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両国の蕎麦の名店 「江戸蕎麦 ほそ川」|マッキー牧元の「行かねば損する東京の和食」

1年間の外食数は600軒以上。高級店からB級までをくまなく知り尽くすタベアルキスト、マッキー牧元さん。食べ歩きのプロ中のプロに、今行くべき東京の和食店を教えてもらいます。

両国「江戸蕎麦 ほそ川」

東京、いや日本を代表する蕎麦の名店。まず「せいろ」をいただき、その後に「かき蕎麦」やフランス産の鴨を使った「鴨南蛮」(いずれも冬季のみ)、春の「若竹蕎麦」、夏の「冷やかけ蕎麦」などをいただくといい。店主、細川貴志氏は、埼玉県で独立し、名声を得た後、2003年に東京両国に移転。食通だけでなく、多くのシェフもファンが多い。

4タイプある東京の蕎麦屋

蕎麦、寿司、天ぷら、うなぎは、江戸を代表する食文化である。

いま全国に、この4種の料理店はあるが、トップレベルは東京に多く集まっていて、他の追随を許さない。

今回は蕎麦である。

東京の蕎麦屋は、4タイプある。

一つは、百年以上続いた老舗蕎麦屋で、神田「まつや」、浅草「並木薮」、神田「室町砂場」、麻布十番「更科堀井」など数軒の蕎麦屋が、人気を得ている。

次に、いわゆる街場の蕎麦屋である。そして、立ち食い蕎麦屋も盛況である。

最後が、自家製粉のお蕎麦屋さんである。自家製粉は石臼挽きや、中には専用畑で蕎麦を栽培している店もある。この4種が、東京にはひしめいている。

自家製粉蕎麦の食べ比べ

昔は、人口比率あたりの店舗数はトップだったが、今は全国11位と減少しているという。ただし、バリエーションの多彩さと質の高さでは、ダントツである。その中で最も面白いのが、自家製粉の蕎麦屋である。様々な産地の食べ比べや、太さ違いの食べ比べ、加水率の違い、打ちたてではなく1日寝かせた蕎麦を食べ比べるなど、様々な提供の仕方で、我々を喜ばせてくれる。そうした蕎麦を食べ歩いていると、それぞれにおいしく、自分の基準がわからなくなっていくことがある。その時に訪れるのが、「江戸蕎麦 ほそ川」である。

幸福度抜群 店主・細川さんが選ぶ蕎麦前

暖簾をくぐり、広々とした店内に座る。まずは蕎麦前といってみようか。それぞれの野菜の固有な味や香りを活かし、かつ最良の硬さに加熱された、野菜の力強さを感じる「やさい揚げびたし」や、見事な大きさでコクが深い「穴子てんぷら」などで酒をいただく。酒も「九平次」「飛露喜」「磯自慢」など、酒飲み心をくすぐる銘酒がそろえられていて、つい杯を重ねてしまう。季節季節で登場する「焼きそら豆」「ふきのとう天ぷら」「わさび醤油漬け」といった料理もいい。いずれも店主の細川さんの慧眼で選りすぐった食材であり、日本の豊かさに感謝する料理である。

品格と暖かさが同居するオリジナルのつゆ

酒を2本いただいた。そろそろ蕎麦といこう。

まずは「せいろ」である。極細の蕎麦がズルルっと唇に触れ、舌を過ぎ、喉に当たる。

噛む。

蕎麦はしなやかだが、歯を軽く押し返すたくましさがあり、喉に落ちる刹那、草のような野生の香りが鼻に抜け、ほのかな甘みが顔を出す。凛々しさの中に優しさがある。そんな蕎麦を、さらりとした旨さの中に品格があり、親しみやすさがあるつゆが、そっと持ち上げる。

品格のあるつゆは多いが、その中に暖かさも同居しているつゆは、他にはない。

「うまいなあ」。

思わず言葉が漏れた。この店で蕎麦を手繰ると、いつもこの言葉が自然と出る。

次に「かけ蕎麦」をいただこう。

淡い鼈甲色のつゆの中に沈む蕎麦が、愛おしい。まずつゆを飲めば、鰹節の香りが漂い、心を丸くする。蕎麦をすすれば、温かい蕎麦が唇を優しく震わせ、噛めば、ねちっと崩れる。冷たい蕎麦より甘みをふくよかにさせながら、体をほんわりと温めていく。

「ふうっ」

充足のため息一つ。にやけた顔で、最後の一滴まで飲み干す。

種物も上品。嬌声が上がる見事な牡蠣

種物も、「ほそ川」ならではの逸品がある。その一つ「牡蠣蕎麦」は、出てきた瞬間に嬌声が上がるほど、牡蠣が大きい。大ぶりの見事な牡蠣が3個、かけ蕎麦の上で乳白色の肢体を輝かせている。ぷっくらと膨らんだ身を見せつけるようにして、人間を誘う。振り柚子された牡蠣を口に運ぶ。でっぷりと太った牡蠣は、身体に満たした海の滋養を放出する。ミルキーな牡蠣のジュースが押し寄せる。しばし口が聞けないほどの充足感が押しよせる。牡蠣のエキスが口の中に残っている間に、すかさず蕎麦を手繰る。蕎麦のほのかな甘み、品格のあるつゆ、牡蠣の旨みが渾然一体となって、一気に冬への感謝が湧き上がる。

「ほそ川」の蕎麦は、しみじみとうまい。それは、素朴なたくましさである。「どうだうまいだろう」と、迫りくる蕎麦ではない。老練な“熟れた味”があって、「蕎麦って、これでいい」と、教えられる。だから僕は、蕎麦のおいしさがわからなくなった時には、「ほそ川」にいく。

マッキー牧元

マッキー牧元

1955年東京出身。㈱味の手帖 取締役編集顧問 タベアルキスト。日本国内、海外を、年間600食ほど食べ歩き、雑誌、テレビなどで食情報を発信。「味の手帖」「朝日新聞WEB」「料理王国」「食楽」他連載多数。三越日本橋街大学講師、日本鍋奉行協会顧問。最新刊は「出世酒場」集英社刊。

江戸蕎麦 ほそ川

江戸蕎麦 ほそ川

住所:
東京都墨田区亀沢1-6-5
TEL:
03-3626-1125
アクセス:
都営地下鉄大江戸線両国駅A3出口より徒歩1分、 JR総武線両国駅東口より徒歩6分
営業時間:
11:45~14:30(14:00L.O.)、 17:30~20:00 (19:30L.O.)
定休日:
月曜日、第1・3火曜日
支払い方法:
クレジットカード不可
URL:
https://www.edosoba-hosokawa.jp

更新: 2019年2月27日

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