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「魚の国の人」も脱帽 銀座「智映」| マッキー牧元の「行かねば損する東京の和食」

1年間の外食数は600軒以上。高級店からB級までをくまなく知り尽くすタベアルキスト、マッキー牧元さん。食べ歩きのプロ中のプロに、今行くべき東京の和食店を教えてもらいます。

こんな日本料理店はどこにもない!

私たちは「魚の国の人」である。

世界のどの人種よりも、多くの種類の魚を様々に調理して食べている。世界のどの国の人よりも、魚のことを知っている。この店に来るまでは、そう思っていた。だが、確かにそうではあるのだが、「智映」で魚料理を食べると、いかに今まで上っ面の魚の魅力しか見ていなかったことを、思い知るのである。

しかも、鯛やマグロ、サンマや鯖、イワシやイサキなど、誰でも知っている魚でも、未知の魅力を発見してしまう。僕が知る限り、こんな日本料理店は、他にない。

独学で技を極めた女性店主のコース料理

タベアルキストの舌ですら唸らせてしまう、店主の北山智映さん。

「智映」は、割烹である。

店主は、北山智映さん(39)で、武藤啓司さんと二人で切り盛りしている。コース一本で、北山さんの料理が7品出た後、武藤さんの握る寿司が5貫ほど出されて締めくくる。

北山さんは、ほぼ独学である。

料理を志した20代後半の頃は、イカの皮を剥くことも知らなかったというズブの素人だった。だが、魚が好きだった。誰よりも魚を愛していた。釣りも熱心にしていた関係で、いろんな店で魚料理を食べるたびに、もっと違う魅力がこの魚にはあるのになあと思ったという。修業をほぼしなかったが、日本料理の基本は徹底的に独りで学んだ。だから既成概念にとらわれない。目の前にある魚のことだけを考えて、その愛している持ち味を、どうしたら活かせるかだけを、虚心坦懐に考え抜いた。

ある日、二つ星のフランス料理店のシェフをお連れしたことがある。彼は帰り際にこういった。

「衝撃でした。なにより魚だけと向き合って、愛し、料理しているのが素晴らしい。僕も独創的な料理をやっていて、評価もいただき、自由に見えるかもしれません。でも多くの見えぬしがらみがあって、それに拘束されている自分がいる。自由に、自分の思うままに羽ばたいているあなたが羨ましい」

仕事が施されて、色気をまとった魚たち

料理は、どんな食通だろうと、出会ったことがない料理である。

「黒ムツはおろすと肉汁が流れ出てしまうので、鱗を落として、丸焼きにしますね」と言いながら彼女は、加熱→余熱→加熱→余熱という、肉のような火入れで仕上げた。黒ムツは味がぼんやりしているので、わさびと醤油につけて食べろという。

食べれば、「しっかりしろい! お前は本当はうまいんだ」と、わさびが叱咤して、本来の滋味をじわじわと舌に乗せてくる。マゴチの刺身は、最適な厚みに切られ、一枚ずつ湯を潜らせ、自家製の蝦醤油を一滴垂らした煎り酒を塗る。生の時は素っ気なく、火を通すと野暮ったくなるマゴチは、こうして色香を灯す。噛めば柔らかい甘みが広がって、その余韻がいつまでも続く。トリ貝は、白い内側を5秒、黒い外側を2秒炙って出してくれた。食べれば、色気をぐっと増して誘惑する。しかし、色気で誘うものの「身体は許さないわよ」という、垢抜けた、張りのある色っぽさがある。まさに粋な味である。軽く味噌に漬けたインドマグロの刺身は、甘い色香を膨らませて、口の中でくるくる回る。舌にしなだれ、ねっとりからみあっては、消えていく。あとに残るは、酸味の影。舌の両端から口の奥に向けて、きれいな酸味があって、さっきまでの蜜月を夢にする。

加熱→余熱→加熱→余熱。完璧な火入れをされた黒ムツ。

すぐに箸をつけたくなるほどに輝くマゴチ。

北山さんの絶妙な感覚でさっと炙られ、“粋な美女”になったトリ貝。

サザエは、塩麹漬けにしたウニと抱き合わせた。すると、いつもは磯の香りだけあって、味は素っ気ないサザエが色気を醸す。塩麹漬けウニは、生のウニを食べた時の尖った甘みがなく、熟れて丸くなった甘みがサザエに艶を与える。どの料理も、何気ないようでいて、合わせる食材の魅力を徹底して考え抜き、緻密に計算された料理である。

塩麹漬けのウニと出会ったサザエは艶を帯びて……。

こういう料理こそ「仕事がしてある」というのではないだろうか。

「魚の国の人」としての僕は、この料理がすぐに食べることが叶う東京にいることが、誇らしく、心から嬉しい。

武藤さんが握る締めの寿司も超一流。

「割烹智映」のスペック

料理はコースのみ、16000円、 20000円(税別)の2つのコース。豊洲市場ほか全国の漁港から、東京でも最高品質の魚介を使う。コースは、先付、前菜、煮物椀、お造り、酒肴、焼き物、煮物、寿司の8品。締めの寿司も、銀座の一流寿司屋と比べても引けを取らない、素晴らしい寿司である。

割烹智映かっぽうちえい

住所:
東京都中央区銀座7-7-19 ニューセンタービルB1F
TEL:
03-3573-7022
アクセス:
東京メトロ銀座駅より徒歩3分
営業時間:
18:00〜21:00(L.O.)
定休日:
土・日曜・祝日
支払い方法:
クレジットカード可(VISA、MASTER、JCB、AMEX、Dinersなど)

更新: 2018年11月23日

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