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食に携わる注目の人物をインタビュー

シェフの必需品| 南青山「慈華」 田村亮介シェフ

グルメシーンを牽引するシェフが、料理を作るうえで欠かせない食材や道具を紹介する連載「シェフの必需品」。2021年最初にご紹介するのは、オープンからわずか1年目でミシュラン1つ星に輝いた、南青山の中国料理「慈華(いつか)」の田村亮介(たむら りょうすけ)シェフの必需品です。

古典を重んじ、素材、人、料理を慈しむ。「慈華」 田村亮介シェフ

「素材を慈しみ、人を慈しみ、料理を慈しむ」。そうコンセプトを掲げ、悠久の歴史ある中国文化と、日本の心とテロワールを融合した中国料理でお客様をおもてなしする「慈華」。田村亮介シェフは、「日本の地でしか表現できない中国料理とは何か」を自問し、今もなお挑戦と進化を続けています。「慈華」の料理の根底にあるのは紛れもない中国の古典料理ですが、日本人シェフ・田村亮介の技と魂が込められることで、それは中国では出合えない“日本”を感じる中国料理になるのです。

名店の名を手放し、新たな地で始めた挑戦

実家は街の中華料理店。幼い頃から料理に親しんできた田村シェフは、高校卒業後に調理師専門学校へ進み、中国料理を専攻。「店を継げと言われことはなかったのですが、料理の中では中国料理以外あまり興味が湧かなくて。自然と身体に染み付いていたのかもしれませんね」。横浜「翠香園」、池袋「華湘」を経て、ヌーベルシノワの名店「麻布長江」で長坂松夫シェフに師事。その後、台湾に研修に行くなど、本場での修業も重ねました。帰国後に「麻布長江 香福筵」の料理長に就任。2009年にオーナーシェフになり、建物の老朽化によって2019年4月に閉店するまで10年間を勤め上げました。同年12月に南青山「慈華」をオープン。わずか1年目にして、2021年のミシュラン1つ星を獲得しました。

師との出会いが人生の転機。斬新に見える料理の原点は、古典料理

22歳で田村シェフが「麻布長江」に入店した当時は、まさにヌーベルシノワ全盛期。いわゆる“中華料理”にしか馴染みがなかった日本人にとって、それはまったく新しい中国料理の世界でした。「こんな斬新な料理が学べるのか!」と胸を躍らせていたという田村シェフですが、はじめて師・長坂松夫シェフに会った時は、「大きなショックを受けた」と言います。「『塩は何からどうやってつくられているか知っているか? 砂糖は? 酢は?』と投げかけられて、何も答えられませんでした。もっとも身近な調味料のことすら知らずに料理人を名乗っている自分に気がつき、鼻をへし折られた感覚でしたね」。その日、長坂シェフと別れてすぐに「青山ブックセンター」で調味料の本を買って帰ったことを鮮明に覚えていると話します。

「実際に店に入ってからも、師匠が唱えるのは毎日中国の古典料理のことばかりで、新しい料理について教えてもらった記憶はほとんどありません」と、田村シェフ。古典料理に敬意を払い、それを確かに習得したうえで、独自の解釈を加えて唯一無二の料理に進化させる。その師の教えは、今の「慈華」の料理にも受け継がれています。

また、「食材と会話をすること」も師匠からの大切な教えの一つだと田村シェフ。どこで誰がどんな思いで育てたものかや、季節や産地による素材の味の違いを知れば、自ずと調理は変わる。つまり、料理は食材を知ることからがスタート。「食材を慈しむ」という言葉につながる師からの大切な教えを、今は自分の店のスタッフにも伝えているのだそう。

「慈華」田村亮介シェフの必需品 安楽窯の土鍋

ふたは二重構造。火加減の調整が必要なく、ものの15分ほどでご飯が炊きあがるそう。

今回、田村シェフが紹介してくれた二つの必需品は、まるで和食料理人を思わせる品でした。一つ目は、佐賀県の「安楽窯」の土鍋です。「安楽窯さんの土鍋はいくつか持っているのですが、これは炊飯専用の鍋です。色々と試した中でも、短時間で簡単に、それでいて抜群に美味しいご飯が炊き上がります」。有田焼をルーツに持つ「安楽窯」の土鍋は、独自にブレンドした原材料と長年培った耐火技術により、高い耐久性と熱伝導性を誇り、食材の旨みを逃がすことなくスピーディーに調理できることが最大の魅力です。「慈華」では、スペシャリテの一つの「フカヒレの煮込み」に合わせて、炊きたての新潟産コシヒカリを一卓ずつ提供。「タイミングをミスできない中で、最高に旨いご飯に仕上がるので欠かせません。フカヒレを褒められるのも嬉しいけれど、『ご飯が美味しい』が最高の褒め言葉です(笑)」。

「まるはら」の「鮎魚醤」

もう一つの必需品は、6次産業化を支援する「チーム・シェフ」プロジェクトの一環で出合った、大分県「まるはら」の「鮎魚醤」。後編の「足跡レストラン」で紹介する、「海鮮の翡翠ソース」に欠かせない調味料だそう。「さまざまな魚醤がありますが、中国料理の定番のナンプラーだとやや主張が強く色も濃い。しょっつるも塩味が強い。でもこの鮎魚醤は、塩味がやわらかくて香りが豊かなので、隠し味程度に加えるだけで全体をまとめてくれるんです」。

田村シェフが目指す“日本でしか作れない中国料理”とは? 必需品を使って作る、究極にシンプルなチャーハンや旬の魚料理に、その一端を見ることができました。続きは後編の「足跡レストラン」で。

慈華イツカ

住所:
東京都港区南青山2-14-15
五十嵐ビル2F
TEL:
03-3796-7835
アクセス:
東京メトロ銀座線 外苑前駅 4a出口より徒歩3分
営業時間:
ランチ 11:30~15:00(最終入店13:30)※前日21:00までに要予約  ディナー 17:30~23:00(最終入店21:00)※当日17:00までに要予約 (当面の間、御予約のお客様のみの営業) ※東京都の自粛要請などにより、営業時間は変更することがあります。
定休日:
月曜・不定休
支払い方法:
クレジットカード可(JCB、AMEX、VISA、MASTER、Diners)
URL:
https://www.itsuka8.com/

写真・広瀬 美佳 文・山本 愛理

更新: 2021年1月22日

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