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食に携わる注目の人物をインタビュー

和洋中のシェフが集結! ジャンルを越えたトークセッション No.3

この春、赤坂でリニューアルオープンした中国料理「桃の木」小林武志シェフのもとに集まった、「バードランド」の和田利弘料理長、「ラフィナージュ」の高良康之シェフ、「リストランテ本多」の本多哲也シェフとタベアルキストのマッキー牧元さん。第1回第2回に引き続き、小林シェフの料理に舌鼓を打ちながら、ジャンルを越えた料理談義に花を咲かせる。

中国料理でいう高級フカヒレ料理とは?

小林シェフ(以下敬称略):このあとフカヒレとアワビをお持ちするのですが、アワビは30頭、つまり600グラムに30個入っていると30頭と言います。戻す前はこんな感じになります。

マッキー牧元(以下、M):30頭は稀少ですね。

小林:稀少です。小さいと戻りが悪いのと美味しくない。

高良シェフ(以後敬称略):これ、干した状態で透けるのがいいんですよね。

小林:えっ! よくご存知で。

高良:こうやって明かりに透かしてみて透けるのが素晴らしい干しだと教わりました。

小林:透けていると綺麗に火が入ります。透けていて影がないアワビは、中心が歯にまとわりつくような食感になってくれる。

本多シェフ(以後敬称略):これはどうやって戻すんですか?

小林:水を替えながら4日間つけた後に茹でます。1回目に茹でた時にどれくらいの戻りかをみて、何回か茹でます。後はスープの中でお肉などと一緒に味を染み込ませながら仕上げます。今日ので7日間くらいかかっています。

高良:7日間!

本多:そんなにかかるんですね!

和田さん(以後敬称略):日本では、ちゃんと戻しているところは少ないんですよ。

M:戻したのを仕入れて、使っているようです。

:「フカヒレの醤油煮込み」です。気仙沼のヨシキリ鮫を濃厚な白湯(パイタンスープ)で仕立てたものです。

高良:パイタンだけですか、これ?

:はい、モミジからとったパイタンだけです。

高良:うわ、艶やかですねえ。

和田:フカヒレ料理が形になっているっていうのは、ちっちゃいんですよ。大きいやつはほぐれるんですよ。

M:中国料理のフカヒレ料理で高級とされるのは、繊維が一本一本ほぐされたものなんです。姿煮は、料理としては高級ではない。手間がかかるし、質の高いのでないと、こうはならない。

和田:10年前くらい前に「ダンチュウ」の中国特集があった時、小倉エージさんから電話があって、雑誌を見ながら色々と話したんですよ。そしたら「『wakiya』の脇屋友詞シェフはちゃんとやっているなあ」と言うんです。何を言い出したのかと思ったら、掲載されていた店のすべての写真を見て、自分で戻しているのは「福臨門」と脇屋さんだけだと言うんですよ。すごいなあ、見てわかる人はわかる。その話を脇屋さんに言ったら、「へーわかるんだ!」と驚いていました。

高良:美味しい、これ。

本多:美味しい。全然違う、ほかのところと。

高良:まったく違う。

本当に美味しいパイタンスープとは?

「ラフィナージュ」の高良シェフ(中央)と「地鶏焼きバードランド」の和田さん(左)、「リストランテ本多」の本多シェフ(右)。

本多:なんで僕がフカヒレをお願いしたかというと、僕たちエイヒレやるじゃないですか。全然使い道が違うじゃないですか。下処理も違う。こんだけ臭みが抜けるって、油が抜けるのとも違う。どういう風にやっているんだろうと思ったんです。これがうまくできるようになったら、パスタと絡めたいなと思ったんです。

高良:なんか生臭くなるんだよね。

本多:だから、焦がしバターをフレンチもイタリアンも使うじゃないですか。なんでこんなにゼラチン質が出ているのに、モミジの出汁から焦げ臭さが出ないんだろう。

M:これを作るところを見せてもらったんですが、最後の仕上げの鍋の中で火を入れていく時に、縁に微かに焦げがつくんですよ。それが複雑な香りとなって、この料理を美味しくさせているんだそうです。中国料理って、一番に重要視するのは香りなんですよね。そのほんの少しの香りが、味に深みをつけている。

和田:パイタンって、ちゃんとしたパイタンとラーメン屋さんがやっている流行りのパイタンとまったく違うんですよね。

高良・本多:そこを知りたいですよねえ。

和田:僕がよくいく「北京遊膳」もモミジなんですが、「和田君、今度来る時にパイタンでいろいろやってあげるから」って、シェフが言うんです。あそこのパイタン、むちゃくちゃ美味いんですよ。あそこもモミジでスープをとっているんですが、スープをとった後のモミジに水を入れて、今度は強火でいくんです。

高良:二番出汁だ。

和田:その20分から30分、強火で終わっていくんですよ。そうするとその前に悪いものは全部出ちゃっているから、強火でやっても濁らないんですよ。白くはなるけど雑味はない。味に濁りがないんですが、濃厚なんです。多分そういう風になったやつを、こういうフカヒレ料理に使っているんじゃないかなぁと思います。二番出汁のクセはないが濃厚なのが、パイタンなんです。でも、ラーメン屋さんとかは、最初からガンガン強火でやっちゃってるから、炊いている時とか、すごい臭いがするじゃないですか。

高良:この間、お腹すいたなぁと思って、とんこつラーメン屋さんの扉を開けたんですが、開けた瞬間に閉めてしまいました。

一同:笑

高良:油が回ったら臭いというか、あれはだめですね。

M:あれには僕も食欲が減退します。

本多:でも九州の人って、あの匂いがいいって言うじゃないですか。

高良:最近、二番出汁を多用するんですよ。ゼラチン質が出きっちゃった後の方が軽やかになるんですよね。

本多:でも、ぐーっと詰めないと、その味はでないですよね。

高良:お酒を煮詰めたエッセンスを作っておいて、二番出汁でのばすと。

本多:お酒が逆に立ってくるんですね。

高良:そう。骨格はできるけど、軽いソースになるんです。

一同;(小林さんに向かって)「これ素晴らしかったです」。

イタリアンやフレンチでは使わない砂糖

:アワビの煮込みです。

高良:アワビの煮込みはザラメっぽいですが、入れてないですか?

小林:砂糖を焦がしているので、それを感じられたのかと。広東料理はまったく違うんですが、北京や上海だと砂糖を焼いてカラメルのようにして、色と艶とかすかな苦味を出すような感じですね。

小林:和田さん、「竹爐山房」の山本豊さんがね、僕らは芸人だから温度は計るとかそういうんじゃなくて見て覚えろって、そんな感じなんですよ。

和田:えっ、そうなんですか? 「専門料理」に書いているのを見ると、やたら細かいじゃないですか。温度は何度といったように。

小林:はい。山本さんほどちゃんとレシピを出している人は中華ではいないんですけど、調理の微妙なところってわからないじゃないですか? そういうところは見て覚えなきゃダメだよと。

高良:嫌味がないですね。

本多:本当、この料理、嫌味が微塵もない。

高良:砂糖の使い方って、下手するとペタってした味になったり、“イヤラシサ”が出るよね。

M:ずっと口や喉に残る、くどい味ね。ところでワインがなくなりました。この後の酢豚のワインはなんですかね?

高良:お醤油がからむ系の酢豚だったら、ピノ・ノワールでしょうね。

本多:どういう酢豚が来るんですかねぇ。

高良:雑味がある生ハムを食べると、ボルドー系かラングドックにいっちゃうんですが、すごく綺麗なやつを食べるとピノ・ノワールが飲みたくなるんですよ。

M:酢豚には何を合わせるんですか?

:ニュイサンジョルジュとかヴォルネイあたりを。

本多:ヴォルネイ! いいとこついて来ますよねえ。

高良:いいすねえ。ここ、泊まれるんですかね?

一同:笑

M:プリンスホテルは隣接しています(笑)。

 

フカヒレ、パイタンスープ、砂糖。中華独自の作り方、使い方を知った高良シェフと本多シェフ。
次回は酢の使い方を発見します。第4回(最終回)はこちらから。

高良康之/ホテルメトロポリタン勤務を経て、89年渡仏。パリ・サヴォワ地方などフランス各地で2年間研鑽を積む。帰国後は、赤坂「ル・マエストロ・ポール・ボキューズ・トーキョー」副料理長、日比谷「南部亭」料理長を歴任し、2002年「ブラッスリー・レカン」オープンに伴い、料理長に就任。「銀座レカン」総料理長を経て、2018年10月、銀座五丁目に自身の店「レストラン ラフィナージュ」をオープン。
https://laffinage.jp/

本多哲也/東京調理師専門学校卒業後、「リストランテ トゥーリオ」ほかで修業を積み、1997年に渡仏・渡伊。イタリアの三ツ星レストラン「アンティカ・オステリア・デル・ポンテ本店」ほかで修業を積み、99年に帰国。「リストランテ アルポルト」にて副料理長を務め、2004年に「リストランテ ホンダ」を開店。
http://ristorantehonda.jp/

和田利弘/1987年に阿佐ヶ谷にて「地鶏焼きバードランド」オープン。2001年、銀座に移転し、現在は銀座と丸の内の2店舗を取り仕切る。
http://ginza-birdland.sakura.ne.jp/

写真・広瀬 美佳

小林武志/辻調理師専門学校を卒業後、同技術研究所で講師を8年ほど務めた後、「知味 竹爐山房」をはじめ、数軒の中華料理店で研鑽をつみ、2005年に「御田町 桃の木」を開店。2020年に紀尾井町へ移転し、新たな挑戦に挑んでいる。
https://momonoki.tokyo/

マッキー牧元/1955年東京出身。㈱味の手帖 取締役編集顧問 タベアルキスト。日本国内、海外を、年間600食ほど食べ歩き、雑誌、テレビなどで食情報を発信。「味の手帖」「朝日新聞WEB」「料理王国」「食楽」他連載多数。三越日本橋街大学講師、日本鍋奉行協会顧問。最新刊は「出世酒場」集英社刊。

更新: 2020年5月28日

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