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食に携わる注目の人物をインタビュー

シェフの必需品| 神泉「Pignon」 吉川倫平シェフ

グルメシーンを牽引するシェフが、料理を作るうえで欠かせない食材や道具を紹介する連載「シェフの必需品」。今回訪れたのは、2020年7月に10周年を迎えたばかりの奥渋谷の人気ビストロ「Pignon(ピニョン)」。世界中を旅する料理人、吉川倫平(よしかわ りんぺい)シェフに必需品を伺いました。

スパイス×フレンチ。奥渋谷で旅気分を味わえるビストロ 「Pignon」 吉川倫平シェフ

隠れた名店が集まる食の激戦区として、ここ数年注目を集め続ける“奥渋谷エリア”。2010年のオープン以来、客足が絶えない人気ビストロ「Pignon」は、その流れを牽引してきた存在といえるでしょう。店を率いるのは、これまでに世界50カ国以上を訪れたというほどの旅好きの、吉川倫平シェフ。モロッコやチュニジア、スペインなど、旅先の国々で出合った食のエッセンスを、自身が長年培ってきたフレンチに取り入れます。はっきりとした旨みにスパイスやハーブの華やかさが重なった力強い料理は、日本のみならず海外にも多くのリピーターを持つほど。“どこの国の料理”という概念はなし。初めて味わう料理の数々に、まだ知らない異国へ旅に来た気分になれるビストロです。

料理人人生の始まりは、クラシックフレンチとの出合い

将来進む道を決めあぐねていた学生時代、アルバイトをしていた焼き鳥店の馴染み客から「もし料理に興味があるなら」と、門前仲町のフレンチ「Chatiere(シャテール)」を紹介されたことが、吉川シェフが料理の世界に入ったきっかけでした。初めて体感したクラシックフレンチの世界に感動し、19歳で同店に入店。料理の基礎から学び始めます。6年半にわたる修業の後にフランスへ渡ると、帰国後は青山の「フェルゼン」(閉店)や白金高輪の「タンジェ」など、複数のフレンチレストランでシェフに就任。2010年に「Pignon」をオープンする前の約1年半の間には、世界各国を飛び回ってはさまざまな食文化に触れ、中でも感銘を受けた北アフリカの料理を自身のフレンチに取り入れるに至ります。今でも毎年、海外のレストランや屋台を巡るのがとにかく楽しいと語る吉川シェフ。そんな世界を旅し続けるシェフのもとで、「Pignon」は今年11年目を迎えました。

さまざまな国のエッセンスを取り入れてもブレない「自分の味覚」

フレンチはおろか料理についてさえ、右も左もわからないまま「シャテール」に飛び込んだ吉川シェフにとって、6年半の修業時代は何よりも“自分の味覚”を確立するための時間だったと振り返ります。自分にとって「美味しい」とはどういうものかを知り、それを構築するための知識や方法を学んだという吉川シェフ。たとえば、塩こしょうをして焼いた牛ステーキがあるとします。誰にでも作れるものですが、「このステーキの旨みの正体は何なのか、なぜ美味しいと思うのか」を理解し、「自分がより美味しいと思う味にするためにはどうすればいいのか」を、言葉や調理で表現できることが大切だといいます。「それが“自分の味覚”です。その軸ができたからこそ、どんな国の料理にインスピレーションを受けようとも、ブレることなく“自分の料理”に仕上げられると思っています」。

「Pignon」吉川倫平シェフの必需品 お手製の「炭火台」

吉川シェフに必需品をうかがってみると、「実は、『絶対にこれだけは欠かせない!』というこだわりの道具が思い当たらなくて(笑)。どんな調理環境や道具でも、その中でいいものを作るというスタンスです」と、気取らずに笑います。先進国の一流料理店だけでなく、さまざまな国で屋台や食堂など、そこに暮らす人々の日常の食文化に多く触れてきたシェフならではの言葉といえるでしょう。

そんな中でも「道具ではなく、調理法ですが」と、挙げてくれたのが「炭火」です。店のオープン時には厨房内に設置できなかったものの、特有のスモーキーな香りや、遠赤外線によって旨みを閉じ込める火入れはやはり他の調理では作り出せないと、シェフ自身がレンガを積んで小さな炭火台を造ったといいます。「魚を軽く炙って炭の香りをまとわせたり、野菜を焼いたりもします。でもやっぱり、格段に仕上がりが変わるのは肉のグリルですね。自分が求める力強い旨みを引き出すためにも、炭火はとても大きな役割を担っています」。

修業時代から愛用する「木屋」の包丁

もう一つは、愛着があるというものを紹介してくれました。取り出したのは、一本の包丁。シェフは、修業時代から変わらず「日本橋木屋」の包丁を使っているのだそう。

中でも、フレンチの料理人にはやや珍しく柳刃包丁がお気に入りだといいます。「通常は魚に使うものですが、僕は野菜や肉にも使います。どんな食材も、できるだけ包丁と触れる時間は少ない方がいい。長さがあって、ひと引きでサッと切れる柳刃包丁の使い勝手が良くて。柳刃包丁を使っている和食料理人ってかっこいいなっていう憧れもありましたけど(笑)」。実はこの包丁との出合いも「シャテール」を紹介してくれた焼き鳥店時代の常連客なのだそう。「他のものを試してみたこともありますが、やっぱり木屋さんのが使いやすい。思い入れもありますね」。

次回、「足跡レストラン」では、吉川シェフにとっての旅と料理の関係性に迫りながら、お手製の炭火台で作る夏にぴったりの料理をご紹介します。

Pignonピニョン

住所:
東京都渋谷区神山町16-3
TEL:
03-3468-2331
アクセス:
京王井の頭線 神泉駅より徒歩10分、JR渋谷駅より徒歩12分
営業時間:
月~土曜 18:30~22:30(L.O)
定休日:
日曜・祝日
支払い方法:
クレジットカード可(VISA、Master、AMEX)
URL:
http://www.pignontokyo.jp/

写真・広瀬 美佳 文・山本 愛理

更新: 2020年8月18日

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