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PEOPLE

食に携わる注目の人物をインタビュー

和洋中のシェフが集結! ジャンルを越えたトークセッション No.2

赤坂でリニューアルオープンしたばかりの中国料理「桃の木」の小林武志シェフのもとに集まった、ジャンルの異なる3人の料理人、「バードランド」の和田利弘料理長、「ラフィナージュ」の高良康之シェフ、「リストランテ本多」の本多哲也シェフとタベアルキストのマッキー牧元さん。第1回に引き続き、小林シェフの料理に舌鼓を打ちながら、ジャンルを越えた料理談義に花を咲かせる。

ナスの調理法を巡る発見

:「ナスの唐揚げ 山椒唐辛子風味」でございます。一旦揚げてから、大量の唐辛子と山椒で炒めました。

マッキー牧元(以下、M):これはこちらのスペシャリテです。ナスに衣をつけてから揚げて、大量の唐辛子と山椒とともに炒めたものです。ウースターソースと山椒塩をお好みでつけて食べてみてください。

高良シェフ(以後敬称略):すごいな、これ。しかも衣の色がこんなに浅いのに、なぜきちんと揚がっているんだろう。

本多シェフ(以後敬称略):米粉?

M:コンスターチと小麦粉だそうです。

和田さん(以後敬称略):普通は蒸したやつに入れるんで、やわらかくてトゥルッて感じですけど、これはまたいい。

M:これは唐辛子が大量に入っているので辛いと思うじゃないですか。でもそれとは反対に、繊細な料理なんです。ナスの優しい甘みに惚れます。

高良:何でこんなに色がつかないで、火が通っているんだろう……。

小林シェフ(以下敬称略):ナスは油を吸っちゃうじゃないですか。だから、油を吸う生の状態の時に衣でバリアを張って揚げて、ナスがバッと体の水分を吐き出し始めたらもう油は吸わないですから、そこまでを守る衣なんですよ。

和田:これは高温で?

「桃の木」の小林シェフ(左)と「バードランド」の和田料理長(右)。

小林:いや、160度くらいからじわじわと温度を上げていくんです。中華って竃の火が強いので、20度30度くらいならすぐ上げられちゃうんですよ。だから200度までは瞬く間なので、ナスの状態を見てパッと上げてしまうんです。

和田:昔、「竹爐山房」の山本豊さんがNHKの番組で、250度でナスを揚げてバジルと合わせていました。それは、「250度だとナスが油を吸わないから」と言っていたんですが……。その時に印象に残っている言葉は、ナスとバジルというとイタリアンってみなさん思っちゃうでしょ。
でも、食べた人が「あ、これはイタリアンぽい」と、ちょっとでも頭をかすめてしまうんだったら、その料理をやっちゃダメだと。

M:いい話ですね。

本多:これは緊張する話ですね(笑)!

和田:それが、バジルを使っているのに、まったくイタリアンを感じさせなかったんですよ。

小林:「竹爐山房」の山本さんは、そういう料理が多かったですよね。

和田:そうですよね。古典だったのが、新しい料理になっているとか……。

高良:僕はナスに油を吸わせるのが好きじゃないんですよ。ところが西洋料理の人は、みんな多めの油でナスを炒めたりする。僕はナスの皮を剥いてボウルに入れ、好きなオイルをかけてまぶして、オイルを吸わせてからザルに上げて、コンベクションではない普通の蒸し器で、目一杯火を強くして中に入れて、油を落としてナスに火を入れるんです。するとつるんとしたきれいな緑色になるんです。

本多:それは揚げ物じゃなく。

高良:そう、油と一緒にナスを使うのが好きじゃないから、切り離す。ナスに油を吸わせておいて蒸すと、蒸す温度が高いから油の温度も上がるので、油を切ってくれて、ナスだけつるっと揚るんです。

本多:翡翠ナスみたいにトロッとなるんですか? 今度それ試してみます(笑)。

高良:そう。でも、このナス料理だったらやりたいかもしれない。

一同:笑

M:これ、衣のツノを作らないのが大切だそうで、切ったナスの尖っている方を下にして油に入れてしまうと、衣にツノができてしまう。だから丸い方を下にしながら斜めに入れていくんだそうです。

小林:僕らは揚げ物が多いので、衣にツノを作らない油への落とし方や持ち方を工夫します。やわらかい衣だったら、指先からいくとポタポタ落ちてしまうので、つままないで手の平からすうっと滑らせるように入れたり、馬力がある衣だと、スッとすくって落とすやり方だったりと、微妙に変えていきます。

本多:深いですね、今年、牡蠣を燻製にして中華の衣にみたいにバルサミコを入れて揚げていたんですよ。まあ、衣が切れない。でも、衣を落とし過ぎちゃうとパリッというのがなくなっちゃうんで、油へ落とし方って重要だなあと思いました。

高良:そんなことあまり考えていなかった……。

本多:衣を落とそうと思うと、どんどん取れていっちゃうんですよ。落とし過ぎちゃうと牡蠣のジュが出ちゃう。難しかった。

和田:中華って食材に陰陽があって、どちらかに偏ると体によくないらしいんだけど、それよりそれを無視して作るとおいしくない。たとえばこのナスは体を冷やすから、温める油や生姜、唐辛子と相性がいいんですよ。これを活かすと味が立つけど、無視すると味が萎むんです。

高良・本多:へえ、そうなんだ!

思わず漏れるため息。「清湯スープ」

高良:おっ、すごいのが出てきたぞ!

:「清湯スープ」でございます。

高良:ああ、めちゃくちゃ綺麗。鶏だ。

和田:ああ、鶏だあ。

本多:はあ〜。

和田:多分、鶏の肉を細かく切って、もともととってあったスープに入れて、沸かしてサッとやったんじゃないかなあ。その時に卵白をちょっと入れて……。

本多:コンソメと和食の出汁の取り方を合わせたようなやり方ですね。

和田:これは最初、グワッと味わいが来て、すうっと引いたじゃないですか。でも、もっとゼラチンがあるやつを使うと、この後さらにぐっと味を押すんですよね。あれを中華の人は下品というんですよ。

高良・本多:へぇ〜。

和田:店には手羽先がいっぱいあるんで、それでスープをとると、小倉エージさん(音楽評論家・中国料理通)からは、「ダメだな」って言われちゃう。

M:小倉エージさんなんて、ささみでスープとるもんね。

和田:そうそう。

M:それも煮込まないですよ。沸騰したお湯にほぼくぐらすだけ。

本多:ささみで出汁がとれるんだ!

和田:綺麗な出汁がとれるんですよ。

初めて知った、陳皮の正体

小林:次が「陳皮牛肉餅」です。

M:無理言ってすみませんねえ。

小林:いや、陳皮がね、日本のミカンと全然違うんですよ。日本だとシークワーサーみたいな。まだ青いうちのミカンにはブツブツがあるじゃないですか? あの油包の中に、青いうちに鳥に食べられないようにと「リモネン」というのが入っているのですが、毒というか、えぐみが入っていて、それが陳皮の独特の香りになるんですよ。

一同:そうなんだ!

小林:陳皮が黒いと高いとかいうでしょ。緑だから黒くなるだけで、オレンジ色はあまり黒くならない。

一同:そういうことかぁ。

和田:ミカンを干せば陳皮になると思っていました。

小林:全然違うんです。水で戻すとこのようになって、微塵切りにして、肉と混ぜてお出しします。

M:初めて知りました。でも、その中でも年代物とかあるんですよね。

小林:はい、50年物とか。

高良:50年!

小林:50年ものは金と同じ値段です。

「ラフィナージュ」の高良シェフ(左)と「リストランテ本多」の本多シェフ(右)。

M:それはおいしいから高いのですか? それとも稀少さの値段ですか?

小林:風味がよくなることが値段の半分ですが、保存すればするほど香りがよくなって、出しただけで空気が変わることが尊ばれているんです。

本多:干物は太陽臭いって、僕は言っちゃうんです。なにか臭い感じがするんですよね。

和田:ああ、日向の臭いですか?

本多:そうそう。でも、これにはまるっきりないですね。

高良:まったくないね。

M:戻すと香りがさらによくなって、この刻んだやつがすごい! 澄んだ香りがする。

小林:ミカンの内側に白いところがあるじゃないですか。あそこが苦いんで、水で戻したらできるだけ削ぎ落としているんです。

高良:この白いのがまだついているのを食べると、舌先に青い梅にあるきつい感じが来る。

小林:そう、それです。

和田:たとえばさあ、青柚子の皮で陳皮を作ったらいいかもしれない。

一同:それいいねえ。

小林シェフのパーソナリティを映し出す料理

:牛挽肉の蒸しハンバーグです。

M:いよいよ来ました。これは“ご飯すすむ君”ですよね。すいません、ご飯一膳だけ持って来てください。

和田:これ簡単なようで、難しいんですよ。

高良:おいしい、というかギブアップにならない味ですよね。

M:小林シェフの味は繊細なんで、攻めない一歩手前のバランスが素晴らしいと思うんです。

本多:まさに品がいいんですね。

和田:「桃ノ木」が始まった頃の方が、もっと攻めてましたよね。

高良:陳皮が香りますね。

和田:香港よりいいのを、使っているなあ。

本多:ネギが合うなあ。

高良:ネギが効いていて、おいしい。

本多:ブーダンノワールの血が入ってない感じ。

高良:なるほど!

本多:ここまで牛肉を細かく挽くと、血の香りとか出ちゃうのにそれがない。

M:あと脂の香りとか。

和田:そう。脂の嫌な香りも感じない。シュナンブランがすごく合う。

高良:なんだろう、この強さがないというか、品の良さというか。バランスの良さは。フレンチに通ずるところがある。

本多:でも、しっかり主張していてボケていない。

M:味の線の決め方が高いですよね。

高良:そうですね。妙に温度が上がりすぎている料理がないっていうのが、すごい。

本多:これ、小林シェフの優しさが出ているんじゃないですか?

M:この残りの蒸し汁に香菜入れて、さらにそこへご飯をぶち込むとたまらんですよ。

一同:このご飯入れて食べるのは、たまらんですね。

M:みなさんご飯を食べている途中ですが、この店のスペシャリテに干し貝柱炒飯があるのですが、あえて今日は玉子炒飯にしました。その炒飯を作られているところを見ませんか?

一同:見ます! 見ます!

一同勢いがついて、ご飯と蒸し汁、香菜、蝦醤を混ぜて、猛烈に食べ出す。
「うま〜い」「おいしいっ。おいしいなあ」「ん〜うまいっ」

M:一流のシェフの方とご飯を食べる機会ありますけど、なかなかこんなに屈託なく「うまい」を連呼する光景はみたことない(笑)。

 

同じ食材ひとつとっても、調理法も味の決め方も千差万別。ジャンルの異なる5人が実際に顔を合わせて食べるからこそ見つかる新しい発見の連続。このトークはまだまだ続きます。第3回も来週木曜日にお届け予定です。乞うご期待!

高良康之/ホテルメトロポリタン勤務を経て、89年渡仏。パリ・サヴォワ地方などフランス各地で2年間研鑽を積む。帰国後は、赤坂「ル・マエストロ・ポール・ボキューズ・トーキョー」副料理長、日比谷「南部亭」料理長を歴任し、2002年「ブラッスリー・レカン」オープンに伴い、料理長に就任。「銀座レカン」総料理長を経て、2018年10月、銀座五丁目に自身の店「レストラン ラフィナージュ」をオープン。
https://laffinage.jp/

本多哲也/東京調理師専門学校卒業後、「リストランテ トゥーリオ」ほかで修業を積み、1997年に渡仏・渡伊。イタリアの三ツ星レストラン「アンティカ・オステリア・デル・ポンテ本店」ほかで修業を積み、99年に帰国。「リストランテ アルポルト」にて副料理長を務め、2004年に「リストランテ ホンダ」を開店。
http://ristorantehonda.jp/

和田利弘/1987年に阿佐ヶ谷にて「地鶏焼きバードランド」オープン。2001年、銀座に移転し、現在は銀座と丸の内の2店舗を取り仕切る。
http://ginza-birdland.sakura.ne.jp/

小林武志/辻調理師専門学校を卒業後、同技術研究所で講師を8年ほど務めた後、「知味 竹爐山房」をはじめ、数軒の中華料理店で研鑽をつみ、2005年に「御田町 桃の木」を開店。2020年に紀尾井町へ移転し、新たな挑戦に挑んでいる。
https://momonoki.tokyo/

マッキー牧元/1955年東京出身。㈱味の手帖 取締役編集顧問 タベアルキスト。日本国内、海外を、年間600食ほど食べ歩き、雑誌、テレビなどで食情報を発信。「味の手帖」「朝日新聞WEB」「料理王国」「食楽」他連載多数。三越日本橋街大学講師、日本鍋奉行協会顧問。最新刊は「出世酒場」集英社刊。

更新: 2020年5月21日

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