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食に携わる注目の人物をインタビュー

シェフの必需品|九品仏「igora(イゴラ)」 坂井務

グルメシーンを牽引するシェフが、料理を作るうえで欠かせない食材や道具を紹介する連載「シェフの必需品」。今回必需品を紹介してくれたのは、九品仏の住宅街の一角に2019年7月にオープンしたイタリアンレストラン「igora(イゴラ)」の坂井務(さかい つとむ)シェフです。

身体に馴染む“軽い食べ心地” 「igora(イゴラ)」 坂井務シェフ

令和時代に突入して1年弱。早くも注目の新店が続々とオープンしていますが、イタリアンレストラン「igora」もその一つです。坂井務オーナーシェフが店を開いたのは、九品仏駅からすぐの等々力通り沿い。「落ち着きのある大人の街。ゆったりと寛いでもらえる、居心地のいい店にしたくて」と、椅子やカウンターテーブルの高さ、その質感に至るまでをシェフ自身がオーダーしたという徹底ぶり。坂井シェフがこの空間で振る舞うのは、ナチュールワインと共にすんなりと身体に馴染む、“食べ心地のいい”イタリアン。塩をおさえることはもちろん、酸味や苦味をきかせながら一皿ごとにコントラストをもたせることで、食べ終わった後には、しっかりとした満足感と軽やかな余韻を残します。

夢を追い、20代から料理の世界へ

多くのシェフが10代から料理の世界に進む中、坂井シェフは地元福岡県の4年制の大学を卒業し、一度は一般企業へ就職したことがあるという少し変わった経歴の持ち主。それでも幼い頃からの料理人への夢を諦めきれず、一念発起し上京したのが23歳の頃でした。初めて勤めたのは渋谷のイタリアン「リストランテG(ジー)」。それから約2年の周期で複数の店で腕を磨き、30歳で単身イタリアへ。1年の修業の間には、一時、フランス・ジュラ地方で自然派ワインを造る鏡健二郎夫妻のもとで、住み込みで働いたことも。イタリアに戻ってからは、フリウリの二つ星レストランで研鑽を積みながら、やはり週末には近くのナチュールワイン生産者のもとへ足を運ぶ日々を過ごします。帰国後、三軒茶屋の「Bricca(ブリッカ)」を経て、2019年に「igora」をオープンしました。

身体に負担のない料理を作りたい

聞き慣れない「igora」という言葉は、イタリア語の「ignoranza(イニョランツァ)」をもじった造語だそう。「イタリアで修業していた頃、あるワイン生産者がソクラテスの”無知の知”の話をしてくれたんです。『なにかをたくさん知っていることが“知”なのではなく、自分が無知であることを知ることが、“知”への一歩なのだ』と」。豊富な経験と技術を持ち、博識だと思っていた彼らが、自らを“無知”と表現する姿がとても印象的だった、と坂井シェフは語ります。

シェフがワインの生産者に対して深い敬意を表するのは、ナチュールワインに出合って、料理との向き合い方が変わったから。「ナチュールワインって、驚くほどストレスなく身体に入っていくんです。アルコールを飲んでいるのに負担がまったくない。自分でもそういう料理を作りたいと思うようになりましたね。お腹いっぱいにはなるけれど、食べ終わった後に『身体が軽いな』と感じてもらえると嬉しいです」。

「igora」坂井務シェフの必需品

包丁研ぎ師・坂下勝美氏が打つ柳刃包丁

そんな坂井シェフに必需品の紹介をお願いすると、手元には、美しい光を放つ一本の包丁が。銀座「六雁」の秋山能久総料理長も絶賛する、その道53年の包丁研ぎ師・坂下勝美(さかした かつみ)さんが打つ、柳刃包丁です。

「食材や料理がお客様の舌に触れる直前の、仕上げのカットに使っています」と、坂井シェフ。まるで和食料理人のごとく包丁を使い分けるイタリアンのシェフは、そう多くはいないでしょう。坂井シェフが坂下さんの包丁と出合ったのは、知り合いの和食店でした。美しい反り、驚くほど薄く研がれた刃と繊細な刃先に一目惚れしたといいます。「店を始めるにあたり、お客様の目の前で“見える”調理をするカウンターキッチンにすることは決めていましたし、料理人として、やはり優れた職人の包丁は手にしたいと思い、すぐにお願いしました」。使い始めて何より感じるのは、圧倒的な切れ味。刃先を入れて、スッと引くだけで嘘のようにスムーズに切れるといいます。「断面の輝きや舌触りの良さが格段に違います。この包丁があるからこそ、いい食材や料理を、一番美味しい状態でお客様にお出しできています」。

天草「本田屋」から仕入れる魚

二つ目の必需品は、天草の「本田屋」から直送で仕入れる魚です。冷菜や温菜、パスタにも、魚を取り入れることが多いという坂井シェフ。「九品仏という場所柄、実は豊洲に出るのはなかなかに一苦労で。渋谷の『高太郎』の店主・林高太郎さんに相談して薦めてもらったのが『本田屋』さんです」。旨みを保つ神経締めをはじめ、魚を扱う技術ときめ細かなケアが段違いだといいます。傷がつかないよう丁寧に包まれたペーパーの下から姿を見せた魚の目の綺麗なこと。「こうして鱗もすべてとって内臓も処理してくれていますし、店で提供する日やメニューに合わせて、その時一番いい状態になるように熟成させたり、届ける魚を選んだりという相談にものってくれる。本当に心強いです」。

「本田屋」から仕入れる魚を美味しく提供するためにも、それを最大限に活かせる包丁を手にしてよかったと語る坂井シェフ。次回、「足跡レストラン」では、「本田屋」の魚を使った一皿や、“軽やかな食べ心地”を生み出すヒントをご紹介します。

igoraイゴラ

igora

住所:
東京都世田谷区奥沢6-22-10
TEL:
03-5760-6176
アクセス:
東急大井町線 九品仏駅より徒歩3分、東急大井町線・東横線 自由が丘駅より徒歩7分
営業時間:
ランチ 木~日曜 11:30~14:00(L.O. 13:30)/ ディナー 月・火・木〜日曜 18:00~22:00(L.O. 21:00)
定休日:
水曜日
支払い方法:
クレジットカード可(JCB、AMEX、VISA、MASTER、Diners)

更新: 2020年2月29日

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