fbpx

PEOPLE

食に携わる注目の人物をインタビュー

トップシェフが赤坂「桃の木」に集結! ジャンルを越えたトークセッション第2弾 No.2

2020年の春、装いを新たに赤坂でリニューアルオープンした中国料理の名店「桃の木」。小林武志シェフのもとに、「カンテサンス」岸田周三シェフ、「ラ・ブリアンツァ」奥野義幸シェフ、「ザ・バーン」米澤文雄シェフとタベアルキスト・マッキー牧元さんが集結。第1回に引き続き、小林シェフの料理に舌鼓を打ちながら、ジャンルを越えた料理談義に花を咲かせました。

本場が支持するフカヒレ料理とは?

:「豚のスペアリブの唐揚げ」でございます。

牧元:これは奥野シェフのリクエストされた食材ですね。

奥野:香りがなんともいいですね。軟骨の部分だけを揚げている。

米澤:そこだけを集めて揚げているとはすごいですね。

岸田:こんなの初めて食べました。コリッコリッと軟骨が弾んで美味しい。

奥野:こんなに自分の歯が丈夫でよかったと思う料理はないですよね!

岸田:この部分しか使わないというのは面白い!!

:「トマトと卵の炒め」でございます。

奥野:トマトが甘い! 甘酸っぱい! 美味しいですね。

牧元:普通はトマトにもう少し火を入れて卵と混ぜるんですが、これは生のよさを活かしてますね。

米澤:ソースっぽくなっていますね。

奥野:これ、ディルがすごく合いますよ。

岸田:美味しいですよね。

:お待たせしました。「ヨシキリサメのフカヒレの煮込み」になります。

牧元:このお店のスペシャリテです。日本では姿煮が贅沢な料理としてもてはやされるんだけど、香港などでは姿煮は誰も頼む人がいなくて、バラして一本一本にして調理されたものが珍重されるんです。日本人は姿という提供方法に騙されているというか。

岸田:すごい。濃厚ですね。

牧元:よくフカヒレを食べると、細く白いものが混ざっていたりとか、余分なコラーゲンが混ざっていてひなた臭かったりするじゃないですか。それをいかに掃除して純粋なフカヒレを表すかということが大事なのです。

奥野:煮汁が素晴らしい。

牧元:これは白湯で、一切片栗粉は使ってないんです。鶏のモミジを4時間以上煮込んだスープと、10日間ほどかけて色々なことをしながら戻したフカヒレと白湯を合わせるんです。でも面白いのは最後に葱油を合わせるところです。それはバターモンテと同じで、乳化させるんですね。

岸田:これは本当に素晴らしいですね。

奥野:お代わりしたい(笑)。モミジだけと言われると、よくわかります。

岸田:すごく煮詰めていますね。

牧元:最後に白湯にフカヒレを入れて煮込むんですけど、白湯の淵が焦げちゃうんです。だから重い蓋をして焦げないようにするんですが、それでもかすかに焦げる。でもその微かな焦げ香が大事で、この料理に複雑な深みをつけるんです。料理の香りを最も大切にする中国料理らしいですね。

奥野:その色も少し入っているんでしょうね。

牧元:今日の料理はかつて「桃の木」で食べたものと印象は違いますか?

岸田:全然違いますね。

奥野:僕も違います。

結果に違いが出る。小林流の仕込み方

「カンテサンス」岸田シェフ(左)、「ザ・バーン」米澤シェフ(右)

:「熊野地鶏の揚げ物」です。お召し上がりください。

 
奥野
:おおっ! しっとりとしていて美味しいですね。

牧元:皮がパリッと香ばしく揚がっていて、しっとりとした肉の食感との対比がいいですね。

米澤:味わい深い……。塩加減もちょうど良くて美味しい。

「桃の木」小林シェフ

小林武志シェフ登場。

一堂:美味しくいただいています!


小林武志シェフ(以後、小林)
:ありがとうございます。岸田シェフ、ごめんなさい。オーダーされていた鶏の料理は熊野地鶏だったんですが、いつもより大きいサイズが来て、水分の抜き方が少し難しかったんです。

岸田:素晴らしく美味しかったです。水分って、水分抜くんですか?

小林:今日の鶏は個体で1.58kgぐらいで、その1.5パーセントくらいの塩をすり込むんです。それで半日置いて脱水しながら味が入っていく。その後、飴をかけるというのですが、麦芽糖という糖度が40くらいの糖と赤酢とお酢を混ぜて、北京ダックみたいに飴がけして一晩置きます。でもいつもより大きかったので、水分の抜けが少し甘かったんですよ。すいません。

岸田:いや、全然わからなかったです。

牧元:皮の仕上がりですかね。

小林:そうなんです。焼いている時の中から出てくる水分が思いの外多くて……。

奥野:でも中の肉はしっとりしてよかったです。

小林:日本人的にはああいうしっとり感が好まれるのですが、香港ではもっと水分が抜けてないとダメなんです。

マッキー牧元さん(左)と「ラ・ブリアンツァ」奥野シェフ(右)

岸田:勉強になります。

米澤:1.5パーセントの塩分って結構強いですよね。

奥野:ソーセージでも1.3パーセントですものね。

小林:僕ら点心とかシュウマイとかは1パーセントなんですが、鶏は1.5パーセントなんです。

米澤:でも、少しもしょっぱい感じはなかった……。

小林:1.5パーセントで味をすり込めたら、その後にお湯をかけるのです。

米澤:ああ、そういうことか!

小林:だから少し表面の塩気は抜けるんです。といっても微小ですが。

奥野:お湯をかけて、皮を張らせて乾燥させるんですね。

小林:そうです。

岸田:でもとても美味しかったです。

小林:鶏の裁き方も首筋に包丁を入れて気管と食道を抜くんですが、日本は違うんですよ。

岸田:そうですよね。

小林:フレンチとかどうなんですか?

岸田:僕らも絶対その方がいいと思っています。日本のやり方だとむき出しになってしまうんですよ。

牧元:スープの上湯はどうやられているんですか?

小林:30リットルの浄水と6キロの鶏ガラで鶏がらスープを前日にとって、脂などをとってから、鳥の胸肉と豚のひき肉でコンソメを取るのです。それをそのままお出ししたのが今日のスープです。鶏の感じもあるし、豚のニュアンスもある。30年前くらいの香港の料理だと牛肉も少し入っていたんですよ。ですから昔の中国料理の方がもっとコンソメに近かった。でも今は牛肉がなくなってきて、豚もしくは鶏となってきているんです。

ジャンルの異なる5人が実際に顔を合わせて食べるからこそ見つかる新しい発見の連続。このトークはまだまだ続きます!

岸田周三/「カンテサンス 」オーナーシェフ
三重県「志摩観光ホテル」の「ラ・メール」に入社。東京・渋谷の「カーエム」を経て2003年にパリ16区の「アストランス」(現在、3つ星)にてシェフのパスカル・バルボに師事。2004年には同店のスーシェフに就任。帰国後、2006年に「レストラン カンテサンス 」をオープン。2007年に「ミシュランガイド東京 2008」で3つ星を獲得。以来、3つ星をキープし続けている。
https://www.quintessence.jp/

奥野義幸/「ラ・ブリアンツァ」オーナーシェフ
米国の大学卒業後、企業に勤めるものの飲食への思いがあり、当時はやっていたイタリア料理の世界に興味を持つ。都内のイタリア料理店を経てイタリアへ料理留学。イタリア全州にて各地の料理を学び、1つ星・2つ星を取得している8店舗にて経験を積む。現在オーナーシェフを勤めるラ・ブリアンツァではピエモンテ州の特徴を組み込んだトリュフのオーブン焼きに定評がある。
http://www.la-brianza.com/la_brianza/

米澤文雄/「ザ・バーン」エグゼクティブ・シェフ
高校卒業後、恵比寿イタリアンレストランで4年間修業。2002年に単身でNYへ渡り、3つ星レストラン「Jean-Georges」本店で日本人初のスー・シェフに抜擢。帰国後は日本国内の名店で総料理長を務める。「Jean-Georges」の日本進出を機に、レストランのシェフ・ド・キュイジーヌ(料理長)に就任。2018年夏、「ザ・バーン」料理長に就任。
http://salt-group.jp/shop/theburn/

小林武志/辻調理師専門学校を卒業後、同技術研究所で講師を8年ほど務めた後、「知味 竹爐山房」をはじめ、数軒の中華料理店で研鑽をつみ、2005年に「御田町 桃の木」を開店。2020年に紀尾井町へ移転し、新たな挑戦に挑んでいる。
https://momonoki.tokyo/

マッキー牧元/1955年東京出身。㈱味の手帖 取締役編集顧問 タベアルキスト。日本国内、海外を、年間600食ほど食べ歩き、雑誌、テレビなどで食情報を発信。「味の手帖」「朝日新聞WEB」「料理王国」「食楽」他連載多数。三越日本橋街大学講師、日本鍋奉行協会顧問。最新刊は「出世酒場」集英社刊。

更新: 2020年11月16日

この記事が気に入ったら
「シェア」しよう

最後までお読みいただき、ありがとうございます

pagetop