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SPECIALインタビュー| 驚異のシャンパーニュ、サロンと「ひらまつ」、そして日本のフレンチとは?

1921年の初ヴィンテージから最新の2008年まで、わずか38アイテム。単一品種、単一クリュ、単一ヴィンテージという、当時きわめて珍しいスペックのシャンパーニュを他に先駆けてリリースした「サロン」。たった一つのアイテムを類い稀な年にしか醸造しないため、世界中のワイン通から「幻のシャンパーニュ」と呼ばれている。そのサロン社・ドゥラモット社から社長のディディエ・ドゥポン氏が来日。20年以上のつき合いという平松宏之氏の「レストランひらまつ 広尾」で、スペシャルガラディナーを開催した。日本通としても知られるドゥポン氏に、「ひらまつ」との関わり、日本におけるフランス料理の発展やサロンとの結びつきについて尋ねました。

FOOD PORT. : そもそも平松シェフとはどのようにして出会われたのですか?

ディディエ・ドゥポン(以下、ドゥポン): 私がサロン、ドゥラモットに入社したばかりの時ですから、22年前になるでしょうか。平松さんがメゾンを訪ねて来られました。その際、パリにレストランをオープンする予定と伺い、すごい日本人シェフがいるものだと驚きました。私は平松さんの開拓者精神に共感し、彼の誕生年に近い1951年のサロンを開けて祝福しました。

なぜならサロンの創業者、ウジェーヌ・エメ・サロンも、まさに開拓者精神の持ち主だったからです。ウジェーヌ・エメはもともと毛皮商でしたが、シャンパーニュへの愛に溢れた人物でした。そして、これまでに類例のないシャンパーニュ造りに挑戦しました。それがメニル・シュール・オジェ村のシャルドネのみを用いた、単一収穫年のシャンパーニュです。しかも、彼はそのシャンパーニュを、当時最も有名な社交の場であったパリの「マキシム」に、ハウスシャンパーニュとして売り込んだのです。

もう一つ、平松さんとサロンの共通点を挙げるとすれば、品質をとことん追求し、けっして妥協しないことです。私たちのサロンも一切の妥協をせず、完璧な年にしか生み出さないため、10年のうちにリリースされるのは3ヴィンテージか4ヴィンテージ程度。こうしたことから、私たちの間にはすぐに友情が芽生えました。

FOOD PORT.: 今、パリではたくさんの日本人シェフが活躍していますね。

ドゥポン: はい、そのとおりです。「Kei」の小林圭シェフや「Passage 53」の佐藤伸一シェフなど、ミシュランの星を獲得する若手シェフが大活躍しています。それも、やはり平松さんの先例があればこそですよね。現在は一時休業と伺っていますが、平松さんがパリに進出されたのが2001年。その翌年、オープンからわずか4か月にして星を獲得してしまいました。これはフランスでも大いに話題になりました。

私は日本人シェフの作るフランス料理が大好きです。繊細で創意に溢れ、私たちにはない感性で、いつも驚かせてくれます。そこにはもちろん、伝統的なフランス料理に対するリスペクトがあり、さらに自分たちの文化に適合させて、フランス料理を自家薬籠中の物としています。傾向的には比較的軽めに仕上がっていて、それだからこそオークの効いた白ワインやタンニンの強い赤ワインよりも、むしろシャンパーニュとの親和性が高い。日本人シェフが経営するフランス料理店でも日本のフランス料理店でも、サロン、ドゥラモットのシャンパーニュをたくさん扱っていただけるのは、そのような理由からではないでしょうか。平松さんには、オリジナルラベルのドゥラモットをハウスシャンパーニュとして取り扱っていただいてますよ。

FOOD PORT. : 料理との相性の話が出たところで伺いたいのですが、サロンを料理と合わせていただく際のポイントは何かありますか?

ドゥポン: サロンは、白ブドウのシャルドネのみから造られたブラン・ド・ブラン(フランス語で「白の中の白」という意味)です。ブラン・ド・ブランのシャンパーニュは非常にヴァーサタイル、つまり汎用性が高い。若い時は可憐な白い花やフレッシュで生き生きとした柑橘系の香りを持ち、食前に楽しむのはもちろん、軽めの前菜、たとえば魚介類をカルパッチョにして、オリーブオイルとレモンでいただくのもよいでしょう。これは同調方向のペアリングですが、あえて相反する特徴のものと合わせて、コントラストを浮き立たせるペアリングもあります。たとえばフォワグラを合わせてみると、フォワグラの脂っこさをサロンのもつ上品な酸がきれいに拭い、互いの味わいの深みを際立たせてくれます。

また、サロンはもともと長期熟成を施した後にリリースされたブラン・ド・ブランですが、さらに寝かせることも可能です。そのようなサロンはブリオッシュやキャラメルなどの香ばしいフレーバーを伴い、まるで最上級のブルゴーニュの白ワインのように変化します。このような状態のサロンなら、バターやクリームを使った古典的なフランス料理とも同調します。

FOOD PORT. : 今回のガラディナーではサロンとのペアリングを踏まえ、ドゥポン社長からお料理について特別なリクエストはされたのですか?

ドゥポン: いいえ、まったく。「ひらまつ」のスタッフを信頼していますし、何より宏之さんの後継者である平松大樹さんはとても才能のある料理人だと思っています。初めてお会いしたのは2年前、同じようなイベントの後でした。「ひらまつ」全体として、将来に向けてのビジョンが広がったと思います。

ですから、今回の料理はすべてお任せ。私自身が楽しみたいので、そこで私が口出しをしていたら味わいが想像できてしまい、楽しみが減ってしまいますからね(編注:インタビューはガラディナーの直前に行った)。しかし、メニューを見ると、よく練り込まれた様子がわかりますよ。リ・ド・ヴォーとエクルヴィスのナンチュア。洋ナシのオー・ド・ヴィーで香りづけしているそうですが、サロンは熟成が進むと、洋ナシの香りがとても顕著に感じられます。97年のサロンがきっと素晴らしいハーモニーを楽しませてくれることでしょう。メインの雉のショー・フロワも楽しみですね。雉の出汁にトリュフを加えたクラシックなソースだそうです。20年以上の熟成を経たサロンからは、キノコのニュアンスが感じられることが多くあります。

もっと多くの人々に、シャンパーニュは乾杯やアペリティフとしての飲み物だけでなく、こうして料理の最初から最後まで楽しめる飲み物であることを知ってもらいたいですね。そして、その時選ばれる銘柄が、ドゥラモットやサロンならとても光栄です。「ひらまつ」のレストランでは、それを実際に試していただくことができますよ。

ディディエ・ドゥポン
Didier Depond

1964年、ロワール地方のトゥール市生まれ。大学卒業後、「ローラン・ペリエ」に入社。97年、33歳の若さで傘下にある「サロン」「ドゥラモット」(ドゥラモットは250年の歴史をもち、今日、ル・メニル・シュール・オジェ村に本拠を置く、サロンの姉妹ブランド)の社長に抜擢された。

レストランひらまつ 広尾

レストランひらまつ 広尾

住所:
東京都港区南麻布5-15-13
TEL:
03-3444-3967
営業時間:
ランチ 11:30〜15:00 (13:00 L.O.) ディナー 18:00〜23:00 (20:30 L.O.)
定休日:
毎週水曜日 (祝日を除く)
URL:
https://hiramatsu-hiroo.jp/

文・柳 忠之(ワインジャーナリスト)

更新: 2019年11月12日

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