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SPECIALイベントレポート|東北唯一の闘牛 平庭闘牛と塩の道

健康志向や熟成肉人気もあり、品種と育成環境に由来する赤身主体の肉質の評価が高い岩手短角牛。岩手県の北部地域に広がる4大産地の一つ山形短角牛は、現在の久慈市(合併前の山形村)での生産量が多く、東京都内の料理人から高い人気を誇っています。

恥ずかしながら、私の出身地が誇る人気食材であるということ以外、その歴史や背景などの知識は、つい最近までありませんでした。山形村を代表する生産者の一人、「柿木畜産」の柿木敏由貴さん(通称カッキー)とは、あるイベントを通じて縁ができ、それ以後も年に数回、顔を会わせる程度。柿木さんが山形村の牛を愛し、文化・伝統として次世代に継承していく責任を背負いながらも、産地を代表する立場としてレストランと信頼関係を築いてこられたことも知らずにいました。

なかでも驚いたのは、「闘牛」が今でも開催されているということ。その昔は主に農耕用や荷物を運ぶ役牛として飼育されていた短角牛。江戸時代の人々は、近隣の海岸で焚かれた塩を何頭もの牛の背中にのせ、北上山地を越えて盛岡方面まで運んでいたそうです。その道は、「野田の塩の道」と呼ばれています。そして、その先頭の牛を(ワカサと呼ぶ)を決めるため、牛の突き合わせをしたのが闘牛のはじまりとされています。その伝統は昭和58年から観光行事の一つとして平庭高原で毎年開催されるようになり、東北唯一の闘牛として定着しています。

また、この地域の短角牛は闘牛の素牛として全国に供給されており、闘牛の本場である新潟県や沖縄県、鹿児島県では、「南部牛」という名のブランド牛として活躍しているそうです。ほかの地域では、一方が背を向けて敗走するまで時間無制限で闘わせますが、平庭闘牛では原則勝敗はつけません。すべての取り組みにおいて、一方が優勢になったところで勢子が割って入り、引き分けとします。その理由は、若い牛中心の取り組みのため、将来を考慮し負け癖がつかないようにすることと、負傷を防ぐためだということです。

柿木さんは語ります。

「闘牛は短角牛を知ってほしい、という目的もありますが、 肉用の家畜は、残念ながら死んでから価値を発揮するものです。 このことを生業にしている以上は、命について考えることも多いですし、感謝していただいています。まただからこそ、この地に生まれ、その子に少しの才能とやる気があれば、闘牛という「生きて価値を発揮する」道も残してあげたい。 肉用であれば3年程の命、闘牛として見込まれれば10年程可愛いがってもらえますから」

現在は春・夏・秋の年3回の開催。柿木さんをはじめとする関係者のみなさんの、山形短角牛への愛情溢れる闘牛会場の雰囲気を経験すると、改めてそれぞれの食材の背景や成り立ちに敬意をはらい、感謝していただくことの大切さを実感します。

いわて平庭高原 闘牛会公式ホームページ

URL:
http://www.hiraniwatogyu.com

文・菊池博文(チーム・フードポート岩手)

更新: 2018年9月17日

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