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PEOPLE

食に携わる注目の人物をインタビュー

「レストラン ひらまつ 広尾」中川尚シェフの食材巡り in 垂水

日本のグランメゾンの草分け、「レストラン ひらまつ 広尾」

東京メトロ日比谷線広尾駅からほど近い「レストラン ひらまつ 広尾」。

2019年に話題となったドラマ「グランメゾン東京」。吟味された食材と確かなテクニックで生み出される料理、選りすぐりのワインと完璧なサービス、そして、それらすべてを包み込むエレガントな空間……レストランをアートの域にまで高めるグランメゾンの存在が、あのドラマによって注目を集めています。そのグランメゾンの日本における草分け的存在といえば、1982年創業の「レストラン ひらまつ 広尾」(創業時は「ひらまつ亭」)。創業者の平松宏之シェフは現在、株式会社ひらまつ総合研究所の社長として、料理人やサービス人の育成に力を注いでいます。

その平松社長がグランドシェフを務める「レストラン ひらまつ 広尾」の料理長が、中川尚(なかがわ たかし)シェフです。中川シェフは、2002年に株式会社ひらまつに入社。「レストラン ひらまつ 広尾」や「レストラン ひらまつ  パリ」で研鑽を積み、パリの料理長を2015年から務めた経歴の持ち主。2018年に帰国して再び広尾店で腕を振るい、この2月に同店の料理長に就任しました。

1981年群馬県生まれの中川尚シェフ(写真右)。その隣りは、中川シェフの傍らで修業を積む石崎大樹さん。

日本の優れた食材を求めて、鹿児島県垂水市へ

世界的にも珍しい活火山・桜島の麓に位置する垂水市。

中川シェフが大切にしているものの一つが、“食材”。ただでさえ質の高い日本の食材の中でも、「レストラン ひらまつ 広尾」の舌の肥えたゲストを満足させうる最上級の食材を常に探しているといいます。また、パリでの生活が長かったシェフにとって、日本各地の生産地の“今”を知ることは、とても興味深いのだとか。

そんな中川シェフが若手の石崎大樹さんを連れ立って訪れたのは、鹿児島県垂水市。偶然にも“海なし県”の群馬県が出身という二人にとって、美しい錦江湾に面する垂水市へは初訪問でした。

「飲む温泉水」やプレミアム焼酎でも注目される垂水市

鹿児島のシンボル・桜島を、ちょうど鹿児島市と挟むようにして大隅半島の内側に位置する垂水市。市の西側が錦江湾に、そして、東側が高隈山地に面しており、海の幸・山の幸の双方に恵まれる豊かな土地です。また、桜島の噴火によって形成された何十メートルにも及ぶ地層を通る温泉水は、ミネラル豊富な“飲む温泉水”を生み出し、市内には9つもの温泉水ブランドがあるほど。その美味しい水を使って仕込まれる「森伊蔵」「八千代伝」などのプレミアム焼酎も、注目を浴びています。

人口1万5000人の垂水市が国内外に発信する食材とは?

中川シェフと石崎さんが垂水市を訪れた初日は晴天。火山灰を吹き上げる桜島の全貌をクリアに見渡すことができました。まるで錦江湾に浮かんでいるかのようなその美しい姿に、感動を隠せない二人。実はこんなにクリアに桜島を望めるのは一年のうちに数日しかないと聞かされると、さらに驚いた様子。気がつけば、道路や車、家の屋根などは火山灰を被って真っ白です。「垂水の人にとって、桜島と火山灰がこんなに身近な存在であるとは、驚きました」と、中川シェフ。

こうして始まった中川シェフの垂水の食材探しの旅。海の幸から山の幸まで、多岐にわたる食材の魅力を一挙にご紹介します。

生産量全国一位の養殖カンパチ、“海の桜勘”

錦江湾は年間の平均水温が22℃と比較的暖かく、平均水深が120メートルと深いため、カンパチの養殖に理想的な漁場。垂水市漁業協同組合では、ここで養殖されるカンパチを“海の桜勘”(うみのおうかん)と命名してブランド化、現在では全国一位の生産量を誇っています。焼酎粕と鹿児島県産のお茶を使用した餌を与えることで、鮮度が保たれ、ビタミンEが増加し、コレステロール含有量が減少。さらに臭みも抑えられると、良いことづくしです。

お問い合わせ
垂水市漁業協同組合
TEL:0994-32-1165
https://www.tarumizugyokyou.com/

輸出量全国一位! “ぶり大将”

ブリといえば富山県などの寒い地域を想像しがちですが、年間で水温が安定している錦江湾では、一年を通してブリの養殖ができます。その特徴は頭が小さく、丸々と太った身。まな板の上に置くと弾けんばかりで、その身の立派さがよくわかります。牛根漁業協同組合により“ぶり大将”と名付けられたブリは、主にアメリカなどの海外に向けて輸出され、ブリ輸出量全国一位という見事な結果を出しています。

錦江湾では、こうした養殖の餌のおこぼれを狙う天然の鯛やアジなどがたくさん泳いでいるそうで、一本釣りも盛んに行われています。釣り上げられた魚は、主に鹿児島市の市場や料理屋と取り引きされているとのことでした。

お問い合わせ
牛根漁業協同組合(ぶり大将)
TEL:0994-32-1389
http://ushine-gyokyou.com/

合同会社かねきゅう(鮮魚・活魚)
TEL:0994-36-2828

栄養満点の根菜・パースニップ

垂水大同青果では、全国的に珍しいセリ科の根菜「パースニップ」を栽培しています。ビタミンやミネラルが豊富で、抗酸化力も高いパースニップ。フランスをはじめ欧州では一般的で、「マルシェで普通に売っています。日本では新鮮なパースニップを見えることは滅多にないですね」と驚く中川シェフ。加熱するとほくほくと甘いパースニップは、クリームスープや天ぷら、グリル料理などがオススメだそうです。

お問い合わせ
垂水大同青果株式会社
TEL:0994-32-3456

ただのサツマイモではない! つらさげ芋

鹿児島名物・サツマイモを、蔓ごと束ねて軒先などにぶら下げる貯蔵法が「つらさげ芋」です。垂水市の山間集落・大野原(うのばい)の大野地区からいも生産組合では、「つらさげ芋」の生産に独自の基準を設け、品質向上に努めています。「つらさげ芋」のルールは、①収穫から1か月はぶら下げること。②100%大野原産の芋を使用すること。③12月第1日曜日の「大野原いきいき祭り」以前の出荷はしないこと。④焼き芋にした時の糖度が30度以上であること、の4点。こうすることで糖度や品質ばらつきをなくし、大野原のつらさげ芋の評価を保っています。つらさげ芋の焼き芋を一口頬張った中川シェフからは、「甘いっ!!」と驚きの一言が思わずこぼれました。「こんなにねっとりと甘く、香りの高い焼き芋は食べたことがないですね」。

お問い合わせ
大野地区からいも生産組合
TEL:0994-45-7021

炭素循環農法で彩り野菜を

娘の森千秋さんが代表を務め、父・秀治さんが農場長を担う。そんなアットホームな農家「irodori野菜 もり畑」。安全で安心な野菜というだけでなく、“彩り豊かな旬の野菜栽培”をモットーに、“炭素循環農法”で野菜づくりに取り組んでいます。炭素循環農法とは、畑の炭素循環を促すことで、雑草が減り、農薬や肥料を使わなくても、美味しい野菜をたくさん収穫できるという農法。「もり畑」は、年間を通じて旬の野菜を育てるほかに、稀少性の高い野菜づくりにも取り組んでいます。玉ねぎの若苗を試食した中川シェフは、「ちょうど今、料理の付け合わせとして使っているので、早速取り寄せてみたいです」。健康的な土で手塩にかけて育てられた野菜は、見た目にもとても美しく、広尾の店でも輝きを放つに違いありません。

お問い合わせ
Irodori野菜 もり畑
TEL:090-6779-3325
http://irodoriyasai-moribatake.com/

温泉水で育てられた完熟温泉マンゴー

温泉ミネラルウォーターや焼酎で著名な「財宝」が、自社の温泉水を使って育てるマンゴー。ミネラルたっぷりの温泉水を木に与えるだけでなく、温泉水をビニールハウス内に循環させることで、重油を一切使わないエコフレンドリーな完熟マンゴーを育てています。また、ライチや“森のアイスクリーム”との異名を持つアテモヤという稀少な果物の栽培も。ライチに目がないという中川シェフは、「冷凍ではない、生のライチ。マンゴーと合わせて、収穫の際はぜひ試食させてもらいたい」と、熱望。収穫時期となる今年の6月が待ち遠しいようでした。

お問い合わせ
財宝農場
https://www.zaiho.jp/farm/

地元の料理人との交流で深めた垂水のこと

中川シェフに垂水のことを紹介してくれた「味処 海の桜勘」の岩元料理長。

中川シェフの2日間の垂水ツアーには、地元の食材を知り尽くす地元の料理人が同行してくれました。それは、垂水漁業協同組合の敷地内にあるカンパチ専門の料理店「味処 海の桜勘」の岩元料理長です。岩元料理長は、東京のレストランで長年にわたって働いた後に垂水にUターン。同じ料理人という立場から、中川シェフに垂水の食材について説明をしてくれました。

2日目のランチには、刺身、漬け、煮付けなど、様々な形でカンパチを振舞ってくれました。「驚いたのは、刺身の食感がサクサクだったことです」と、中川シェフ。とびきりの鮮度の良さはもちろん、焼酎粕と鹿児島県産のお茶を配合した餌による身のクリーンさはピカイチ。「養殖ってあまりいいイメージがなくて、天然物がどうしても重宝されがちですが、ここでは魚病診断や水質と薬品残留の検査など、衛生面での管理を徹底しています。天然物には負けないカンパチですよ」と、岩元料理長。魚の資源保全の観点からも、今後、きちんと管理された養殖物も見直されるべきなのかもしれません。

「来てみないとわからないことがたくさんありました。カンパチにしろ、野菜にしろ、今回、肌で感じた生産者のみなさんの情熱を、料理に反映できたらいいなと思います」。鹿児島空港へ向かうバスの中、中川シェフは垂水の旅をこのように振り返ってくれました。垂水の生産者さんと食材との出会いが、中川シェフのクリエーションにどのように反映されていくのでしょうか。今後が期待されます。

レストラン ひらまつ 広尾

住所:
東京都港区南麻布5-15-13
TEL:
03-3444-3967
アクセス:
東京メトロ日比谷線広尾駅から徒歩1分
営業時間:
ランチ 11:30〜15:00 (L.O. 13:00)、ディナー 18:00〜23:00 (L.O. 20:00)
定休日:
毎週水曜日(祝日を除く)*2020年4月13日より毎週月曜日(祝日を除く)
支払い方法:
各種クレジットカード可
URL:
https://hiramatsu-hiroo.jp/

更新: 2020年3月23日

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