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食に携わる注目の人物をインタビュー

シェフの必需品| 南青山|「4000 Chinese Restaurant(ヨンセン チャイニーズレストラン)」菰田欣也

グルメシーンを牽引するシェフが、料理を作るうえで欠かせない食材や道具を紹介する連載「シェフの必需品」。今回訪れたのは、今最も注目を集めるレストランの一つ、南青山の「4000 Chinese Restaurant」。オーナーであり総料理長を務めるのは、菰田欣也(こもだ きんや)シェフです。約30年にわたり「赤坂四川飯店」の陳建一氏の下で四川料理の普及に従事し、グループ全体の総料理長まで任された彼が、2017年に独立。一料理人として「料理を作る」という原点に戻りたかったと話す菰田シェフに、その真意と、彼を支える必需品をうかがいました。

ただ、料理を作りたい。 「4000 Chinese Restaurant」菰田 欣也シェフ

菰田シェフが新たな拠点として選んだのは、南青山の一角。2018年12月、「4000 Chinese Retaurans(ヨンセン チャイニーズ レストラン)」はオープンしました。「赤坂四川飯店」ではグループの総料理長として従業員の指導やマネジメントから、各所での講師、イベント出演に到るまで幅広く活躍してきた菰田シェフ。50歳を目前に“料理人としての終わり方”を考え始めた時、「もう一度、ただ料理を作りたい。自ら包丁を持ち、鍋をふるい、全てのお客様と顔を合わせ、自分の料理を提供したい」。そんな思いに立ち返ったといいます。営業日には、シェフ自ら豊洲市場で食材を選び、店に立ち、ひとりひとりのお客様のために腕を振るいます。

中国料理を志した理由は明快。「自分が美味しいと思ったから」

祖父母や兄の影響で、幼い頃から料理には親しみがあったという菰田シェフが、数あるジャンルの中でも中国料理の道に進もうと決めたのは、大阪あべの辻調理師専門学校の時だそう。「和食やイタリアンも美味しいと思っていたけど、中国料理を食べた時『すげー、うまい!!』って特別な魅力を感じたんですよね」。やるからには自分が一番美味しいと思うものを極めたい、そんなシンプルな想いから中国料理を専攻。卒業後、中国料理の重鎮・陳建一氏率いる「赤坂四川飯店」に入社。以来約30年の料理人人生を、陳グループとともに四川料理に捧げてきました。2001年には渋谷「szechwan restaurant 陳(スーツァンレストラン チン)」の料理長に就任し、TV番組への出演や調理学校の講師など、さまざまな場で活躍。日本における中国料理を牽引し続けてきました。

全てのお客様と顔を合わせられる店に

取材中とても印象的だったのは、菰田シェフから何度も聞こえてくるお客様との会話の内容やその様子。「例えば電話で『この間友人が予約してくれてうかがったんですけど』と、名前を聞けばすぐにどなたのことだかわかります。100席以上あり1日に何回転もする店を複数抱えていた頃は、全てのお客様と顔を合わせることはどうしても難しかった」。だからこそ今、お客様ひとりひとりと顔を合わせ、会話を通じて好みや要望を汲み取りながら料理が作れる喜びが溢れているのでしょう。

「4000 Chinese Restaurant」菰田シェフの必需品とは?

新たな道を歩み出した菰田シェフが必需品と考えるものは、一体どんなものなのでしょう。紹介してくださった2品は、非常にシンプルでありながら、熱い想いが感じられるものでした。

“400g指定”の中華包丁

「どんなにいい素材で作られた性能のいい道具でも、使うことが苦痛であれば、ただの飾り物になってしまう」。そう話す菰田シェフが見せてくれたのが、3本の包丁です。高村刃物製作所(福井県)によるもので、特に特注品の中華包丁(写真中央)は制作期間に約1年8ヶ月(!)もかかったといいます。「特注じゃなければ半年くらいでできるようなのですが。忘れられたかと思いましたよ(笑)」。冗談を言って見せながらも、包丁への愛を熱く語る菰田シェフ。

長い制作期間の理由はその薄さと軽さ。「包丁は飾るものじゃなく使うもの。普段使ってこそ包丁として価値があるものです。そのためには、“自分にとっての使い勝手”が何より大切だと思っています」。長年の経験の中でたどり着いたのが、“400g”という重量。シェフにとってもっとも使いやすい重さだそう。包丁としての高い性能を保ちながら、刃を薄く仕上げ高い強度を実現させた、職人技光る一本。お値段、なんと17万円! それでもシェフは、価格ではなく「使い勝手」が何よりの価値だと繰り返します。「極端な話ですが、100円でも使いやすければベストな道具になる」。料理人にとって“使える道具”が何より必要なものなのです。

角が立たない塩

もうひとつの必需品は、塩。フランス・ブルターニュの海藻入りのあら塩「グロセル マラン オザルグ」です。かれこれ5 年ほど愛用し続けているのだそう。「一時期違うものを使ったこともありましたが、これに戻ってきました」。必需品たる理由は、シンプルに「味です」。「いろいろ調べて使ってみたけど、どうしても塩は角が立ちやすい。それに比べてこれは塩味(えんみ)がやわらかい。粒子が大きく不均等なので、振りかけるのではなく合わせ調味料などにして使います」。良質な塩の産地である四川省自貢市の塩や焼き塩など、素材と用途に合わせて4種類ほどの塩を使い分けるという菰田シェフ。このあら塩は魚介や野菜との相性がよく、炒め物の塩ダレなどに主に使うのだそう。「塩味が足りないと美味しくないし、少しでも強く入ってしまうとしょっぱいと感じる。シンプルで少量しか使わないからこそ差が出るので、いいものを使いたい」。

ワタリガニの卵白炒め

蟹肉と蟹のだしを閉じ込めた卵白を炒め合わせ、蟹の卵とさっと火を通したそら豆を添えて

その塩と、新鮮な素材の旨みだけで作られた一品が、「ワタリガニの卵白炒め」。旬の宮城県産の子持ちワタリガニは、シェフ自らその日の朝に豊洲市場で仕入れたもの。「光にかざしてみて、甲羅のどこまでがオレンジ色に見えるかで中の卵の量がわかります」。生きたワタリガニから、甲羅の隅までギッシリつまった卵を取り出し、蒸してほぐした蟹肉と必需品のあら塩、蒸した時に出た蟹の出汁に泡立てた卵白を加え、旨みを吸わせるようにして炒めあげます。香りを残して軽く火を通したそら豆と蟹の卵を添えました。

舌にフワリと卵白が触れたかと思うと、次の瞬間にはスッと消えるほどの繊細さ。その一瞬の間に濃厚な蟹の旨みが押し寄せます。まろやかな塩味が蟹の甘みをグッと引き立て、鼻に抜ける香りの余韻まで甘い蟹の風味。優しくもあり、素材の力強さが最大限に引き出された一皿です。

次回「足跡レストラン」では、菰田シェフの豪快かつ熱いおもてなし魂をお届けします。乞うご期待!

4000 Chinese Restaurant

4000 Chinese Restaurant

住所:
東京都 港区南青山7-10-10 パークアクシス南青山7丁目
TEL:
03-6277-2282
アクセス:
渋谷駅より宮益坂口51番バス 南青山7丁目バス停より徒歩3分
営業時間:
ランチ 12:00~(週2〜3日)/ ディナー 18:30〜
定休日:
不定休
支払い方法:
クレジットカード可(VISA / MASTER / AMEX / JCB)
URL:
https://minamiaoyama4000.jp/

写真・安野 敦洋 文・山本 愛理

更新: 2019年6月5日

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