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食に携わる注目の人物をインタビュー

シェフの必需品|広尾「Melograno」 後藤祐司シェフ

グルメシーンを牽引するシェフが、料理を作るうえで欠かせない食材や道具を紹介する連載「シェフの必需品」。深まる秋の中、必需品を伺いに訪れたのは広尾のイタリアンレストラン「Melograno(メログラーノ)」。後藤祐司(ごとう ゆうじ)オーナーシェフの3つの必需品をご紹介します。

“見て・話して・味わって”楽しむ、本格イタリアン 「Melograno」 後藤祐司シェフ

特等席はカウンターテーブル。「Melograno」は、「レストランの楽しみは美食だけではない」と語る後藤祐司オーナーシェフが、カウンターとフルフラットになったオープンキッチンに立ち、食材にまつわるストーリーやプロの技とともに、本格的なイタリア料理で楽しませてくれるレストランです。「好みや年代が違うお客様それぞれが、好きに楽しめるように」と、メニューはアラカルトが中心。トリュフを贅沢に使ったスペシャリテはもちろん、アラビアータやチーズリゾット、肉のグリルなど、日本人に親しみのあるイタリアの定番料理も、後藤シェフの手がとびきりのご馳走に仕上げます。すべての人の「美味しいイタリアンが食べたい!」という願いを心から満たしてくれる一軒です。

精肉店から星付きレストランまで、さまざまな経験を糧に

広尾でカジュアルなパスタ専門店を営んでいた父の背中を見て育った祐司青年が、料理人を志し始めたのは16歳の頃。当時のイタリア料理ブームにも後押しされ、父と同じイタリアンの道に進みました。専門学校を卒業後に青山「Le Acacie(ア・カーチェ)」、西麻布「Croce&Delizia(クローチェ・エ・デリツィア)」などで経験を積みイタリアへ。ウンブリア州のトラットリアでさまざまな郷土料理を学ぶと、シチリア島へと渡り、2つ星レストラン「リストランテ・ドゥオーモ」で研鑽を積みます。帰国後は白金台の「BIFFI TEATRO(ビッフィ・テアトロ)」で4年半シェフを務め、2015年に独立して「Melograno」をオープンしました。

本物の美味しさを自由なスタイルで。それが“東京イタリアン”の立ち位置

店の扉を開けた瞬間に飛び込んでくる、大きなカウンターが印象的な「Melograno」。「お客様がレストランで食事をする楽しみは、料理の味だけではない」と、ここで過ごす時間を最大限に楽しんでもらうために、後藤シェフはすべての力を尽くします。

中でもオープンキッチンスタイルは、シェフがかねてから形にしたかったものの一つ。「イタリアから帰国した直後に勤めた『ビッフィ テアトロ』が、まさに厨房をコの字に囲んだフルオープンキッチンでした」。目の前にいるお客様が調理工程一つ一つに歓声を上げ、料理の感想を直に伝えてくれる様子に「“レストランで食事をする楽しみ”のうち、料理そのものって20%くらいなんだなと思いましたね。ここにいる時間を心から楽しんでもらうためには、大事なことが他にもたくさんあると教えてもらった」と語る、後藤シェフ。

だからこそ自身の店で突き詰めたのは、「どうすればお客様がここで過ごす時間を最大限に楽しめるか」。すべての調理工程が見えるカウンターテーブル、シェフの目が行き届く規模のプライベート空間、ストーリーがある食材、器、BGM、アメニティに至るまで、ここには後藤シェフのアイデアが詰まっています。

アラカルトは、その日のおすすめなども含めて常時20品前後を用意。

アラカルトに注力するのも、年齢や食べられる量、好みが違うお客様それぞれに、心から楽しんでほしいという理由から。「手間がかかっても、これだけは譲れません」とシェフは語ります。「日本のイタリアンは、本格的になるほどリストランテスタイルの店が多く、フレンチのフルコースのようにフォーマルになってしまう。でも『イタリアンが食べたい!』時って、そういう気分とは違うと思うんです。ちゃんと美味しいものが食べられて、でもトラットリアスタイルで自由に楽しめる。それが東京で求められている“イタリアンの立ち位置”だと思っています」。

「melograno」後藤祐司シェフの必需品

後藤シェフが紹介してくれた必需品は3つ。「マンチーニのパスタ」「ジョバンナさんのスペシャリテの皿」「しあわせチーズ工房のチーズ」です。

「マンチーニ」のパスタと「しあわせチーズ工房」のチーズ「幸」

一つ目の必需品は、「マンチーニ」のパスタ。「近年、手打ちパスタが重宝される傾向がありますが、トマトソースやチーズソースのシンプルなパスタなら、端切れが良く軽やかな食感がある乾麺の方が自分は好き。だからあえて選んでいます」と、後藤シェフ。さまざま食べ比べた中で、日本の軟水で茹でてもしっかりと芯が残り、麺の味わい深さが格別だったのが「マンチーニ」の麺だといいます。「パスタは本来、硬水で茹でることでよりプリッと弾けるような食感が楽しめるのですが、『マンチーニ』のパスタは日本の水でもそれに遜色なく美味しく仕上がります。ちなみに家でパスタを茹でる時も、硬水を少し加えるだけで美味しさがまったく変わりますよ」。こんな身近な話が次々と出てくることからも、普段、お客様とフランクな会話をやり取りしていることがうかがい知れます。

つい最近出合ったという、北海道足寄(あしょろ)町の「しあわせチーズ工房」のハードチーズ「幸(さち)」も、今やシェフにとって欠かせないものに。実際に現地へ赴いて触れた生産者の熱意やそこでの体験をお客様に伝えることで、より料理に親近感を持って楽しんでもらいたいと話します。「『幸』は、イタリアのチーズに比べて味がすごくまろやか。日本の食材だけを積極的に使っているわけではないのですが、美味しいものなら使いたいし、生産者のストーリーをお客様にも楽しんでいただきたいですね」。

「ジョバンナさんがつくるスペシャリテの皿」

最後の必需品は、スペシャリテを盛るイタリア製のオーダーメイドのプレートです。器は、シェフが「Melograno」をより楽しんでもらうための要素と語るものの一つ。ウンブリア州での修業時代、焼き物で有名な隣街・デルータへよく遊びに行っていたという後藤シェフは、当時から「自分のお店を開く時には絶対に使いたい」と決めていたと言います。「現地の作家のジョバンナさんと一緒に、素焼きの器を一緒に見に行って、どの形の器にどんな絵柄を描くかも相談しながら決めました」。デルータ陶器の伝統模様とされるドラゴンをあしらったものや、中には伊万里焼が好きというジョバンナさんオリジナルの絵柄も。一枚一枚異なるデザインや、料理がなくなっていくごとに見えてくる華やかなプレートの全貌にも、ぜひ目を向けてみてください。

さまざまな“料理以外”の要素のすべては、確かな味があってこそ成り立つもの。後編の「足跡レストラン」では、必需品を使って作るパスタやスペシャリテを紹介しながら、シェフが考える“美味しいイタリアン”に迫ります。

Melogranoメログラーノ

TEL:
03-6459-3625
アクセス:
東京メトロ日比谷線 広尾駅より徒歩4分
営業時間:
[ディナー/月〜土] 17:00〜21:00L.O [ランチ/木、金、土、祝日] 11:45オープン 12:00一斉スタート
定休日:
日曜
支払い方法:
クレジットカード可(JCB、AMEX、VISA、MASTER、Diners)
URL:
https://melograno.jp/

写真・広瀬 美佳 文・山本 愛理

更新: 2020年11月30日

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