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食に携わる注目の人物をインタビュー

シェフの必需品|麻布十番|「Courage(クラージュ)」大井健司

グルメシーンを牽引するシェフが、料理を作るうえで欠かせない食材や道具を紹介する連載「シェフの必需品」。大人の遊び場、麻布十番。かつて東京中の大人たちがこぞって訪れたイタリアンの名店の跡地にオープンし、再び“遊ぶ大人たち”の注目を集めているのが「Courage(クラージュ)」。艶美なレストランを担う若き大井健司(おおい たけし)シェフの必需品は、華やかな表舞台を支える土台ともいえるものでした。

世界の食文化を結集した東京キュイジーヌ「Courage」 大井健司シェフ

イノベーティブともフュージョンとも称される「Courage」の料理ですが、大井シェフ自身は「東京キュイジーヌ」と表現します。食材や調理法はもちろん、最新の科学技術や調理機器に至るまで世界各国からハイレベルなものが集まり、また様々な国の食文化を受け入れてきた特殊な街・東京。それらを結集して作る東京でしか食べられない料理、それが大井シェフがいう「東京キュイジーヌ」です。イタリアンとフレンチをベースに、スペイン料理や和食の考え方をも学んできた大井シェフだからこそ体現出来るスタイルといえるでしょう。

26歳で飛び込んだ料理の世界

その大井シェフ、実はやや異色の経歴の持ち主です。初めて料理に触れたのは20代初めのころ、漫画家を目指すかたわらに勤めたオムライス店だったといいます。料理への関心は日に日に高まり、26歳のとき地元・茨城のイタリアンレストランで本格的に料理人として歩み始めました。「本当に一から学びました。メレンゲが何で作られているのかすら知りませんでしたから(笑)」。探究心はとどまることを知らず29歳でイタリアへ。一つ星レストラン「レ・トレルーネ」でイタリア料理はもちろん、クラシックフレンチの技法を習得します。その後、自ら志願し神戸の三つ星スペイン料理店「カ・セント」の福本伸也シェフに師事。そして、2018年3月に「Courage」のシェフに就任しました。

食材が最も輝く「Courage」の料理

世界中の様々な国の食文化の結集「東京キュイジーヌ」を作り上げる大井シェフ。しかし、根底にあるのは実にシンプルな考え方です。「とにかく食材と真正面から向き合うこと。『カ・セント』の料理を初めて食べたとき、ひとつひとつの食材から感じるパワーにとにかく驚きました。野菜も肉も調理されているのに『生きている』と感じるほど、それぞれの良さを力強く発揮するんです」。大井シェフが目指すのは、お客様の目の前に出した瞬間に、すべての食材が最高に輝いている料理。生産農家と直接会話し、試作と試行錯誤を繰り返しながら、最も食材の持ち味を引き出せる方法を追求しています。

大井シェフの必需品とは?

そんな大井シェフの3つの必需品に共通するキーワードは「ベース」。決して表舞台には立たないけれど、自身の料理の一番の根っこを支えてくれているものばかりです。

「ヤマト醤油味噌」の調味料

まず見せてくれたのが3種類の調味料。旅で訪れた金沢で偶然出会った「ヤマト醤油味噌」が作る「蔵出し生ヤマト味噌」「いしる糀」「醤油糀」です。数ある同様の調味料の中でも奥行きのある味が特に気に入ったこと、そして「店で働いている人がすごく楽しそうで。会社や商品のことが本当に好きなんだなっていうのが伝わってきたんですよね」。愛用する理由をそう教えてくれた大井シェフ。イタリアンやフレンチの流れをくむ「Courage」では塩の代わりに使います。「和風にしたいわけではないので前面には出しません。でもベースに和の調味料があることで、日本人にすんなりと馴染むおいしさが生まれるんですよ」。

毎週火曜日に届く“玉手箱” 「GGファーム」のハーブ

大井シェフの料理におけるもうひとつの影の立役者が岡山「GGファーム」のハーブ。ファームを営むハンガリー出身のカルマール・ゲルゲイさんのことをシェフは敬意を込めて“ギャリさん”と呼びます。「ギャリさんのハーブやエディブルフラワーは小さな葉1枚でも香りのたち方や味の濃さが格別です。ハーブや花もメイン食材と同じく一皿を構成する大事な一員。例えば『蝦夷鹿のロースト 』も、その1枚があるか否かで肉の輝き方が変わります」。毎週火曜日に岡山から直接届けられるハーブの中には、見たことのないものが入っていることも少なくないそう。「玉手箱みたいですよ(笑)。毎回ワクワクします。春には鮮やかで香り高い花もたくさん送られてくるので、ぜひお客様にも楽しみに来てほしいですね」。

原点に立ち返られる一冊「C´a Sento ―カ・セント」

「とんでもなく悩んだときにだけ、すがるようにして開きます(笑)」。今でも頻繁に連絡を取るという「カ・セント」の福本シェフの著書『C´a Sento ―カ・セント』は、まるで食材の写真集かのように各地の農畜産品とそれを使った料理の美しい写真が掲載され、福本シェフの食材に対する捉え方が詩的に綴られた一冊です。「考えすぎて行き詰まったときに見返すと『あ、そうだよな』って見失っていた何かにいつも気づかせてくれる」と大井シェフ。「真似してしまうのがこわいので、普段は絶対見ないようにしてますけど(笑)」。

本物思考の大人たちが集まる麻布十番で注目をあびる「Courage」。しかし、その料理の根幹にあるのは、実に堅実な食材の捉え方です。大井シェフの手によって皿の上で最高の輝きを放つ食材。その料理の全貌は「足跡レストラン」で。

Courageクラージュ

Courage

住所:
東京都港区麻布十番2-7-14 azabu275 1F
TEL:
03-6809-5533
アクセス:
東京メトロ南北線「麻布十番」駅 4番出口より徒歩7分
営業時間:
ディナー/月〜土 17:30〜23:00(L.O. 21:00) ランチ/水〜土 12:00〜15:00(L.O. 14:00)
定休日:
日・祝・不定休
支払い方法:
クレジットカード可(VISA / MASTER / AMEX / Diners / JCB)
URL:
https://courage-tokyo.com/

写真・安野 敦洋 文・山本 愛理

更新: 2019年2月7日

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