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嗅覚を呼び醒す、菊地フレンチ 新富町「bistrosimba(ビストロシンバ)」| 山脇りこの行かねば損する東京のビストロ

今日いち! バツグンな魚、最高の状態の肉、それが食べたかったら迷わずシンバへ

菊地佑自シェフ。明るい、優しい、めっちゃ愛されてる!

「今も毎日、豊洲(市場)に通っています、変わらないです」。久しぶりの「シンバ」で、菊地佑自シェフはこともなげに笑顔で言った。

初めて訪れたのは、オープンからまだ1週間も経たない頃、4年前だ。スペシャリテのブイヤベースの虜になった。魚の国育ちの私は、東京では滅多に感じない、あまりの魚の美味さ! にしびれて、「シェフ、もしかして、自分で市場(築地)へ行かれるんですか?」と尋ねてみた。「はい、毎日自分で行きますよー、近いですからね」とシェフは言った。たしかに店がある新富町から築地はすぐ。しかし、その後、すったもんだの末、市場は豊洲へ。それで、再び尋ねてみたのだ。なにしろ今日も魚介が(も!)バツグン! だったから。

堂ヶ島のサザエはその日いちばんの、大きなものを選んで届けてもらう。ワインが止まらない。

この日、おすすめされた初夏のサザエは、堂ヶ島のかなり大ぶりなもの。しかし、大味ではなく、身も緩んでいない。けちくさい、ちんまい身ではないから、食べ応えがあり、肝の苦さが絡んで夏の海の味だ。ロワールの白をくいっとやると、子供の頃に見た海水浴帰りの夕陽が目に浮かんだ。

シェフ自ら、危ないほどに熱々の石皿に、じゅーばーっとサザエを掻き出してくれるプレゼンテーションつき。お隣から「僕らにもお願いします!」という声が飛ぶ。わかるわかる、これ見たら食べずにはいられないよね。

4年経っても人気は上り調子。その秘密は?

店が開いたばかりの17時半。これから一気に満席へ。目の前は緑豊かな公園。店内から見える景色は、まるでパリのビストロ?

オープン当初から、たくさんのメディアに取り上げられた。その数は100を超えたという。新店人気は、昨今の東京のトレンド。「新店=開業時」が最も注目度が高く、予約困難となっても2年目以降は大変で、3年以内に閉店する店も多い。

しかし、4年目を迎えた「シンバ」は、今日も混んでいる。しかも、幅広い層のお客さん。思えば私も女子でわいわい、相方と二人、家族で、といろんなメンバーで、“シンバして”きた。誰もが美味さにニヤける、ハズレがない店なのだ。

21時を過ぎても、雨でも、ニコニコしながらお客さんがやってくる。見渡せば空席ができる時間はほとんどなく、常に満席なのだけれど、アップアップではなく、上手に心地よく混んでいる。

蒸し暑かったこの日、みんなに用意されていたアミューズは、旬の太ったイワシと甘みを引き出したトマトのブルスケッタ。

秘密は、開業時から、進化し続けていることにあると思う。

シェフは脱皮するように、本来の持ち味は残しつつ、新しい美味しさをいっぱい見つけている。それでも、シンバらしさはブレない。

サービスやオペレーションは変に慣れ過ぎず、よりスムーズになった。電話が鳴ればすぐに誰かが出るし、シェフは必ずお客さんを見送るし、チーム愛は暑苦しいくらい充満しているし(笑)。

寝ても覚めても。明日は何を食べてもらおうか?

スタッフみんなで、焼津の「サスエ前田魚店」へ。「前田さんの仕事に、プロの真髄を見ました」と。

チームでフランスのワイナリーを訪ね、日本国内の名だたる目利き(例えば、焼津の「サスエ前田魚店」さんや、滋賀の「サカエヤ」さん)や生産者を訪ねる。しかし、シェフはそのワインや魚、肉をそのまま丸っとただ取り込むのではなく、季節、食材のバランス、お客さんに何を食べてほしいかを考え、様々なところからベストな食材を店に集めている。

暑い日には、さっぱりとしながらも肉厚なイワシを、甘さを引き出したトマトとブルスケッタに。凍える日には、エネルギーを蓄えたジビエをがっつりと。今、いちばん美味しい野菜を、魚を、肉を。

ここからは妄想だけど、たぶん寝ても覚めても、お客さんにこれを! あの人が育てている、この恐ろしく美味い奴を! 次はあれを! と考え続けているんだと思う。24時間、きっと嬉しそうに……。

嗅覚が覚醒! 初めての香りが脳内を駆け巡るぜ

むっちりとしたカツオに焼きなすと水なす。焼きなすに絡みつく炭の香りもご馳走。

もう一つ、菊地シェフといえば、香り。ここへ来ると、だらんとお休みしていた嗅覚が、はっと目覚める。ハーブやスパイスだけでなく、きのこ、野菜、魚の香り、そして炭の香りまで。

香りを最高の状態で楽しむための温度にも、並々ならぬこだわりがある。熱々をはふはふ、人肌でじっくり、冷たーくするり。ベストなタイミングで出すために、シェフ自ら、調理仕立ての皿を席まで持ってきてもくれる。美味しい時に秒単位で出したいから、シェフもいつも動いているのだ。

パリッパリに焼かれたウロコ、ふわふっわの白身、スープ仕立ての妙。アマダイは、多くのシェフが絶賛する、焼津の「サスエ前田魚店」で厳選されたもの。

フランスで10年修業して、普段着のおばあちゃんが作る料理に感動したという。だからなのか、長い説明が漏れなくついてくる料理や、食材が何かわからない奇々怪々な皿は出てこない。行く度に全部食べたいと思わせる黒板のメニューには、シェフの厳しい食材の選択眼が光り、育てた生産者、手当てした魚屋、肉屋への愛が溢れている。

ところで、予約できない店? と思うなかれ。WEBでも電話でも、予約はできる。遅い時間にはワインとアテで軽く、ってことも可能だ。一見と常連の区別もいい意味でない。小気味よいサービスは、この空間にいるすべての人を気持ちよくしてくれる。誰よりもシェフが全体をいつも見渡し、「がっかりなこと」が決して起きないように、采配している。

迷ったら、「シンバ」へ。香りでぐびっと、食べてぐびっと、ワインを開けて、「美味~いっ!」と叫ぼう。ビストロの醍醐味だ。

山脇りこ

山脇りこ

料理家。東京・代官山で料理教室「リコズキッチン」を主宰。雑誌、テレビ、ラジオなどでも活躍中。「グルマン世界料理本大賞2014」で「昆布レシピ95」がグランプリ受賞。「明日から、料理上手」(小学館)、「いとしの自家製」(ぴあ)など著書多数。旅好きで、美味しいものがあると聞けば、どんなに遠くてもでかけていく、食いしん坊。http://rikoskitchen.com/

ビストロシンバ

*2019年7月16日から31日までは、【simba vacances d'été Fête‼︎】を開催(通常営業はなし。アラカルトメニューのみ)。 予約不要の立飲みスペースで、早い時間から軽く一杯の利用も可能です。

住所:
東京都中央区銀座1-27-8
TEL:
03-6264-4218
アクセス:
都営地下鉄浅草線宝町駅より徒歩5分、有楽町線新富町駅より徒歩6分
営業時間:
火〜土曜17:30〜25:00、日曜17:00〜24:00
定休日:
月曜、第3火曜*食材が無くなり次第終了(21時以降バー利用可)
支払い方法:
クレジットカード可(Diners Club、JCB、AMEX、VISA、MASTER)
URL:
http://bistrosimba.jp/

更新: 2019年7月13日

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