冬になると富山に必ず行く理由。「ふじ居」|マッキー牧元の美味しいから旅をするのだ!

今年も「ふじ居」の季節がやってきた!

12月が近づくと、無性に富山に行きたくなる。

「ふじ居」である。

以前は、郊外の大型ドラッグストアの片隅に小さな家を建てて、そこでやられていたが、去年素晴らしき庭を眺める屋敷へと移転された。

冬の狙いは、ブリと香箱蟹である。

まずは、コースの中でいくつか出されるブリの料理がたまらない。ある日には、ブリ料理6部作を出していただいたことがある。その日は、新湊漁港から届いた10キロ近い朝獲れを神経締めにしたブリだった。お造りは、奥からカマ、砂ずり、中トロ、大トロと並べられる。それぞれ異なる食感と味わいがあって、楽しい。カマは平貝のような食感で、クリっと歯が入っていく。砂ズリはコリっとした食感で、コラーゲンと脂の甘みがあって、噛む喜びを与えてくれる。中トロや大トロは脂の緩みが一切無い。コリコリッと痛快に入り、一口目は脂など無きかのようなきれいな味わいだが、噛めばじっとりと脂がにじみ出て溶けていく。

まだまだ続くよ、ブリ料理6部作

続いて2皿目は、当日揚がったものでしかできないという“血合いの刺し身”である。これを胡麻塩と生姜醤油でいただく。爽やかな血の香りと脂の甘い香りが同居していて、食べた瞬間、笑いだすほどの旨みがある。

「こいつを熱々のご飯にかけたらたまらんでしょうね」というと、「時々まかないでやります」と店主の藤井寛徳さん。ずる(笑)。

次の皿は、中トロと砂ずりの元を“湯引き”したものに、ポン酢が添えてあった。やや暖まって香りが丸く膨らみ、優しく歯が入ってくように惚れそうになる。

続いてブリの“モツ煮”ときた。“ふと”と呼ばれる胃袋を中心に真子などと炊き合わせてある。コリコリと弾む“ふと”を噛み締めながら、ぬる燗をやる。ああ、たまりませんぜ、旦那。

そして、カマの塩焼きである。
この色つやを見てほしい。爆ぜるような肉、香ばしい皮と、命が充ちている塩焼きである。そして、最後は“ぶり大根”ときた。大根は通常のぶり大根より色が薄い。甘辛く煮ていない。ところがどうだろう。大根は、その淡い滋味をしたたらせながらブリの滋味を抱き込んでいる。大根が大根でありながら、ブリなのである。すべての料理に驚きがあり、ブリの生命感がはつらつと溢れている。これも藤井さんの慧眼と感性、技があってこそ生まれた料理なのだろう。

この色つやを見てほしい。爆ぜるような肉、香ばしい皮と、命が充ちている塩焼きである。そして、最後は“ぶり大根”ときた。大根は通常のぶり大根より色が薄い。甘辛く煮ていない。ところがどうだろう。大根は、その淡い滋味をしたたらせながらブリの滋味を抱き込んでいる。大根が大根でありながら、ブリなのである。すべての料理に驚きがあり、ブリの生命感がはつらつと溢れている。これも藤井さんの慧眼と感性、技があってこそ生まれた料理なのだろう。

悶絶は必定。香箱蟹のケジャン!!

そしてこの時期、その藤井さんの才が発揮される料理が最後に運ばれる。

香箱蟹のケジャンである。
生きた香箱蟹を、醤油と酒、煮干しと唐辛子、ネギに漬け込む。酒と醤油のコクや甘みが、身や内子、ミソや外子とまぐわい、互いの情が絡み合って、大変いやらしく、舌を扇情する。いやらしい旨みが舌に刺しこみ、ねっとりと口内粘膜にしなだれて、精神を勃起させる。人間と蟹の情が絡み合い、陶酔の奈落へと突き落とす。

これはいけません。
藤井さん、あなたはどうしてこんな危ないことを考えるのですか。
蟹を食べては、古酒を飲んでは、目を細めていると、そこに炊きたてのご飯が運ばれた。ケジャンを熱々のご飯にのせるのである。もう一度言う。熱々のご飯にのせるのである。

ああ、いけませぬ。
ご飯にのせて食べれば、体中の筋肉が弛緩して、崩れ落ちる。理性を失い、食欲なのか性欲なのかもわからぬ衝動に貫かれる。もう言葉は消えた。自らの品位もなぐり捨てた(元々無いが)。

殻の内側に残ったじゅるじゅるを、一滴たりとも逃すものかと、殻にご飯を入れてかき混ぜ、一口食べて気を失う。悶絶し、虚空を見つめてだらしなく笑う。蟹はもがきながら、旨みのエキスをじっくりと身の内に吸い込んでいく。この蟹とブリを思い出すだけで、すぐさま富山に飛んで行きたくなる。だが、こうして我々を骨抜きにする藤井寛徳さんが生み出す美味は、それだけではない。無限なのだ。

「御料理ふじ居」
京都で6年、金沢で5年修業された藤井寛徳 氏が営む割烹。富山市郊外の東岩瀬町にある。昼10,000円〜、夜20,000円〜。この香箱蟹とブリのコースの全料理は下記の通り。日によって異なる。
1. ウニと千枚漬け。
ウニの甘みと千枚漬けの熟れた酸味。最初にこういうさらりとした味わ  いから入るのがいい。取り合わせの妙有り
2. 魚津の松葉蟹しんじょう椀。金沢カブ
3. 新湊マコガレイ。塩だけでいただくのがいい。シコシコとイカっている身を噛んでいくと、ねっとりとした甘みが口いっぱいに広がる。
4. ブリお造り
5. 血合いの刺し身
6. ブリの中トロと砂ズリの湯引き
7. 炊き合わせ。土遊野ニンジン。上市里いも、高山の小松菜。
サトイモがねっとりと甘い。藤井さんは炊き合わせが実に上手い。
8. ぶりモツ煮
9. かまの塩焼き
10. 富山南砺市のアンポ柿の柿なます
11. ブリ大根
12. 香箱かにのケジャンとごはん

マッキー牧元

マッキー牧元

1955年東京出身。㈱味の手帖 取締役編集顧問 タベアルキスト。日本国内、海外を、年間600食ほど食べ歩き、雑誌、テレビなどで食情報を発信。「味の手帖」「朝日新聞WEB」「料理王国」「食楽」他連載多数。三越日本橋街大学講師、日本鍋奉行協会顧問。最新刊は「出世酒場」集英社刊。

御料理ふじ居オリョウリ フジイ

住所:
富山県富山市東岩瀬町93
TEL:
076-471-5555
アクセス:
富山駅より車で15~20分。 ライトレール東岩瀬駅より徒歩10分。 競輪場前駅から501m
営業時間:
昼12:00~15:00 夜18:00~22:00
定休日:
月曜日・第3火曜日
支払い方法:
カード可 (VISA、Master、JCB、AMEX、Diners) 電子マネー不可
URL:
https://www.oryouri-fujii.jp/

更新: 2020年12月4日

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