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蕎麦の食べ比べが楽しい新しい店 西麻布「蕎麦おさめ」|マッキー牧元の「行かねば損する東京の和食」

1年間の外食数は600軒以上。高級店からB級までをくまなく知り尽くすタベアルキスト、マッキー牧元さん。食べ歩きのプロ中のプロに、今行くべき東京の和食店を教えてもらいます。

「蕎麦おさめ」

店主・納剣児さんは31歳。若手の蕎麦職人である。「東白庵かりべ」や「大川や」を経て独立、修業時代の教えを守りつつ、独自の工夫を凝らした個性的な蕎麦も打つ。おもしろいのは、在来種の蕎麦のみを使っていることにある。蕎麦は“在来種”と“改良種”に分けられ、在来種は各土地に長い時間をかけて根づいた品種である。風味や香りが強く、蕎麦らしさを味わうことができる一方、蕎麦の実が小さいために収穫量が少ない。収穫量を増やすために改良されたのが、“改良種”である。最近とみに在来種の良さが認められ、在来種を残そうとする動きが出てきているという。この店に用意されているのは、長崎県対馬在来、 鳥取県伯耆在来、福井県丸岡在来に福島県会津在来、長野県乗鞍在来、鹿児島県鹿屋在来、富山県山田清水在来、長野県奈川在来の8種類。

「お通しにしん」1,300円、「板わさ」1,000円、せいろ蕎麦と玄挽き蕎麦、かけ蕎麦各1,200円、 鴨南蛮蕎麦2,500円。営業時間は18〜24時と、蕎麦屋には珍しい深夜営業がありがたい。

そわそわする新蕎麦の季節。今年イチ押しの「蕎麦おさめ」

新蕎麦の季節がやってきた。

冷蔵技術の進歩と保管方法の改良で、一年中おいしい蕎麦が食べられるとはいえ、この時期となれば、そわそわしてくる。蕎麦屋に行けば「新蕎麦」の文字があって、ぐっと気分が乗ってくる。

さあ、どこで食べようか。

老舗やベテラン蕎麦職人の店もいいけど、若手職人の蕎麦もおもしろい。

たとえば、産地違いの食べ比べができたり、挽きたて、打ち立て、茹でたて、という蕎麦の三原則から脱皮した、打ってから3日熟成させた蕎麦を味わえたりもする。

といっても、ここまでの仕事をする店はそう多くない。

都内では、庚申塚「菊谷」、中野坂上「らすとらあだ」、神田「眠庵」といった店である。

この3軒は、いずれご紹介するとして、ここに入る1軒が今年できた。

西麻布の「蕎麦おさめ」である。

まず蕎麦をたぐる前に、「蕎麦前」といってみよう。

まずは「蕎麦前」をぬる燗で。スペシャリテは「ニシン煮」

お通しのわさび醤油漬けと蕎麦味噌をちびちび舐めながらやっていると、冷奴が運ばれる。池袋「大桃豆腐」だそうで、口に入れれば豆の甘い香りがひろがって顔が緩む。やわらかく、しっとりと炊かれた「昆布巻き」は、昆布のふくよかさ出ていて、しみじみとうまい。

そして、蕎麦屋の定番である「板わさ」は、和歌山の南蛮かまぼこに、自家製わさび漬けが添えられる。分厚く切られたかまぼこの、自然な甘みがいい。

そしてスペシャリテが、5日かけて炊いたという「ニシン煮」である。

口に入れればほろりと崩れ、舌に広がっていくのだが、やわらかいだけでない。そのにしんの繊維一本一本に、にしんの味があるのである。

酒は、長崎県の福田純米をぬる燗にしていただいた。

さらに「蕎麦がき」が登場する。

長野県乗鞍在来種を練ったのだという。舌にぽたりと落ちると、なにごともなかったかのようにすうっと消えていく。そして、草のような香りを残す。

二口目は辛汁につけてみたが、つゆの旨みとともに蕎麦の甘みが膨らんだ。

さらにそこへ燗酒を滑り込ませば、香りが膨らんで幸せがやってくる。

打ち立てと五日間熟成の食べ比べ

さあ、そろそろ蕎麦へといってみよう。お願いしたのは長崎県対馬産蕎麦の打ち立てと五日間寝かせたものである。

打ち立ては香り高く、手繰ったすぐ後から野味溢れる青々しい草香が爆発する。

一方、寝かせた蕎麦は色が濃く、香りは穏やかだが甘みや旨みが濃い。前者の生き生きした命の発露と違い、熟れた落ち着きがあってどちらも捨てがたい。聞けば後者は風味を強く感じさせるよう、微粉だけでなく粗目に挽いた粉も入れて打っているのだという。この辺りが、ご主人の納さんのうれしい変態ぶり躍如たるところで、ほかにもわざときしめん状の平打ちにしたり、石臼挽きだけでなくフードプロセッサーで挽いてみたりなど、様々な風味を出す工夫をされている。

温まることによって甘みが増すかけ蕎麦

さらには、温かいかけ蕎麦も素晴らしい。

つゆの透明感のある美味しさだけでなく、温まったことによって蕎麦の甘みがより感じられて、食べると心が安らぐような気分になってくる。

こりゃあ、しばらく通って、いろんな蕎麦を食べるしかないな。

マッキー牧元

マッキー牧元

1955年東京出身。㈱味の手帖 取締役編集顧問 タベアルキスト。日本国内、海外を、年間600食ほど食べ歩き、雑誌、テレビなどで食情報を発信。「味の手帖」「朝日新聞WEB」「料理王国」「食楽」他連載多数。三越日本橋街大学講師、日本鍋奉行協会顧問。最新刊は「出世酒場」集英社刊。

蕎麦おさめ

住所:
東京都港区西麻布1-7-2 アデッソ西麻布 2F
TEL:
03-5775-1636
アクセス:
六本木駅より徒歩5分
営業時間:
18:00~24:00(L.O.23:00)
定休日:
日・祝(土は不定休)
支払い方法:
クレジットカード可

更新: 2019年11月15日

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