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シェフの必需品| 恵比寿|「336 ébisu(サンサンロクエビス)」大和田龍之介

グルメシーンを牽引するシェフが、料理を作るうえで欠かせない食材や道具を紹介する連載「シェフの必需品」。今回は、恵比寿の閑静な住宅街で、モダンフレンチと選りすぐりのワインが味わえる「336 ébisu」の大和田龍之介(おおわだ りゅうのすけ)シェフにスポットを当てます。常に高みを目指し、誠実に料理と向き合う大和田シェフ。ふたつの必需品からも、料理人という仕事にかけた一途な思いが伝わってきました。

上質をカジュアルに。「336 ébisu 」 大和田 龍之介シェフ

恵比寿と白金に挟まれた住宅地の一角に、シニアソムリエ・山崎 智隆(やまざき ともたか)氏が手がけるフレンチビストロ「336 ébisu」があります。コンセプトは「上質をカジュアルに」。約300種類にも及ぶ選りすぐりのワインとともに味わうことができるのは、大和田龍之介(おおわだ りゅうのすけ)シェフによるモダンフレンチ。クラシックからビストロまでさまざまなスタイルで培ってきたフレンチの経験を活かし、ひとつひとつの料理を丹精込めて作ります。コースに縛られず、自由なスタイルで上質なフレンチを楽しむことができる1軒です。

幼い頃から志した料理の世界

「幼い頃から料理の道に進むことは決めていました。父もフレンチの料理人だったんです」。2019年2月より「336 ébisu」のシェフに就任した大和田シェフは、父親の姿を見て料理人を志すようになりました。高校を卒業後、本場フランスの味と技術に触れるため、アルバイトをして貯めたお金で渡仏。帰国後、銀座「レカン」に就職し、約6年にわたり現在7代目総料理長を務める渡邉 幸司(わたなべ こうじ)シェフに師事します。その後、北品川「カンテサンス」、麻布十番「マルシェ・デ・ジュウバン」を経て、恵比寿「ル・ビストロ」で約4年間シェフとして勤め上げました。

謙虚で誠実であること。料理人は生かされている

ひとつずつ経験を積みながら、「料理人になる」という子供の頃からの夢を実現させてきた大和田シェフ。自身の核になっていると話すのが、初めて師事した渡邉シェフの「常に謙虚で誠実に、料理人として精進すること」という言葉です。「どんなに経験や知識が増え、技術や名声を獲得できたとしても、料理人は、食べてくれる人・一緒に働いてくれる人・食材を提供してくれる人がいてこそ、料理を作ることができる。慢心することなく、調理という仕事に常に誠実に向き合い精進する。それを今も大切にしています」。そう語る大和田シェフの眼差しは、まっすぐに前を向いています。

「336 ébisu」のシェフ就任を決めたのも、真剣に料理と向き合う仕事人として大舞台を目指すため。2018・2019年と2年連続で「ミシュランガイド 東京」でビブグルマンを獲得したこの店で、オーナー山崎氏とともに挑戦するのは“星付き”レストラン。「評価が全てではないけれど、料理やレストランサービスに取り組む者として高みを目指すのは当然のこと」。謙虚でありながら、ふたりの内に秘めた熱量は計り知れません。

「336 ébisu」大和田シェフの必需品とは?

言葉にも表情にも、誠実で熱い人柄が滲み出る大和田シェフ。そんなシェフの必需品は、決して高級なものではありませんが、料理に対する一途な思いと人情味を感じるものでした。

父から譲り受けた捌き包丁

「料理人になった時に、父が譲ってくれたものです」。そういってまず見せてくれたのは、使い込まれた捌き包丁。「どこのメーカーで、いつごろ買ったものなのかもわかりません。料理の道に踏み出した時、父が『頑張りなさい』と言ってくれたものです」。料理の世界の厳しさを身をもって知っているからこそ、当初は息子が同じ道に進むことを反対していたという父。「あまり口数の多い人じゃなかったのですが、この一本にいろいろなメッセージが込められている気がして、ずっと愛用しています」。豚や大型の鴨などを解体する時に使う捌き包丁。木の柄が手に馴染んで、使い心地がいいのだそう。受け継いで約13年、料理人としての歴史を共に刻み続ける、なくてはならない相棒です。

持ち手が大きく、先が細くて凹凸のない、木で作られた箸

もうひとつの必需品は、料理の盛り付けに使う箸。「ピンセットを使う人も多いですが、僕は箸が使いやすくて」。どんなに繊細な盛り付けでも真っ先に箸に手が伸びると話します。ただ「絶対にこの一膳でなくてはならない」というものではありません。「しっくり手におさまる木材で作られていて、箸先に凹凸がなくて細身のもの。あ、あと持ち手は大きめで。手が大きいので(笑)」。その中で、街中で見て気に入ったものを手に取るのだそう。「木の箸を使い始めて4年以上になりますが、同じものを買ったことはないですね。新しいものを見つけるのも楽しみのひとつです」。

ホタルイカのコンフィと黒いタブレ

その箸で盛り付けられる料理のひとつが、旬のホタルイカを使った前菜です。「イメージは、黒いサラダタブレです」。カラフルに仕上げられることの多いサラダタブレをモダンにアレンジ。兵庫県産のホタルイカを、タイムとにんにくを煮出したオイルでコンフィにし、イカ墨で炊いたクスクス、じゃがいもとイカスミのチップスで覆いました。崩していくと、底にはトマトやパプリカをエスプレットチリと煮込んだバスク地方の料理・ピペラードが。黒と赤の鮮やかなコントラストも印象的です。サクサクのチップスとぷりっとしたホタルイカの食感、サッパリと仕上げたピペラードで、軽やかに楽しめるひと皿です。

全ての料理をアラカルトで備え、自由なスタイルで楽しむフレンチを提案する「336 ébisu」。大和田シェフは、コースという流れの中の一皿ではなく、一つ一つの料理を最高に美味しいものに仕上げたいと語ります。料理にも料理人という夢にも、誠実に向き合い続けるシェフ。二つの必需品で作られる料理は、まだまだ進化を続けることでしょう。

兵庫県産ホタルイカのコンフィと黒いタブレ 1,600円(税別)

336 ébisu

336 ébisu

住所:
東京都渋谷区恵比寿3-36-1 クーカイテラス1F
TEL:
03-6277-2282
アクセス:
JR恵比寿駅より徒歩14分、東京メトロ白金台駅より徒歩13分
営業時間:
18:00~24:00
定休日:
不定休
支払い方法:
クレジットカード可(VISA / MASTER / AMEX / Diners / JCB)
URL:
https://www.336ébisu.com/

写真・安野 敦洋 文・山本 愛理

更新: 2019年4月25日

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