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ピエモンテのほっこり子羊料理 祖師ヶ谷「Fiocchi(フィオッキ」|ハヤシコウの「行かねば損する東京のイタリアン」

日本人初のイタリア人! イタリア渡航歴24年。イタリアをライフワークに活躍するハヤシコウさん。自宅には醤油がない(つまり和食は食べない!)ほどイタリア料理好きなコウさんに、今行くべき東京のイタリアンを教えてもらいます。

僕の定番中の定番。祖師ヶ谷の隠れ家的イタリアン

お隣のテーブルとの距離がほどよい「フィオッキ」の内観。

「フィオッキ」は、小田急線の祖師ケ谷大蔵駅から徒歩5分程の都心からはすこし外れたところにあるお店。煉瓦のヴォールトが印象的な店内は、今年で18年目を迎えるとは思えないほどによく手入れされていて清潔だ。間隔を広くとった客席は、おだやかで豊かな気持ちにさせる。食事はランチが7,500円〜、ディナーは12,000円〜のコースのみ。カジュアルなお店ではないけれど、大好きな人とのディナーはもちろん、家族でのんびり食べたい時にとても便利なお店だ。数年来の友人でもある堀川亮シェフは、ヴェネト州、エミリア・ロマーニャ州、ピエモンテ州、トスカーナ州とイタリアの北部を修業された方。ここ「フィオッキ」はピエモンテの郷土料理が食べられるお店で、上の階にはトスカーナ料理を出す姉妹店もある。

主に北イタリアで修業したシェフの堀川亮さん。

堅実なピエモンテ人が生んだ郷土料理を

藁の包みを開けるとふわっと立ち上る、子羊の芳しい香りが食欲をそそる。

ピエモンテ州の特徴は地味で真面目なところ。車のフィアット社があったり、美味しいワインはあるけれど、見栄を張らず、堅実で、伝統を大事にする土地。料理だってそう。こちらの看板メニュー『仔羊の藁包みロースト』は、実に地味で堅実な一皿。イタリアの北部は、陽気な南部と違って冬が長くて寒い。この料理が残るペッリチェ渓谷あたりは特に厳しい。ここに住んでいた清貧で知られるヴァルド派が伝えたのが、“前日の残りのお肉を残った灰で温める”この料理。出かける時に藁に包んだ肉を暖炉の横に置いておくと、帰って来た時には肉がちょうど温まっている。とても堅実なピエモンテらしい料理。

「フィオッキ」で必ずいただく定番料理

最高の火入れの状態となった子羊をじゃがいもと一緒にいただくメインの一皿。

テーブルに運ばれてくるのは紙と藁に包まれた肉と、小さな鍋に埋められたじゃがいも。包みを開くと、湯気とともに仔羊の肉特有のミルキーな香りが立ち上り、つづけて初夏の柔らかい草原の香りが漂う。毎年5月に収穫し天日干しされた藁はたっぷりと陽の光を浴びているため、冬になってもずっと初夏の香りが残る。ひと口食べると、直火で焼いたのではありえない、じんわりとやわらかい肉。藁で包んでいるから、ゆっくりとやさしい火入れに仕上がっていて、暖かな夏の訪れを思い出させる。ヴァルド派の人々は厳しい冬をこうした料理を食べて過ごしていたのだろうな……などと、料理の伝わる土地の景色や生活が思い浮かぶ。こんな料理こそが(僕の思う)本当に美味しいイタリアンだ。

僕が思う、ボトルワインの楽しみ方

レストランでだからこそ出会えるマニアックなワインのボトルは、レストランでの楽しみの一つ。

レストランでは、いただくワインも僕の大きな楽しみのひとつ。この日はスパークリングワインで乾杯の後、ODDERO Dolcetto d'Alba 2003をボトルで注文。ピエモンテ州といえば、バローロやバルバレスコといった高級ワインが有名だけど、地元の人たちが日常的によく飲んでいるのは、このドルチェット種のワイン。「フィオッキ」にはちょっと口下手なソムリエがいて、いつもごく簡素な説明でマニアックなワインをすすめてくれる。料理に合わせて絞り込まれたグラスワインは簡単だけど、ソムリエに相談してワインを決め込むのはもっと楽しい。今回注文したワインのヴィンテージは、“アフリカの夏”と呼ばれるほど暑かった、僕のイタリア留学最後の年。住んでいた部屋の隣にあった大きな庭の管理を頼まれていたのに、芝生や植木を枯らしちゃったなんて苦い思い出のある2003年。ワインにとって暑すぎる夏はあまり良くない。けれど、このボトルは暑い年のワインにありがちな過熟感もなく、穏やかなタンニンと適度な果実味でとても飲みやすかった。仔羊はもちろんのこと、鹿肉や鮭とも楽しめた。飲み終わる頃には、15年前の苦い思い出を忘れるほど。ワイン大国のイタリアだけど、家庭の食卓ではヴィンテージのワインを飲んだりはしない。ヴィンテージのワインを飲むのはレストランで、というのがお決まり。ソムリエがいてワインをしっかり管理しているからこそヴィンテージのワインは楽しいのだ。これも(僕の思う)本当に美味しいイタリアンの証だ。

ハヤシコウ

RECOMMENDER ハヤシコウ

株式会社ミズコルビノデザイン 代表。多摩美術大学卒、都内イタリアン勤務の後、イタリアのマルケ州ウルビーノISAに留学。帰国後、都内ワインバー勤務の後、2005年ミズコルビノ・デザイン設立。24年にわたりイタリアと日本を往復する中で培ったイタリアへの造詣を生かし、東京のイタリアンを中心に国内外の店のロゴやマーク、内装デザイン、メニューの監修などを手掛ける。2018年、「サルメリア69」の新町賀信氏と共に一般社団法人おいしい生ハム普及協会設立。

Fiocchiフィオッキ

Fiocchi

住所:
東京都世田谷区祖師谷3-4-9
TEL:
03-3789-3355
アクセス:
小田急小田原線祖師ヶ谷大蔵駅徒歩4分
営業時間:
ランチ11:30〜13:30(L.O.)、ディナー18:00〜
定休日:
水曜日
支払い方法:
クレジットカード可(VISA、MASTER、JCB、AMEX、Diners)
URL:
http://www.fiocchi-web.com

更新: 2018年11月7日

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