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食に携わる注目の人物をインタビュー

シェフの必需品| 飯田橋|「INUA(イヌア)」トーマス・フレベル

グルメシーンを牽引するシェフが、料理を作るうえで欠かせない食材や道具を紹介する連載「シェフの必需品」。今回訪れたのは、日本の食材と北欧の哲学を融合させ、伝統的かつ独創的な調理法で食の新たな可能性を表現する、レストラン「INUA」。世界一と称されるレストランで培った経験を惜しみなく披露するヘッドシェフ、トーマス・フレベル氏が必需品と語るものとは。

「INUA」トーマス・フレベルシェフ

2018年6月、東京・飯田橋にオープンしたレストラン「INUA(イヌア)」。ヘッドシェフを務めるのは、デンマーク・コペンハーゲンの名店「noma」(ノーマ)の研究開発部門のトップとして、長年店をリードしてきたトーマス・フレベル氏です。「noma」といえば、「世界のベストレストラン50」で4度にわたり1位に輝いた功績を持つ、まさに世界一の店。ニューノルディック・キュイジーヌと呼ばれるジャンルを確立したともいわれ、地産地消をベースに、伝統技術を応用しながら独創的な調理法とビジュアルで、あらゆる観点から食材の魅力を引き出し、自然界の多様性を料理で表現します。

フレベルシェフは、そんな北欧の哲学と日本の食材を融合させ、約30名からなるチームの仲間とともに、東京に新たな食の楽しみをもたらしています。

「やり残したことがある」。日本に“帰ってきた”シェフ

1983年、ドイツ・マクデブルクで生まれたフレベルシェフが「noma」に入店したのは2009年。「noma」では、キッチンシェフとは別に、限られたシェフのみが就くことができる、リサーチとメニュー開発専任シェフというポジションがあり、彼はそのトップを務めてきました。フレベルシェフが初めて日本を訪れたのは、2015年。約1ヶ月半の期間限定で出店した「ノーマ・アット・マンダリン・オリエンタル・東京」に、シェフのレネ・レゼピ氏に帯同した時です。滞在中に触れた、日本の風土や四季の美しさ、そして豊かな食材に魅せられ、帰国する際には「まだ日本でやり残したことがたくさんある。いつか東京でレストランを開きたい」。そう心に誓ったといいます。

自然の中で新たな食材に出合う楽しさが、日本にはある

「『INUA』をオープンし、東京で料理を作れていることが本当に嬉しい」と語るシェフ。日本の魅力は? と問うと、迷いなく「とにかく食材が豊かです」、という答えが返ってきました。「北海道から沖縄まで地域によって大きく気候が異なり、海・川の新鮮な魚介や多くの種類の海藻、郷土野菜、山菜、トロピカルフルーツまで、実にさまざまなものがあります。産地へ行き、自然の中に入って新しい食材に出合うことがとても楽しいです」。実際に秋田県の山奥に山菜を採りに行ったことや、新潟ではアマドコロという山菜に出合ったことが、印象的だったと教えてくれました。

「食材の魅力や美味しさを、最大限、料理に活かしたいという気持ちは日本の料理人と同じです。それは、生産者の素晴らしさや自然の豊かさを伝えることにも繋がると思っています」。

「INUA」トーマス・フレベルシェフの必需品とは?

異国の地から日本にやってきたフレベルシェフにとって、必需品とはどのようなものなのでしょう。それは、北欧で経験を積んだ料理人らしい一面が、垣間見えるものでした。

テストキッチンにある、7台のオリジナル発酵器

「場所を移動しましょうか」と招かれたのは、レストランキッチンとは別の場所にある、まるで実験室のようなテストキッチン。「慣れ親しんだ食材の新たな楽しみ方はないものか」「自然の恵みともいえる食材の特徴を、どうすればより引き出すことができるか」などを、メニュー開発専任のシェフたちが、日々、研究する場です。

「『noma』でも、自家製の味噌を造っていました」。テストキッチンの中でも、シェフが必需品だと語るのが、ズラリと並んだ7台の発酵器です。さまざまな条件下で発酵や熟成が行えるようカスタムメイドした、日本製のものだといいます。味噌、魚醤、肉醤などの調味料造りに使用するほか、あらゆる食材を発酵・熟成させては、その食材の知られざるポテンシャルを見い出し、料理に活かしていくのだそう。「たとえば今は、日本の黒ニンニク作りの手法を参考に、パイナップルを加熱熟成させています。でもまだどのようなものが出来上がるかはわかりません。そこがまた、発酵・熟成のおもしろいところです」。発酵・熟成の伝統的なプロセスを理解しながら、それを応用し、新たな味を作ることが何より楽しいと語るフレベルシェフ。「INUA」の独創的な料理は、こうして生まれるのです。

チームINUA!

そして、そのテストキッチンにいたのは、レストランシェフとはまた別のシェフやスタッフ。「私が今こうして取材を受けられていること一つをとっても、チームの仲間がいるからできることです」。フレベルシェフにとって、「INUA」で共にする全てのスタッフこそ、何より欠かせない、そして愛すべき存在だと語ります。

「レストランというと、シェフばかりが注目されがちですが、たとえばお客様が店に入ってきた時、一番初めに接するのも最後にお見送りするのも、フロントスタッフです。私たちがどんなに魅力的な料理を作っても、日本語が話せないので、通訳や広報スタッフなしではお客様にもプレスの方々にも何も伝えられません。リサーチ・メニュー開発専任シェフ、オフィスワークをするスタッフ……、どの仕事にも優劣はなく、全員が“チームINUA”の大事な一員です」。シェフに気さくに話しかけるスタッフの姿からも、チームワークの良さが伝わってきます。

金目鯛のスペアリブ、花のタルト

「金目鯛のスペアリブ、花のタルト」は、コース(29,000円)の中の一品。

コース料理の中から紹介してくれた一品が「金目鯛のスペアリブ、花のタルト」。テーブルフラワーと見間違えるほどの美しさに、思わず目を奪われます。自家製の味噌で作った薄いクリスプには、ベゴニアやルッコラの花などと削った黒トリュフをのせて。脂ののった金目鯛は麦麹ペーストに漬け込んで焼き上げました。「麦麹ペーストは、ゆずやキハダの実、スモークしたハバネロなどを加えて2年間熟成させています。ジューシーで旨みが凝縮した金目鯛と、サクッと軽い食感でアロマティックな香りが楽しめる花のタルトとのコントラストを楽しんでもらえたら」。

計り知れないほどの研究と努力によって、新たな食体験を生み続ける「INUA」。その全貌は次回「足跡レストラン」でご紹介します。

*価格は税(8%)及びサービス料(10%)を除いた価格です。

INUAイヌア

INUA

住所:
東京都千代田区富士見2-13-12 KADOKAWA富士見ビル 9F
TEL:
03-6683-7570(予約専用番号 受付時間/火曜~土曜 10:00~15:00)
アクセス:
飯田橋駅より徒歩5分
営業時間:
18:00~
定休日:
日曜日・月曜日
支払い方法:
クレジットカード可(VISA / MASTER / AMEX / JCB / Diners)
URL:
https://inua.jp/

写真・広瀬 美佳 文・山本 愛理

更新: 2019年7月24日

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