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食に携わる注目の人物をインタビュー

シェフの必需品|中目黒|「SouRiRe(スゥリル)」湯澤貴博

グルメシーンを牽引するシェフが、料理を作るうえで欠かせない食材や道具を紹介する連載「シェフの必需品」。今回は、中目黒『SouRiRe(スゥリル)』の湯澤貴博(ゆざわ たかひろ)シェフです。「季節感」と「個性」が感じられる食材を重宝し、それを使う「意味」を追求しながら組み立てられる湯澤シェフの料理の数々。そこには日本人として誇るべき、季節への感性が満ちていました。

磨き上げた感覚と、食材力で作るフレンチ『 SouRiRe(スゥリル)』 湯澤シェフ

「洋食が好きでした」。もともとは、フレンチに特別興味はなかったと話す湯澤シェフが、中目黒に自身の店『SouRiRe』を開いたのは2011年。専門学校時代のフランス研修でその魅力に引き込まれ、以後フレンチの世界へ。銀座の名店『ル・マノアール・ダスティン』で7年間勤め上げたのち、系列店である『アンフォール』のシェフに就任。当時培った「料理人としての感覚」を今でも大切にしているといいます。使う道具や機械は最低限のものだけ。経験による自らの感覚を頼りに、力のある食材をひと皿ひと皿、料理していきます。

くつろぎと笑顔に満ちた空間を

カウンター4席とテーブル8席に座るお客さんを想像し思い描くのは、自宅に招きおいしい料理でもてなす様子。「心静かにじっくり、料理とここでの時間を楽しんでほしい」と、湯澤シェフ。店名の『SouRiRe』(=笑顔・微笑み)には、お客さんはもちろん、生産者や仲卸業者まで、料理に関わるすべての人の笑顔への願いがこめられています。

湯澤シェフの必需品とは?

「そもそも僕向きの取材じゃなかったかもしれないですね、すみません(笑)」。そう言いながら、真っ先に笑顔を見せてくれたのは湯澤シェフ自身。「僕にとって、必需品といえる道具や機械ってないんです。ガスとオーブンと包丁……、最低限のものがあればいい。『マノアール』時代からずっとそうでした」。金串を使って顎下で温度を計り、手で感じる弾力で食材の火入れの状態を確かめる——。「おいしい料理に絶対必要なものは結局、季節の食材なんですよ」。

季節と個性を感じる食材

「一年を通して食べられる料理はうちにはありません」。湯澤シェフはそう言い切ります。シェフの口から何度も出る言葉は「食材を使う意味」。産地や品種を問わなければ、あらゆる食材が年中手に入るようになった昨今。「トッピングの黒トリュフひとつでも、そう。確かに華があって喜ばれます。フランス産以上ともいわれる質の高いオーストラリア産トリュフが、夏場でも手に入るようになりました。でも、わざわざ夏にトリュフを食べる意味って? 暑い時季に食べたいと感じますか?」

夏が過ぎれば秋刀魚が食べたい、冬になると牡蠣が恋しい。日本人が持つ季節に対する感性を、フランス料理で表すことが『SouRiRe』の料理の根幹です。「その時季にしか食べられない」「今の時季だから食べたい」という意味があるから。そして同時に「日本人シェフ・湯澤貴博が作るフレンチ」の意味でもあるのです。

見せてくれたのは、丼ほどの大きさがある栃木県産の新高梨。「僕が持つと小さく見えちゃうんですけどね(笑)。農家さんとは、もう15〜16年来の付き合いになります」。季節の食材であればどんなものでいいというわけではありません。食材の「個性」を強く感じられることにも妥協を許さない湯澤シェフ。焼いてもコンポートにしても崩れにくく、みずみずしさやシャリッとした梨の「個性」を強く感じられるのが、この新高梨なのだそう。「梨の中でもこれしか使わないし、季節が終わったら梨を使った料理もスパッとおしまいです!(笑)」。

新高梨とボタンエビのパルフェ

2種類あるディナーコース、いずれでも楽しめる

そのひとつが、9月から11月の約2ヶ月の間だけ提供する「新高梨とボタンエビのパルフェ」。合わせるのは、同じ時季に旬を迎えるイクラ。「イメージは、割烹料理の”いくらおろし”です」。

梨の「個性」である、みずみずしさと食感をおろしに見立て、グラスの底に。これからますます旨みを増していくボタンエビは、身と出汁のジュレで。4年以上生育した鮭から取った濃厚なイクラ、刻んだ新高梨とキュウリをのせ、仕上げにホイップクリームを添えれば、見事な”フレンチスタイルのいくらおろし”の完成です。梨のジューシーで爽やかな甘みと、プチプチはじけるイクラと弾力あるエビからあふれ出す深い旨み。ホイップクリームのまろやかさが全体をつなぎ、一気に一体感が生まれます。

どの食材も、品種だけでなく生産者や仕入れ先まで限定し、季節感、個性、そして意味のあるものだけで構成する湯澤シェフの料理。「要素は多くても、無駄なものは一切ない」。常に「使う意味」を問い続けるシェフの季節の食材への愛情は、どんな道具へのそれより深いものでした。

SouRiReスゥリル

SouRiRe

住所:
東京都目黒区青葉台1-15-2 AK-3ビルディング2階
TEL:
03-5784-2036
アクセス:
東急東横線「中目黒」駅より徒歩7分
営業時間:
ランチ/金〜火曜日 12:00~15:00(L.O.13:00)  ディナー/平日18:00~21:00(L.O.)、土日祝18:30~21:00(L.O.)
定休日:
毎週水曜日・第3火曜日
支払い方法:
クレジットカード可(VISA / MASTER / JCB / AMEX / Diners)
URL:
http://www.sourire-r.com/

写真・安野 敦洋 文・山本 愛理

更新: 2018年10月19日

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