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将来が楽しみな若き料理人。焼津「茶懐石温石」|マッキー牧元の美味しいから旅をするのだ!

美しい手が生む洗練の味。焼津「茶懐石 音石(おんじゃく)」

仕事が綺麗である。
余計な飾り付けや量というものがなく、少し引いたところでピタリと収まっている。真鯛ではなくチダイを使った煮物椀や黒ムツの皮炙りなど、地のものをけれんみなく使って、料理に仕立てている。

 

なかでもカブを丸ごと突っ込んで炭火焼きにした料理は、生のカブの香りと加熱して生まれる甘みが同居して、カブの良き面をすべて併せ持った料理だった。また、金目鯛の炭火焼きは、加熱加減が精妙で、皮をバリッと焼き付けてあるのはもちろん、身は優しくふんわりと火を入れながら余分な脂は落とし、ややもすると野暮ったいこの魚の優美な一面を引き出していた。
そして手先、というか仕事する手自体と動きも美しく、こうした手で調理される魚や野菜たちは幸せだろうなと思った次第である。

36歳の青年・杉山乃互(すぎやま だいご)氏は、今はなき「和幸」の茶懐石の心を守っている。バラエティに富む静岡の食材を使い、「辛酸鹹苦甘」の五味をほどよく按配し変化をつけながら、旬ものを使い、素材の持ち味を活かし、親切心をもっておいしく食べやすく調理するという懐石の心を、焼津の住宅街で、ひっそりと出し続けている。

今の時期なら何があるだろうか? この店のために、焼津に出かけたい。そう思わせる、これからが楽しみな料理人である。

静岡の春を表現した、4月のある日のコース

◯アジのきゅうり巻き
見事なアジ。まだ馴染んではいないが、みずみずしい胡瓜の青さと、新鮮なアジの脂が弾ける。

◯あさりとアスパラムース アスパラ ラディッシュ
あさりとアスパラのミネラルがみごとに共鳴する。現代的な料理の姿を見せながらも、和食の精神が貫かれていた。

◯煮物椀 花鯛の潮仕立て
チダイの煮物椀である。脂の質が軟らかい。花鯛の身自体もしなやかで、少し控えめな旨みに品の良さを感じさせる。

◯向付 本鮪 中とろ コウイカ
ねっとりと甘く、舌にしなだれるイカが素晴らしい。

◯向付 黒ムツの皮炙り

◯おしのぎ 平貝手巻き寿司 縦斬り
貝特有のミネラル感、乳白色の甘みがたっぷりと味わえる。

◯焼き物:金目鯛の炭火焼
加熱具合が精妙で、金目鯛からエレガントさを引き出していた。

◯焼き物:カブの炭火焼
野菜の焼き物を単体で持ってくる、潔さと清さが素晴らしい。カブは、生と火を入れた加熱の両方の良さを感じさせる。

◯鯛の子と茄子の炊き合わせ
茄子の美味しいこと。春だというのに、ふくよかな甘みがにじみ出る。

◯ムギイカ炊き込みご飯 菜花
これもまた春。拙いムギイカの甘みと菜の花の香りに春が宿っている。

◯紅茶とグレープフルーツのゼリー

マッキー牧元

マッキー牧元

1955年東京出身。㈱味の手帖 取締役編集顧問 タベアルキスト。日本国内、海外を、年間600食ほど食べ歩き、雑誌、テレビなどで食情報を発信。「味の手帖」「朝日新聞WEB」「料理王国」「食楽」他連載多数。三越日本橋街大学講師、日本鍋奉行協会顧問。最新刊は「出世酒場」集英社刊。

茶懐石温石ちゃかいせき おんじゃく

住所:
静岡県焼津市本町6丁目14−12
TEL:
054-626-2587
アクセス:
J R焼津駅より徒歩約20分
営業時間:
昼12:00〜13:30(L.O.)、夜18:00〜20:00(L.O.)*完全予約制
定休日:
不定休
支払い方法:
各種クレジットカード可(JCB、AMEX、VISA、MASTER)
URL:
https://www.facebook.com/onjakuyaizu/

更新: 2020年5月4日

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