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食に携わる注目の人物をインタビュー

トップシェフが赤坂「桃の木」に集結! ジャンルを越えたトークセッション第2弾 No.3

2020年の春、装いを新たに赤坂でリニューアルオープンした中国料理の名店「桃の木」。小林武志シェフのもとに、「カンテサンス」岸田周三シェフ、「ラ・ブリアンツァ」奥野義幸シェフ、「ザ・バーン」米澤文雄シェフとタベアルキスト・マッキー牧元さんが集結。第2回に引き続き、小林シェフの料理に舌鼓を打ちながら、ジャンルを越えた料理談義に花を咲かせました。

春巻きの巻き方の極意とは?

奥野:春巻きの揚げ方、包み方も素晴らしかったです。

小林:日本の中国料理の春巻きはグルグルグルと巻いておしまいなんですけど、広東料理の巻き方というのはグルグルとやって最後にほわっと巻いて、ちょっとふかっとさせるんです。ですからパートフィロを使っているんですかとよく聞かれるんですが、普通の春巻きの皮なんです。

奥野:そうすると揚げるの難しそうですね。

牧元:ふわっと巻かれている分、中の餡が出てきそうじゃないですか?

小林:イヤイヤ。始めにぎゅっと巻いて、中の餡に油が当たらないようにしておいて、最後に優しくやる。だからギュギュギュッとやって、ほわっと巻く感じです。

米澤:普通の中国料理は最後までぎゅっと巻くから、皮の真ん中が生っぽかったりするんだ。それが最後にふわっとやることによって、しっかり巻かれているところも揚がって、美味しくなるんですね。

牧元:でも、揚げている途中でバラバラにならないんですか?

小林:それは巻き方が上手だから(笑)。そういえば、「茶禅華」の川田シェフが十数年前にこの春巻きを食べた時に、「度肝を抜かれました」と手紙をいただきました。

牧元:そうでしたか。それはすごいですね。あと、トマト卵炒めのことも聞きたいんですが、いろいろなやり方がありますが、普通はトマトと玉子を炒めていくと思うんですが、あれはソースがけのような感じですか?

小林:トマトのソースは別に作って、卵はふわっと作る。それを最後にパッと合わせるのです。

奥野:トマトがすごく甘くて美味しかったです。

小林:高知の普通のトマトです。フルーツトマトだと甘すぎてダメで、酸味が若干来てないと味にエッジが効かないじゃないですか。

奥野:フルーツトマトを使うと、どうしても苦くなりますよね。あとザラついちゃいますね。生だったらいいんですが……。安めのトマトの方が甘くしやすいですね。

小林:それは煮て、トマトの中の煮汁を詰めていくとかですか?

奥野:そうです。ザラザラしていくのです。うちのトマトソースのスパゲティでは、普通のちょっと安いトマトを使うんです。甘すぎるのはあまり使わないですよね。

シェフごとに違う包丁の好み

岸田:牛刀を使って細かく切れるようになったというお話も聞きたいです。

小林:シェフも持っている、高村さんの包丁です。

岸田:あれはすごくいいですね。

小林:僕はプロトタイプの和牛包です。値段聞いてびっくりしたんですが、試作品を使ってみたらこれは欲しいなと思って購入しました。そしたら切れちゃうから、もう料理変わっちゃうみたいな感じでした。使っていますか?

岸田:使っています。あれはよく切れますね。テフロン加工と黒いやつ両方使っています。

牧元:それはシェフ専用ですか? 他のスタッフに使わせますか?

岸田:イヤイヤ。僕専用です(笑)

奥野:僕も僕しか使わないです。

米澤:僕も、僕しか使わないです。ただ僕は高村さんのではなく、「礼頂」という元々岐阜の関市で包丁職人をしていて独立した方の包丁を使っています。

岸田:僕は高村さんに普通より半分くらいの薄さにして欲しいとお願いして、作ってもらったんです。そしたらよくしなるんですよ。皮引く時にもやりやすい。薄ければ薄いほど切れ味が良くなるんですよ。

ニンニクも生姜もごま油も使わない、小林シェフの料理の秘密

牧元:料理のお話をもう少し伺ってもよろしいですか? スペアリブのやり方もお聞きしたいです。

小林:バラ軟骨という部位なんです。スペアリブなんだけど、骨が軟らかい部分です。

牧元:お腹のところですね。

小林:そうです。軟骨なんで、骨ごとガリっと噛めるんですね。

米澤:一回煮てますよね?

小林:いえ、煮てないです。

米澤:えっ? 煮ないんですか?

小林:生のまま切って、粉をつけて揚げただけです。

米澤:それは驚きですね。

牧元:パクチーのサラダは?

小林:あれは北京のクラシックな料理で、香菜とキュウリを入れる人もいますし、ネギの人もいます。南杏という杏の種の核で、砕くと杏仁豆腐の元になるんですが、それを入れてサラダにしたものです。味付けはいろんなパターンがあるんです。

牧元:フカヒレにみなさん感動されていました。

小林:うちのスタイルです。モミジの白湯なので、煮込んでいくとそのゼラチン質でとろみがついて、水溶き片栗粉が必要ないんです。最後に葱油でモンテするんです。

奥野:完全にコラーゲンの旨みが詰まって……。

米澤:野菜はなしですか?

奥野:ええっ、水とモミジだけで?

小林:野菜は入れていません。モミジだけです。モミジが綺麗だったらネギ生姜はいらないんです。臭み抜きだから。いい状態のモミジなので、昔から中国料理はネギ生姜と言われていますが、使いません。生姜って結構アタック強いから、あの香りがずっと残るじゃないですか。だからないと軽い料理になる。うちはほとんど生姜は使わなくていいかなと思っています。

奥野:確かに。

小林:だからあまりニンニクも使いませんし、ごま油もほとんど使いませんし、生姜もまるっきり使いません。

奥野:生姜もごま油も使わない中国料理があるとは知りませんでした。

米澤:だから食べ終わった後、口が綺麗で、何も重いものが残らないのですね。

小林:香港で師事した料理人から言われたんですが、食事し終わって、仮にゲップが出た時に嫌な匂いがする材料は使うなと。だから、ニンニクとか黄ニラとか濃いめのお酒、そういう強い要素のものは使わないんです。それを中国人から言われてびっくりしたんです。その考えで台湾に行ったら、お前はなんでそんなにニンニクを使わないんだと言われました(笑)。

ジャンルの異なる5人が実際に顔を合わせて食べるからこそ見つかる新しい発見の連続。このトークはまだまだ続きます!

岸田周三/「カンテサンス 」オーナーシェフ
三重県「志摩観光ホテル」の「ラ・メール」に入社。東京・渋谷の「カーエム」を経て2003年にパリ16区の「アストランス」(現在、3つ星)にてシェフのパスカル・バルボに師事。2004年には同店のスーシェフに就任。帰国後、2006年に「レストラン カンテサンス 」をオープン。2007年に「ミシュランガイド東京 2008」で3つ星を獲得。以来、3つ星をキープし続けている。
https://www.quintessence.jp/

奥野義幸/「ラ・ブリアンツァ」オーナーシェフ
米国の大学卒業後、企業に勤めるものの飲食への思いがあり、当時はやっていたイタリア料理の世界に興味を持つ。都内のイタリア料理店を経てイタリアへ料理留学。イタリア全州にて各地の料理を学び、1つ星・2つ星を取得している8店舗にて経験を積む。現在オーナーシェフを勤めるラ・ブリアンツァではピエモンテ州の特徴を組み込んだトリュフのオーブン焼きに定評がある。
http://www.la-brianza.com/la_brianza/

米澤文雄/「ザ・バーン」エグゼクティブ・シェフ
高校卒業後、恵比寿イタリアンレストランで4年間修業。2002年に単身でNYへ渡り、3つ星レストラン「Jean-Georges」本店で日本人初のスー・シェフに抜擢。帰国後は日本国内の名店で総料理長を務める。「Jean-Georges」の日本進出を機に、レストランのシェフ・ド・キュイジーヌ(料理長)に就任。2018年夏、「ザ・バーン」料理長に就任。
http://salt-group.jp/shop/theburn/

小林武志/辻調理師専門学校を卒業後、同技術研究所で講師を8年ほど務めた後、「知味 竹爐山房」をはじめ、数軒の中華料理店で研鑽をつみ、2005年に「御田町 桃の木」を開店。2020年に紀尾井町へ移転し、新たな挑戦に挑んでいる。
https://momonoki.tokyo/

マッキー牧元/1955年東京出身。㈱味の手帖 取締役編集顧問 タベアルキスト。日本国内、海外を、年間600食ほど食べ歩き、雑誌、テレビなどで食情報を発信。「味の手帖」「朝日新聞WEB」「料理王国」「食楽」他連載多数。三越日本橋街大学講師、日本鍋奉行協会顧問。最新刊は「出世酒場」集英社刊。

更新: 2020年11月28日

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