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シェフの必需品|青山「REVIVE KITCHEN THREE AOYAMA」 井口 和哉シェフ

グルメシーンを牽引するシェフが、料理を作るうえで欠かせない食材や道具を紹介する連載「シェフの必需品」。今回訪れたのは、肉や魚を使わない“野菜フレンチ”のレストラン「REVIVE KITCHEN THREE AOYAMA(リヴァイブ キッチン スリー アオヤマ)」。野菜のみで作られていることを忘れてしまうほど、力強い旨みと随所にアクセントを利かせた料理の裏側には、井口和哉(いぐち かずや)シェフの必需品の存在がありました。

本格フレンチを野菜だけの美味しさで 「REVIVE KITCHEN THREE AOYAMA」 井口和哉シェフ

肉や魚は一切なし、野菜のみを使ったフレンチベースの料理が楽しめる「REVIVE KITCHEN THREE AOYAMA」。朝・昼はブランチコースやカフェラテペアリングを、夜は「restaurant RK」と名を変え、本格的なフルコースやアルコールペアリングを提供。ベジタリアンやヴィーガンでなくとも心から満足できる美味しさの秘密は、新鮮な野菜が持つ力強さと、「ヴィーガン料理ではなく、一流レストランと同じ土俵で勝負している」と話す、井口和哉シェフの“クリエイション”のスキルにあります。肉や魚が使えないのではなく、自身の料理の表現方法として、それらを使わないだけ。「たとえ肉や魚が使える環境だったとしても、完成している料理」。それが井口シェフが目指す、野菜フレンチです。

はじまりは、名店「タテルヨシノ銀座」から

小学校の卒業文集にはすでに、「料理人になりたい」と夢を綴っていたという井口シェフは、兵庫県北部の但馬地域出身。高校卒業後に大阪の調理師専門学校へ進み、フレンチの道へ。週末になると東京へ出向き、名だたるフレンチレストランを食べ歩いていたといいます。その中で出合ったのが「タテルヨシノ銀座」(東京・銀座)でした。圧倒的な美味しさに魅了され、即、入社を直談判。フランス料理人としてのスタートを切ったのです。その後、「ル・コントワール・ド・ブノワ」(大阪・西梅田)、「ミッシェル・ブラストーヤ ジャポン」(北海道・洞爺)などの名店で研鑽を積み、「ビストラン エレネスク」のシェフに着任。2019年11月から、「REVIVE KITCHEN」のシェフとして腕をふるっています。

自分のルーツを追ってたどり着いた、野菜だけのフレンチ

すべて野菜のみで構成する「REVIVE KITCHEN」の料理ですが、井口シェフ自身は、ヴィーガンでもベジタリアンでもありません。「どっぷりとフレンチの世界につかってきたので、以前は野うさぎや鴨もさばいていましたし、ジビエも好きで今でも食べますよ」。そう語る井口シェフは、野菜だけの料理は“自分らしいクリエイション”と表現します。

シェフが野菜と向き合うきっかけとなったのは、「ル・コントワール・ド・ブノワ」時代。同店のプロデューサーであり、世界的なフレンチの巨匠アラン・デュカス氏が唱える、「料理人としての12の心得」との出合いにありました。その一つが、「記憶=メモワール」という言葉です。意味するところは、「自分がどこへ向かって行くのかよりも、どこから来たのかを大切にせよ」。この言葉から、「自分のルーツとは何か」を意識するようになったと振り返る井口シェフ。

「志しているのはフランス料理人であっても、自分が生まれたのも育ったのもフランスではない。それまでは、フレンチである以上はフォアグラやトリュフなど、本場フランスの最高食材で作るのが当たり前だと思っていたのですが、もっと別の表現方法があるのでは? 考えるようになりました」

兵庫県の自然豊かな地域で育った井口シェフにとって、もっとも身近な食材だったのが野菜です。蘇ってきたのは、山菜を採りに行ったり、祖父母が畑で野菜を育てていたりした、幼い頃の“記憶”。「しっくり来たんですよね。野菜だけのフレンチなんて他にないですし、いつか自分のクリエイションに活かしたいとずっと温めていました」。自分は、ヴィーガン料理ではなく、あくまで修業してきた一流店と同じ土俵に立っているのだと話す井口シェフ。それぞれの料理人が、あらゆるもの中から自分の視点で食材や調味料を取捨選択するのと同じように、「ただ、肉と魚を使わない」、それだけなのです。

「REVIVE KITCHEN THREE AOYAMA」井口和哉シェフの必需品は、徒歩1分足らずの“野菜市場”

そんな井口シェフの必需品は、店から歩いて1分もかからない場所で週末に開催されている「青山ファーマーズマーケット」。毎週、スタッフと一緒にコンテナボックスを抱えて野菜の仕入れに行くのだそう。「とにかく近いので、すぐそこに畑があるようなものです(笑)。関東近郊から出店する生産者さんがほとんどだから野菜の鮮度がいいし、何より農家さんと直接会話ができるのがおもしろくて」。新しい野菜に出合えることはもちろん、それがどのように育つのか、どんな工夫をしながら栽培しているのか、また美味しい食べ方などを聞けることが刺激になると話します。

青梅の有機野菜農家「Ome Farm(オウメファーム)」、小田原で西洋野菜を栽培する「Green basket japan(グリーン バスケット ジャパン)」、スパイス専門店「東京スパイスハウス」など、決まって仕入れている店がいくつかあるものの、毎回必ず、ぐるりとすべて見て回るのがお決まり。頭で考えたり調べたりして料理のアイデアを練るよりも、実際に野菜や食材を目にすることで自然とインスピレーションが湧くのだとか。

マーケットの出店者は小さな農家ばかり。ゆえに、ある週は大量にあっても翌週はゼロ、という食材も少なくありません。でもだからこそ、塩漬けや発酵、乾燥など、フレッシュ以外にも素材の持ち味を引き出す加工方法を考え、“もう一度旬をつくる”工夫も。「ここで仕入れる野菜は、力強い美味しさを持っているので、どんなに調理をしても旨みがしっかり残る。『素材を活かすため』と、最近はほとんど手を加えない料理人も多いですが、僕はあえて加工し倒します。最後まで残る個性こそ、その野菜の本質的な個性であり、底力だと思うんです」。しっかり肉厚のピーマンでも丸焦げになるまで焼いて皮をむき、ジューサーにかけてソースしたり、香り高いマッシュルームも発酵させてムースにしたり。それでも丹精込めて育てられた野菜は、その野菜らしさを失わないからすごいと、井口シェフは目を輝かせます。

 

次回の足跡レストランでは、そんな青山ファーマーズマーケットで仕入れた野菜で作る、井口シェフのスペシャリテと共に、シェフが掲げる“野菜フレンチ”の在り方をご紹介します。

REVIVE KITCHEN THREE AOYAMA/restaurant RKリヴァイブ キッチン スリー アオヤマ / レストラン アールケー

住所:
東京都港区北青山3-12-13
TEL:
03-6419-7513
アクセス:
東京メトロ銀座線・千代田線・半蔵門線 表参道駅より徒歩5分
営業時間:
ランチ 月水木/11:00-15:30(15:00 L.O.) 金土日/11:00-17:00(16:00 L.O.)/ディナー 17:00-20:00(19:00 L.O.) ※東京都の自粛要請などにより、営業時間は変更することがあります。
定休日:
火曜日
支払い方法:
クレジットカード可(JCB、AMEX、VISA、MASTER、Diners)
URL:
https://www.threecosmetics.com/shop/revive-kitchen/aoyama/

写真・広瀬 美佳 文・山本 愛理

更新: 2021年5月21日

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