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手打ち麺がおいしい店は餃子もおいしい 東新宿「山西亭(サンセイテイ)」|サトタカの「行かねば損する東京の中華料理店」

中国料理に魅せられて、国内はもとより中国にも足繁く通って取材する中国料理探訪家・サトタカさん。“中国を食べ尽くす”プロに、今行くべき東京の中華料理店を教えてもらいます。

ここは麺と黒酢の国・山西省出張所!?

イタリアンのシェフや点心師の友人に話すと、100パーセント「行きたい!」と言ってもらえる店がある。明治通り沿い、東新宿界隈にある「山西亭(さんせいてい)」だ。

「山西」とは、中国は北京の西南方面にある山西省のこと。そして中国で山西省といえば、黒酢と麺食の故郷である。

山西省晋西市の黒酢工場にて、瓢箪から黒酢。

以前、取材で山西省の省都・太原に行ったとき、タクシーの運転手に「家でどんな酢を使っていますか?」と尋ねたところ、全員がその銘柄を答えられたことが印象に残っている。つまり毎日目にするほど、どの家庭の食卓にも黒酢があるというわけだ。

では、それを何にかけるか? というと麺である。現地の専門書によると、その種類は280超(諸説あります)。一説によると、小麦は酸性、黒酢はアルカリ性の食品なので、一緒に食べると体内で中和され、ちょうどいい塩梅になるという。

山西省太原市のスーパーマーケット(カルフール)に並ぶ黒酢ポリタンク。もちろん家庭用だ。

山西省は黄土高原に位置するため、食材がそれほど豊かな場所ではない。そこで収穫された穀物を、技でもっておいしく楽しく食べようと発達したものが麺。そして、その穀物をブレンドし、醸造して造られたものが黒酢。

それを思うと、この食文化は、日々の食生活を豊かにしようする人間の智恵として、生まれるべくして生まれたといえる。そして、東新宿の「山西亭」にも、山西黒酢をふんだんに使った、個性的な山西郷土麺がいくつもラインナップされている。

6名以上で、山西郷土料理三昧を狙え!

さて、“日本の山西省”こと「山西亭」に入ったら見てほしいのは、グランドメニューではなく、「山西省の郷土料理」というペライチのメニュー。というのも、ほぼこの一枚に食べるべき料理、この連載風に言えば「食べねば損する」麺がまとまっているからだ。

いくつかおすすめを言いたいところだが、一番のおすすめは、6名以上で行って全制覇を狙うこと。その攻略法はこうだ。

まず、前菜には、そば粉を使った冷菜(温かくない前菜)「灌腸(グァンチャン)」や、鶏と野菜を山西省の黒酢で和えた「山西風味鶏」あたりがいい。どちらも山西黒酢の深い味わいを感じる一品だ。

そば粉の生地を厚めの短冊状にカットした灌腸は、さっぱりとしてコクのある山西黒酢味。左下の方にちらりと見えるのがそれだ。

そして、麺はメインのポジションとして君臨する。ジャガイモを使った香りのよい焼きそば「不烂子(ブランズ)」や、ジャガイモでんぷんをわらび餅のように固めて炒めた「山西炒涼粉(さんせいチャオリャンフェン)」は、山西省の個性派麺として押さえておこう。イタリアのオレキエッテと似た意味を持つ「猫耳(マオアール)」も食感がいい。

オーナーシェフの李さんが、山西大学の食堂に出店していた時に行列ができるほど大人気だったという不烂子(ブランズ)。

特筆すべきは、燕麦(えんばく)を使った麺だ。燕麦の麺を蜂の巣状に蒸籠に詰めた「莜面栲栳栳(ヨウミィエンカオラオラオ)」は見た目のインパクトに驚くが、口にすれば、ほのかな燕麦の香りが鼻に抜け、山西省の大地を思わせる。

恐らく日本で初めて莜面栲栳栳を作り始めたのは、この店ではないだろうか。そもそも作れる人がいない。そして、これが本場山西省と比べても引けを取らない、いや、むしろおいしいから参ってしまう。

莜面栲栳栳(ヨウミィエンカオラオラオ)は、黒酢だれとトマト卵だれの2種類で味わえる。

白魚のような形に整えた麺で作る焼きそば「莜面魚魚(ヨウミィェンユィユィ)」も必食だ。舌を滑る小魚ような、生きのいい食感が心地よく、ショートパスタ好きならきっとハマるだろう。

莜面魚魚(ヨウミィェンユィユィ)。毎回オーダーしてしまう。

まるで柳の葉の如し。〆は名人の削る刀削麺

さて、ここまで日本人的には「麺らしくない麺」を食べてきて、そろそろ〆……という時に、あなたは何で〆るだろうか。答え、言っていいですか? 正解は「麺らしい麺」(笑)。ここでは刀削麺がイチ推しだ。

「西安刀削麺」という言葉が通ってしまっているため、陝西省西安発祥と思われている刀削麺だが、実は山西省発祥というのは大事な話。

柳の葉のような麺をぴゅんぴゅんと鍋に飛ばし、絶妙な食感の刀削麺を作り上げてくれるオーナーシェフの李さんは、20年以上刀削麺を作って来られたその道の名人。店が忙しくない時は、好みに応じて太さを作り分けしてくれる。

私の〆の定番は、中国の和え麺の定番「油泼(ヨウポー ※写真)」か、中国の永遠の家庭料理「トマト卵炒め」を載せた刀削麺。もちろん、6名以上の胃袋が結集していれば、どちらも迷わず頼めるはずだ。

油泼刀削麺(ヨウポー)。「西安刀削麺」という言葉が通ってしまっているため、陝西省西安発祥と思われている刀削麺だが、実は山西省発祥だ。

そして、最後にもうひとつ。グランドメニューは見なくてもいいといったが、ぜひ水餃子はオーダーしてほしい。店内握りたて、ゆでたての餃子は、舌の上を踊るようなつるんとした食感。噛めば肉汁とともに絶妙なコシが感じられて、心地よさにうっとりする。

おいしいものをよく知る友人が「おいしいものはゼロカロリー」と言っていたが、山西亭に行った日は、その呪文を唱えよう。遠慮して食べたってしょうがない。なんたってここは、黒酢と麺の国なのだから。

グランドメニューは見なくても、水餃子は必ず頼もう。

サトタカ(佐藤貴子)

サトタカ(佐藤貴子)

食と旅を中心としたエディター、ライター、コーディネーター。大学卒業後、大手エンタテインメント企業で映像や音楽コンテンツの仕入、映画のPR等を務めた時、担当した映画監督が大の中華好きだったことから中華にハマる。
独立後、中華食材専門商社の小売向ECサイトの立ち上げと運営を通じて中華食材に精通。雑誌、会報誌、ウェブ等で中華に関する執筆多数。中華がわかるウェブマガジン『80C(ハオチー)』ディレクター。さまざまなテーマの中華食事会も企画する。

山西亭

住所:
東京都新宿区大久保2-6-10 B1F
TEL:
03-3202-7808
アクセス:
副都心線、都営大江戸線東新宿駅から徒歩2分
営業時間:
ランチ 11:00〜15:00、ディナー 17:30~23:30(L.O.23:00)
定休日:
日曜日
支払い方法:
カード可

更新: 2019年4月10日

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