GIFT

大切な人への贈り物に、ちょっとした手土産に

日々をより豊かに暮らすためのヒント集 |料理家のご馳走モノ|門倉多仁亜さん

「馳走」とは、昔、大事な客人をもてなすために馬を走らせ、奔走し、様々な食材を調達してきたことに由来する言葉。江戸時代後半には、もてなされたことへの感謝を込めて、「御馳走様」が食後の挨拶として使われるようになったと言われています。そして、「ご馳走」と言えば「もてなし」や「豪華な食事」という意味になるわけですが…、しかしながら思うのです。モノやコトに溢れた時代に暮らす私たちのご馳走とは、“もてなし”や“豪華”に限らないのではないでしょうか。例えば、誠実に育てられた野菜、大好きな母の手料理、大切な人とテーブルを囲む時間なども、“日々のご馳走”と呼ぶことができたり。普段の食事が自分にとって“ご馳走”である、そんな風に言える暮らしに憧れて、私たちは料理家の皆さまに会いに行くことにしました。なぜならきっと料理家とは、“日々の食事”を“日々のご馳走”に成長させるアイデアを提案してくれる存在。だから様々な料理家さんにお会いして、まずは料理をする上で大切にしているモノ=食材・食品・道具など(名付けて「ご馳走モノ」)を教えていただきながら、料理のこと、暮らしのこと、話を聞いてみたいと思います。料理家たちの言葉をヒントに、皆さんも、自分にとっての日々のご馳走のこと、ぜひ考えてみてください。

自分と縁のある土地とともにシンプルに、ゆるやかに暮らす。

この写真をそれぞれご覧いただくと気づくことがあるかもしれません。そう、門倉多仁亜さんにご紹介いただいたモノは、鹿児島生まれのものがほとんどなのです。7年前、ご主人のご実家がある鹿児島県の南方・大隅半島に家を建て、東京と行き来しながら暮らしている門倉さんにとって、鹿児島はすぐに「帰りたくなる」場所。鹿児島の文化風習、そして料理をお義母さん、お義姉さんに教えてもらいながら、土地の人々と触れ合っているうちに、まるで故郷のような場所となりました。「鹿児島に帰ると、家に向かうより前に地元で無農薬の野菜を作っている吉田さんのお店に直行します。種類がたくさんあるわけではありませんが、そこに並んでいるのは旬の野菜ばかり。これらの野菜を使って、どんな料理を作ろうかと考えている時間はすごく幸せです」。東京にいる時は、先に作るものを考えてからスーパーに行き、レシピに必要な食材を買いますが、鹿児島では「畑」から料理が始まります。今、畑で採れる旬食材をどのようにして食べようか、そんな風に思いめぐらす日々は、物質的に恵まれた東京よりもはるかに豊かなのかもしれません。

01. 鹿児島県・坂元醸造の「鹿児島の黒酢」
江戸時代から始まった、壺を使用する伝統製法を今も守り続けている。薩摩焼の壺に仕込み、1年以上、発酵・熟成させて造られた酢。「壺に耳を近づけるとプチプチという音がします。これは発酵で出てくる炭酸ガスの音。自然の息吹を感じます」と門倉さん
【問】坂元醸造http://www.kurozu.co.jp(/オンラインショップあり)※スーパーなどでも販売

02.鹿児島県・桜島の上野さんの蜂蜜
桜島では唯一のはちみつ屋さんで、採れた蜜を加工・加熱せずにそのままお届けしています。家族経営で生産量は多くありませんし、常に売り物があるわけではありませんが、年に何回か、私の運営するオンラインショップの生活用品店『Hyazinthen』で販売していますので、時々チェックしてみてください」(門倉さん)http://hyazinthen.jp/

門倉さんは日本人の父とドイツ人の母との間に生まれ、子どもの頃から親の仕事の都合で日本、ドイツ、アメリカなど各地を転々と暮らしてきたと言います。ドイツの祖父母のもとで暮らしていたこともあるのだとか。そして大人になり、フランス料理や洋菓子の華やかな料理の世界に憧れて、ル・コルドン・ブルーで学び、やがて料理研究家として独立した門倉さんですが、ある日、考え方が少し変わった出来事があったそうです。それは、NHK『ドイツ語講座』で「ドイツ料理を教えてほしい」と頼まれたこと。「ドイツ料理はすごく素朴なので、初めは誰が興味を持つの?と思いました。でも、料理ではなく“ドイツの文化”を伝えてほしいのだと言われて『それなら』と思ってやってみることにしました。実際に作ってみたらすごく楽しくて。このことがあってから、急に『コルドンブルーのような料理を私が作る意味はない』と思えてきたのです。それよりもドイツのおばあちゃんが作っていた家庭料理や鹿児島のお義母さんの郷土料理など、自分の背景に紐付いた料理の方が作っていく価値がある、と。これからは日常に寄り添うシンプルな料理を作っていきたい、と思うようになりました」「私には故郷はないんです」と言う門倉さんですが、今、ご自身のルーツ・文脈のあるものを何よりも大切にしています。鹿児島に帰れば、その土地の中で生まれた良いモノを様々見つけ出しては日々の暮らしに取り入れています。

門倉多仁亜さん {Tania Kadokura}

門倉多仁亜さん {Tania Kadokura}

日本人の父とドイツ人の母のもとに生まれる。幼い頃、ドイツ人の祖父母と暮らす中で自然と家事が身に付き、料理好きに。著書は多数あり、『タニアのドイツ式部屋づくり&キッチン』などの「タニアのドイツ式」シリーズではドイツのライフスタイルを紹介。近著は『365日の気づきノート』

contributing Editor&Text バブーン(矢作美和、古里文香、茂木理佳、川上萌、井上真子人)
Photo:小林修銀

※こちらの記事は2016年4月20日発行『メトロミニッツ』No.162に掲載された情報です。

更新: 2016年11月14日

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