有機栽培農家のコシヒカリの天日干しで、たんぱく質由来の肥料に頼るのではなく、米本来の力で旨みを引き出している生産者なのだという。だから、米そのものに力がある。

その上、石蔵の中で熟成させることにより、石から出る遠赤外線によって米粒内にある大小の水分子をたたき、均一的な微小分子へとさせて濃厚な旨みを生んでいるのだという。

塩はミネラルと甘い風味がある、満月の時に汲み上げられた海水で作った伊豆大島産のムーンソルトを使い、海苔は有明海産の中でも太陽の光に当る時間が長く、潮の満ち引きが激しいエリアで育てられた肉厚のものを巻く。

米の甘みと香り、海苔の香りと旨みが渾然一体となって、恍惚となるようなおむすびである。

感動を伝えると、松本さんは言われた。

「米は毎日食べる日本人の主食です。普段食べている程度の御飯を出すならば、何も外食する必要はないと思います。私は御飯を疎かにしたくない。たかが御飯、されど御飯。おむすびは、家族の思い出の味だと思います。だからこそ、『花冠』ではおむすびが要なのです。なぜなら『花冠』のお客さんは、神様でなく、私の家族だと思っていますから……」。

この言葉にこそ、「花冠」の“料理の誠”が集約されている。

マッキー牧元

マッキー牧元

1955年東京出身。㈱味の手帖 取締役編集顧問 タベアルキスト。日本国内、海外を、年間600食ほど食べ歩き、雑誌、テレビなどで食情報を発信。「味の手帖」「朝日新聞WEB」「料理王国」「食楽」他連載多数。三越日本橋街大学講師、日本鍋奉行協会顧問。最新刊は「出世酒場」集英社刊。

花冠陽明庵

住所:
東京都世田谷区玉川3-13-5 川原ビル2階203号室
TEL:
090-2402-0011
アクセス:
田園都市線二子玉川駅から徒歩4分
営業時間:
18:00~24:00(一部、ランチ営業12:00~16:00)
支払い方法:
クレジットカード可
URL:
http://matsumoto-sakafumi.jp/hanakan.html

更新: 2019年11月29日

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