fbpx

「うまいぜよ!」 高知で魚を食べるなら断然「ゆう㐂屋」|マッキー牧元の美味しいから旅をするのだ!

ゆう㐂屋

ご夫婦で切りもりする寿司屋兼小料理屋。紹介した料理のほかにも、どの魚も目を丸くするほどの味わいの驚きがある。「シンコ」と呼ぶ9月頃から出回るソウダガツオの幼魚、脂の甘みに品がある「金目鯛の刺身」。淡白ながら奥底に滋味をのぞかせるハタ科の「あかば」など、季節ごとの楽しみは尽きない。締めは、ゆずの酢で味をつけた酢飯とシメサバによる「いお寿司」。「カツオ茶漬け」は熱々の出汁をかけて色が変わった頃合いで掻き込めば、出汁にカツオの滋味が溶け込んで笑いが止まらない。一堂無言、一心不乱で食べながら、顔が「うまいぜよ」と言っている。事前予約を入れてカツオもお願いし、来店するといいだろう。

命が爆ぜる香り。それが「ゆう㐂屋」のカツオ

高知で美味しいものといえば、皆さんが思い浮かべるのは、カツオではないだろうか。

そのイメージどおり、高知市内を歩けば、どの店も“カツオのたたき”の文字が踊って、お客さんを誘い寄せる。名物をうたうだけあって年中あり、どの店に入ろうとも美味しくいただける。しかし、どの道にも頂点はある。高知に通って10年、毎年数回高知に行くようになってからは、もうカツオはこの店以外では食べなくなってしまった。

高知市内にある「ゆう屋」である。

なにしろ今まで食べてきた概念を変えるカツオが出されるのである。カツオは刺身と銀皮作りがあるが、両方食べてほしい。まず運ばれてきた瞬間に、一堂がおし黙るほど美しい。色からして違う。今まで出合った濃い赤色でなく、うっすらとピンク色が刺し、色が澄んでいる。その姿は凛として、手をつけるのをためらうほど神々しく、色気と潔さが入り交じった、自然の不思議を抱えている。

赤い身に歯を立てれば、もちっむちっとした歯応えで応えて、「血潮ぜよ」とカツオが叫ぶ。この上なく新鮮でねっちりと舌にしなだれ、品のある脂の甘みの奥に逞しい鉄分が眠っている。こんなカツオは、ほかでは出合えない。身のきめ細かさ、味の上品さ、奥に秘めた逞しさ、香りの高さなど、今まで食べてきた同じ魚だろうかと思うほどである。特に香りの高さの差が、歴然としてある。こいつは生きている魚の、命が爆ぜる香りである。

必食! 幻の魚・モンスマガツオ、清水サバ、ウツボや太刀魚

さらに、「モンスマガツオ」に出合うことができたら幸せである。

滅多に獲れぬ、幻の魚である。もっちりとした身はきめ細かく滑らかで、その身に脂をしっとりと漂わせ、中トロのように消えていく。いや、マグロと比したら失礼かもしれない。さらりと旨みが消えるのに、重い。マグロの圧倒感とは違う品がある。味に良識があり、味覚の尺度を問うような、神秘な味の奥行きがある。

その品をニンニクが引き締める。

カツオの品性で頭を撫でられながら、ニンニクで頬をはたかれる。その両者の感覚に、落ちていく。そこへ「美丈夫」のぬる燗を合わせ、さらに落ちていく。さらに「清水サバ」も血潮をたぎらせて、腹身はシコシコと背側はもちもちと歯を喜ばせる。圧倒的な命の存在感に、自らが生きている喜びを重ね合わせ、グイグイと酒を飲む。

 

ウツボのたたきも違う。

普通は、身がパサパサで皮が硬く、微かに匂いがするのだが、この店のそれは、身はしっとりとしてほの甘く、皮下のコラーゲンはグリグリと歯に食い込んで、甘い。葉ニンニクで作った高知名物のぬた味噌につけて食べれば、無性に酒が恋しくなる。

一方、ポン酢で食べる太刀魚のたたきは、火を通した太刀魚のふくよかな甘みと、生で食べる太刀魚の色っぽさの両方がある。

太陽の香りが広がる、「自家製あぢの一日干し(ひいといぼし)」

刺身だけではない。

運がよければ、「自家製一日干し(ひいといぼし)」に出合うことができよう。

ご主人の手による「一日干し(ひいといぼし)」を食べた瞬間、口の中で波しぶきが舞った。二噛み、三噛みするうちに、太陽の香りが広がった。干物に箸を入れると、抱きつかれるようにすうっと深く入り、ほろりと身が剥がれた。口に運べば、濃縮したアジの滋味がぐっと心を捉える。それでいてほかのアジの干物のような、老成感がない。塩も淡めで、みずみずしさを感じる干物なのである。

だからご飯が猛烈に恋しくなるというよりは、酒が飲みたくなる。「美丈夫」をぬる燗にして、この「一日干し(ひいといぼし)」だけで30〜40分、ゆっくりと過ごしたい。そうしたら、どんな幸せがやってくるのだろう。そう思わせる干物は、なかなかない。

とにかく高知の魚の実力が知りたければ、この店に直行すべしである。

マッキー牧元

マッキー牧元

1955年東京出身。㈱味の手帖 取締役編集顧問 タベアルキスト。日本国内、海外を、年間600食ほど食べ歩き、雑誌、テレビなどで食情報を発信。「味の手帖」「朝日新聞WEB」「料理王国」「食楽」他連載多数。三越日本橋街大学講師、日本鍋奉行協会顧問。最新刊は「出世酒場」集英社刊。

ゆう㐂屋ゆうきや

住所:
高知県高知市帯屋町1-9-25
TEL:
088-873-0388
アクセス:
土佐電鉄 堀詰駅から約徒歩2分
営業時間:
18:00〜(材料がなくなり次第、終了)
定休日:
日曜日
支払い方法:
各種クレジットカード可(JCB、AMEX、Diners、VISA、MASTER)

更新: 2020年4月7日

この記事が気に入ったら
「シェア」しよう

最後までお読みいただき、ありがとうございます

pagetop