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燃える料理人の憎い仕事 御成門「御成門はる」|マッキー牧元の「行かねば損する東京の和食」

1年間の外食数は600軒以上。高級店からB級までをくまなく知り尽くすタベアルキスト、マッキー牧元さん。食べ歩きのプロ中のプロに、今行くべき東京の和食店を教えてもらいます。

「御成門はる」

今年3月22日に開店、店は小川さんとサービスの方の2人でやられている。カウンター7席と個室があるが、今のところはカウンターのみで営業されている。料理は1つのコースのみで、15,000円。2ヶ月前から予約開始。

高級食材に頼りがちな、最近の割烹料理

ここ10年、割烹の世界も様変わりしている。

30代、若い人になると20代後半で独立する人が増えたのである。昔のように40代後半になってから独立するようなことはない。料理人の最も伸び盛りは、40になってからと言われているので、若いうちから店を構えるのはいいチャンスである。ただし、その多くの店に行って気になることがある。ウニ、松葉ガニ、天然ウナギ、ノドグロ、アユ、松茸、山椒の花、黒毛和牛、ハモ、トリュフ、フォアグラ、キャビアなど、高級食材が多く出されるのである。

それはそれでいいだろう。

しかし、高級食材というものは、得てしてあまり手をかけない料理の方が美味しい。そのため、どこに行っても同じような料理になってしまう。そんな中で、日本料理の魅力の一つである「野菜料理」がおろそかになっている気がする。

野菜料理は手間暇がかかり、知見と経験が必要とされる困難な料理で、客としてはそこに日本料理の醍醐味を感じたい。しかし一方で、地味で、ある意味日常の食材であるから、一般的にはウケが悪い。以前のように、煮方だけを担当してもらう人材確保も難しい、お金も取りにくい、といったような理由で、軽視されているような傾向を、長らく感じていたのである。

胡麻和えがスペシャリテ「御成門 はる」

しかし、8月に出かけた「御成門 はる」は、明らかに違った。

ご主人は、小川晴行さん(34歳)である。今年3月に開店し、調理場は小川さん一人で切り盛りされている。それでは、その料理を見ていこう。

先付は毛ガニとウニで、毛ガニ出汁とタタキオクラが添えられている。季節ものである。毛ガニ出汁の風味はいいものの、最近は先付けによくウニやカニが出されることが多いので、「これは他とあまり変わらないのかな」と思っていた。

するとどうだろう。

次にすり鉢を取り出し、ゴマを擦り始めたではないか。煎ったばかりのゴマは、あたりになんとも言えない香ばしさを振りまいていく。そして出されたのが、土佐酢に漬けた糸瓜の胡麻和えである。季節の糸瓜が歯の間で弾み、胡麻の甘みが後押しする。

「季節の野菜を使った胡麻和えを、毎回お出ししていきたいと思っています」と小川さん。「胡麻和え」を店のスペシャリテに据える。なんとも素晴らしい発想ではないか。

飽くまでも独創性を追求するご主人・小川晴行さん

続いては、「アユとピーマンの焼きびたし」である。青々しいピーマンの香りと、焼かれて出汁に浸されたアユの香りが共鳴してしみじみと美味い。ただ塩焼きで出すのではなく、一捻りした料理を出そうという勇気とセンスがある。振り柚子された「イチジクの玉味噌」は、味噌がイチジクの煮汁で伸ばしてあるため味噌味が濃すぎず、優雅なイチジクの味をそっと持ち上げている。

石川小芋を含め煮にした「冷やし小芋」と続き、八寸風盛り合わせが運ばれた。「大阪湾イワシ甘辛煮」「ミョウガ甘酢漬け」「エビ酒で炊いたアユのわさび和え」「新イクラ醤油洗い」「新生姜」「白瓜ゆかり」「丸十」という布陣にもてらいなく、よく練られている。

お造りは、ハモ炙りとタコに梅肉出汁蜂蜜、醤油が添えられる。こうしてお造りにウケがいい魚ではなく、タコを出すところが信用できる。食材に貴賎はない。タコは佐島からで、塩で揉んで匂いを取り、皮だけをほうじ茶でさっと茹でてから低温で蒸したという。このひと仕事が、噛み締めていくうちにタコ本来の滋味を溢れさせる。ひと塩ハモは、さっと茹ゆでたという。こちらも素晴らしい。

続いて、「佐土原ナス」である。揚げてからエビ出汁で炊いたという。少し油が強いが、相性のいいエビの旨みがしみこんで、ナスの甘みを膨らませている。素晴らしい。

さらに、次の松島のアナゴは、炊いてから素揚げしたという。衣に焼き穴子のような香りが凝縮していて、なんとも美味い。片方は塩で、片方はタレにわさびで食べさせる。

最後のハモしゃぶの野菜は、芋茎というところが憎い。ハモはひと塩し、出汁は焼いたハモの骨をカツオと昆布の出汁でまとめる。ハモしゃぶの後は、そうめんを入れて締める。

そして最後は、バターとトウモロコシを入れた、干し貝柱ごはんときた。一粒ずつ手でもぎったトウモロコシの仕事がいい。

甘味は、バニラアイスとサツマイモのダッチオーブン焼きで、サツマイモの甘みを最大限に活かした仕事に笑みがこぼれる。アユといいアナゴといい、ほかとは違う仕事をし、料理としての完成度も高い。そのことを言うと、小川さんは静かに言われた。

「なるべく同じことではない仕事をしていきたいのです」

マッキー牧元

マッキー牧元

1955年東京出身。㈱味の手帖 取締役編集顧問 タベアルキスト。日本国内、海外を、年間600食ほど食べ歩き、雑誌、テレビなどで食情報を発信。「味の手帖」「朝日新聞WEB」「料理王国」「食楽」他連載多数。三越日本橋街大学講師、日本鍋奉行協会顧問。最新刊は「出世酒場」集英社刊。

御成門はる

住所:
東京都港区芝大門1-2-2 中川ビル 1F
TEL:
03-6809-2502
アクセス:
都営大江戸線大門駅より徒歩5分、都営三田線御成門駅より徒歩5分、JR山手線浜松町駅より徒歩7分
営業時間:
18:00〜23:00
定休日:
不定休
支払い方法:
カード可(VISA、MASTER)

更新: 2019年10月4日

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