“美味しそうなひと”が作るイタリアン 恵比寿「golosita.(ゴロシタ)」| ハヤシコウの「行かねば損する東京のイタリアン」
日本人初のイタリア人! イタリア渡航歴24年。イタリアをライフワークに活躍するハヤシコウさん。自宅には醤油がない(つまり和食は食べない!)ほどイタリア料理好きなコウさんに、今行くべき東京のイタリアンを教えてもらいます。
カウンター10席をシェフひとりが切りもり
シンプルな赤いロゴがガラス越しに見える。
本当に美味しい料理を作るのは、美味しそうなひと……。「ゴロシタ」のシェフ長谷川慎さんの第一印象が、まさに“美味しそうなひと”だった。愛嬌ある笑顔にややふっくらした体型、といっても無駄のない肉付きだから、普段の食生活のよさが容易に想像できる。
恵比寿駅から徒歩約3分、今年で5年目を迎えるお店は雑居ビルの4階にある。ビルのエレベーターを降りると、ガラス越しにシンプルな「golosita」のロゴ。カウンター10席の店内は壁面クロークがあって、お客の荷物も収納できるから店内はスッキリ。調理台の上も無駄なく整頓されている。準備時にはお手伝いの人がいるそうだが、基本的に仕込みからすべて長谷川シェフひとり。
コウさんが“美味しそうなひと”と評する長谷川慎シェフ。
店をオープンしてからミラノで修業?
長谷川さんはイタリアで何年も修業をしたシェフではないけど、 本当に美味しいイタリア料理を知っている。ミラノに「LA LATTERIA:牛乳屋」という名前の食堂がある。ブレラ美術館の近くにある家族経営の小さな食堂なのだけど、美味いもの好きの人たちにはとても評判のいい店だ。出されるメニューは、シンプルな見た目からは想像できないほど美味しい。リッチなサフランのリゾットもいいけれど、ここのレモンのパスタを食べてみてほしい。特に伝統的でも郷土的でもないけれどどことなく自由で、イタリア料理の奥深さを存分に感じるこが出来るはずだ。
「LA LATTERIA」の厨房に入ることを許された唯一の日本人が、この長谷川シェフ。「golosita」を立ち上げる前のイタリア旅行中にこの食堂に通ってファミリーと仲良くなり、恵比寿にお店をオープンした後、ミラノへ戻って2週間働かせてもらったそう。オープンした後に修業するっていうのは順序が違うという人もいるけれど、目的意識や問題意識を持っての修業と思うと、かなり効率がいい。イタリアは家族の繋がりが強いので、家族以外の人を、ましてや厨房の中に入れるなんて、普通だったら考えられない。しかも、ほとんどイタリア語を話せない長谷川シェフがなんて……異例中の異例。お店の人に聞いたことはないけれど、それこそ、長谷川シェフが“美味しそうな人”に見えたからだと勝手に納得している。
濃厚な魚介ソースを食べるためのパスタ
細い細いロングパスタ、マッケロンチーニを使った魚介ソースのパスタ。
「ゴロシタ」でこの日食べたメニューは、冷菜3品、温菜4品、魚1品、肉1品、パスタ1品、ドルチェ1品と全11皿。それぞれ小皿で出されるのだけれど、食べる人を見て作っているから量もちょうどよくて心地よい(美味しいなと思う料理も、食べきれない量だと残念だし……)。一番印象に残ったのが「魚介のマッケロンチー二」。マッケロンチーニというとマカロニの細いものって思われる人もいるだろうけど(実際、そういう名前の商品もイタリアにはある)、実は細い細いロングパスタのこと。14世紀頃までは、小麦粉を練った食べ物のことを「マカロニ」と呼んでいたので、今もローマ時代の文化が色濃く残っている中部イタリアでは、マカロニという名前のロングパスタがいくつか残っている。
このマッケロンチーニに、ホウボウとエビから取った魚介ソースとアイオリを。パスタを食べるというより、濃厚な魚介ソースをパスタで口に運ぶ感じ。すこし無作法だけど、お皿に残ったソースも残さずパンでぬぐって口に(食事の相手に見られることなく、こんな無作法が出来るのはカウンターならでは!)。これも本当に美味しいイタリアンだからこそ、だ。
バローロに匹敵のリーズナブルワインをグラスで
コウさんのイタリアでの記憶を呼び起こすヴァルテッリーナの赤ワイン。
最後にワインの話をすこし。ここ「ゴロシタ」にはワインリストがない。基本的にはワインはグラス。といっても、料理とペアリングというわけではなく、リクエストに応えてスパークリングワイン、白ワイン、赤ワインを出してくれる。この日のワインでうれしかったのは、ミラノのあるロンバルディア州のヴァルテッリーナという土地の赤ワインだった。ヴァルテッリーナは深い谷にあり、日当りのよい斜面にブドウを植えて、人は日当りの悪い場所に住むという貧しい土地。バローロと同じブドウ品種のネッビオーロ種(この土地ではキアヴェンナスカ種と呼ぶ)から赤ワインを造っている。なかでも、サッセッラと呼ばれる土地はあまりの急斜面で機械が使えず、人の手だけでブドウを造っている。バローロに比べて安価ではあるけれど、高品質で高評価のワイン。学生時代に、このヴァルテッリーナのレストランで働いていたことがあるので、エチケットに描かれた急斜面が懐かしくうれしい。それこそ、「魚介のマッケロンチーニ」とも一緒にいただいたのだけど、しっかりした旨みのソースにも負けないワインだった。前菜も、魚も、肉も食べた後に濃厚なパスタでしっかり締める。本当に美味しいイタリアンには、〆のラーメンなんて要らない。
ハヤシコウ
株式会社ミズコルビノデザイン 代表。多摩美術大学卒、都内イタリアン勤務の後、イタリアのマルケ州ウルビーノISAに留学。帰国後、都内ワインバー勤務の後、2005年ミズコルビノ・デザイン設立。24年にわたりイタリアと日本を往復する中で培ったイタリアへの造詣を生かし、東京のイタリアンを中心に国内外の店のロゴやマーク、内装デザイン、メニューの監修などを手掛ける。2018年、「サルメリア69」の新町賀信氏と共に一般社団法人おいしい生ハム普及協会設立。
golosita.ゴロシタ
- 住所:
- 東京都渋谷区恵比寿南1-18-9 TimeZoneヒルトップビル 4F-A
- TEL:
- 03-5794-8568
- アクセス:
- JR山手線恵比寿駅西口徒歩4分、東京メトロ日比谷線恵比寿駅徒歩5分
- 営業時間:
- 18:30〜/19:30〜/20:30〜とスタートの指定あり
- 定休日:
- 基本的には日曜定休だが不定休
- 支払い方法:
- クレジットカード可(VISA、MASTER、JCB、AMEX、Diners)
- URL:
- http://ebisu-golosita.tokyo
更新: 2018年11月29日
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