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日本の魚の未来を考える 「第一回まぐろミーティング」|SPECIALイベントレポート

写真提供:松乃鮨

今、マグロに何が起こっているの?

日本人が大好きなマグロ。鮨のネタとしても欠かせない存在です。新年の初セリではマグロが高値で競り落とされたニュースが話題になり、スーパーにもマグロのサクが溢れています。そんな様子を見ると、私たちは市場にはマグロが潤沢にあるように思います。ですが、どうやら現実はそうではないようです。特に太平洋クロマグロ(近海本マグロ)は減少の一途を辿り、このままでは近い将来、食べられなくなる日がくるかもしれないというのです。そんな状況を憂いた「日本の魚を考える会」「一般社団法人Chefs for the Blue」が、食に関わる人たちと問題を共有するシンポジウム「まぐろミーティング Vol.1」を行いました。その様子をレポートします。

太平洋クロマグロは絶滅危惧種……

写真提供:松乃鮨

2018年10月11日、豊洲市場がオープンし、マグロの初セリが行われました。全体の取引が1733本という中で、大間を中心にした「津軽もの」と呼ばれる近海本マグロは20本。「良質なものは年々、目に見えて減っています」。シンポジウムで壇上に立ったマグロ仲卸業社「株式会社フジタ水産」の社長、藤田浩毅さんの声です。江戸時代、マグロは沿岸に大量にいて、モリで突いたり、地引網で追い込み手で捕獲することができたそうです。その後、明治〜昭和の初期までに沿岸部ではほぼ獲り尽くされ、時代と共に高性能な魚群探知機や漁具が開発されたことで、次第に遠洋に船を出すようになり、大規模な巻き網漁も台頭してきました。水産資源管理を専門とし、持続可能な漁業を研究する第一人者、東京海洋大学の勝川俊雄准教授は次のように話します。

「宮城県には定置網にかかった太平洋クロマグロの大漁を記念した碑があって、そこには毎日1万本と記録されています。1952年の漁獲が多かった時には、漁獲量が65万トン。今では、マグロの漁獲量は初期資源量の3.3%しかありません。最近になって導入されたものの、それまで日本には漁獲規制というものがなく、量を問わず小さいものでも獲っていました。現状でも捕獲されている95%は0〜1才の子供のマグロ。資源を健全に使っていくために必要な親の量を増やさないと、このままではさらに減るばかりです」

クロマグロは世界の海を泳ぎ回る大回遊魚で、メキシコ湾、大西洋から地中海にかけて回遊する「大西洋クロマグロ」と日本海〜太平洋を巡る「太平洋クロマグロ」の二種類があります。それぞれ関わりのある沿岸の複数の国で漁獲量が管理されていますが、大西洋クロマグロは一時期の減少後、EU諸国が厳しい漁獲規制を行ったため、数が増え漁獲量も大復活を遂げました。一方で太平洋クロマグロの場合は、規制が不十分で資源量も低迷したままです。一体この違いは何なのでしょうか? 勝川さんは続けます。

大中巻き網船団が、文字通り一網打尽に

東京海洋大学 勝川俊雄准教授

「太平洋マグロは6〜7月の特定の水温帯で産卵します。その場所は、日本の排他的水域の中の2か所しかありません。卵を産んだマグロは、小魚やイカを食べて、脂を蓄えながら北上し、また、次の年に産卵場所に戻ってきます。はえ縄漁や一本釣りなどの伝統的な漁法は、一番脂ののった冬が漁期の中心です。産卵場の近くの漁師は、産卵のために群れがやってくる時期は、自主的に禁漁をしていたりします。ところが、産卵場に大手企業の大規模船団がやって来て、産卵期のマグロを待ち伏せし、巻き網で群れごと一網打尽にしてしまうのです。多い日には、大間の1年分のマグロを一日で水揚げします」

一日に大量のマグロを水揚げする大中巻き網漁のマグロは、血抜きや神経締めなどの処理が行われないので、質が悪い魚が多くなり、料理店で使えるレベルになりにくいとか。市場もダブつくので、低価格で取り引きされます。6〜7月のスーパーの鮮魚コーナーや回転ずし店には、安価なクロマグロが並んでいるのをよく見かけます。しかし私たち消費者は、そんなマグロを買わされている事実を知らなければなりません。

資源を回復するための漁獲規制の内容に大きな問題が

太平洋クロマグロの漁獲枠は、国際的な漁獲枠ルールの枠組みを決める中西部太平洋マグロ類委員会(WCPFC)が国別に配分します。今年の日本の太平洋クロマグロ漁獲枠(成魚)は4882トンで、これを水産庁が国内の漁業者に配分するのですが、ここに大きな問題があると勝川さんは話します。

「水産庁は大中巻き網企業を優遇する漁獲配分を行い、守らなければならない伝統的漁業を行う小規模沿岸漁業者の漁獲配分を、何のコンセンサスもなく低く設定したのです。伝統漁業者の生活を守るためには、漁獲配分枠の見直しが必要です。そうしないと、漁村地域の衰退は止まりません」

伝統的漁業を行う小規模漁業者への特別な配慮は、SGDsにも掲げられる世界共通のルールの一つであり、日本はそんな国際的な動きに逆行していると言えるでしょう。一方で、国際ルールを遵守して、ここ数年、大きく資源が回復した大西洋クロマグロ。後編は、その大西洋を舞台にマグロのはえ縄漁を行う「株式会社臼福本店」の臼井壯太朗さんのお話です。

※SDGs(Sustainable Development Goals)=2015年に国連総会で採択された国連の開発目標で、持続可能な開発のための17のグローバル目標と169のターゲットで構成される具体的行動指針。目標 14. は水産資源の項目で、「持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する」とある。

文・ナイキミキ

更新: 2018年11月14日

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