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新潟の魚と米で唸らせる。「鮨 登喜和(ときわ)」|マッキー牧元の美味しいから旅をするのだ!

「鮨 登喜和」

昭和29年創業の新潟県新発田市の鮨屋。3代目で現店主の小林宏輔さんは、東京の名店で修行された後、2010年に実家に戻り、店を継いだ。お任せで昼は5,000円、8,000円、夜は8,000円と10,000円(税抜)。完全予約制。

地方の鮨屋を訪れる意味とは?

かつて長崎に、「とら寿し」という鮨屋があった。

作家の遠藤周作や山口瞳が贔屓にしていた店で、東京以外に薦められる鮨屋がなかった時代に、唯一通った店である。この店の潔さは、近海で獲れた魚しか扱わないことにあった。そのため時化たら店は休業する。

鮨屋の看板でもあるマグロも普段は置かず、たまに春先になって獲れたヨコワ(クロマグロの幼魚)だけを扱う。あくまで当日獲れた魚だけを、あるものは生で、あるものは締め、あるものは煮て、鮨ダネにしていた。

今は全国に優れた鮨店が多くある。だが一部の店は、魚を豊洲から仕入れているため、東京で食べる鮨屋と寸分変わらない。これでは地方で鮨屋を訪れる意味がないと思っている。

地元で獲れた魚を鮨ダネに。「登喜和」3代目店主・小林宏輔さん

「今日は全部新潟の魚です」

新潟県新発田(しばた)市にある「登喜和」を訪れると、店主・小林宏輔さんはそう言われた。だから、マグロも穴子も煮蛤もなかった。

その心意気やよし。

地方の鮨は、こうでなくちゃいけない。なんでも、最初に店を開いた時には、「東京に負けない鮨屋を」と意気込み、東京や明石、九州など様々な産地から鮨ダネを引いていたのだという。しかし、色々な人の出会いからある時思い立って、魚も米も新潟のものにされた。新潟で獲れた魚を、寝かせ、塩をしたり、風干ししたりと、様々な方法で旨みを引き出す。試行錯誤を繰り返し、現在がある。

それではそのすべてをご紹介しよう。

1) カブのすり流しとズワイ蟹
2) 3日寝かせた本アラ。じっとりと脂がのっていやらしい
3) 薄切りにしてたたいた佐渡島のアオリイカ。ねっとりと甘い。ゴマがアクセント。

4) 5日間も寝かせた黒ムツ。身が締まっている。黒ムツ特有の身のダレがない。

5) 南蛮エビ。塩をして軽く脱水、エビミソペーストを噛ませて。脱水してある分、甘さに品がある。
6) 聖籠産の白子。実に綺麗で、香りのいやらしさが微塵もない、澄んだ味わい。これはトロトロになるまで潰して食べ、後から酢飯を入れてよくよく混ぜる。昇天。
7) マハタ。微かな甘い旨みあり。じれったい香りが奥底に潜んでいる。
8) 太刀魚。本日の一番。新潟で太刀魚というのは珍しいが、「新潟でも竹岡(千葉県)に負けない、太刀魚やサワラが入るようになりました」とご主人が言うように、海が変化している。風干しされ、軽く炙られた太刀魚は、しなやかな筋肉があって、噛むと一瞬抵抗を見せながらも、もっちりと崩れ、酢飯と合体する。品のいい脂の甘みが流れ、皮下のたくましい甘みが来て、喉へと消えていった。
9) 銀葉草(ぎんばそう。新潟以南の日本海、および岩手以南の太平洋岸に生息するホンダワラ科の海藻)。柔らかな青い香り。
10) 潰したイクラ。大変エロい。テロテロと甘く、舌に絡み合う。これは、イクラとのディープキスである。
11) イシモチ。身が実にきめ細かく、しっとりとして腹身がうまい。
12)  メガニ。蒸した熱々の酢飯によって、カニの甘みが膨らんで、たまらない。

13)  淡島産サバの海苔巻き。クルミの飴煮を入れるこの地方特有の酢飯でサバを海苔巻きに。
14)   栗とクルミの飴煮入りいなり寿司。これも郷土食。
15)   かんぴょう巻き。
16)   女将さんの玉子焼き。

米・魚・小林さん。優しい新潟のハーモニー

季節を変えてまた来よう。「登喜和」はそう思える鮨屋である。何より酢飯がおいしい。優しく、米自体が持つ柔らかな甘みが、寝かせた新潟の魚たちとまろやかに抱き合う。その様子が、穏やかな気分にさせる。そんな鮨だった。

「米を作られている農家の方が、実に優しい方なんですよ」

そう小林さんは言われたが、それだけではあるまい。小林さん自身の温厚さが、酢飯ににじみ出ているような気がしてならなかった。

マッキー牧元

マッキー牧元

1955年東京出身。㈱味の手帖 取締役編集顧問 タベアルキスト。日本国内、海外を、年間600食ほど食べ歩き、雑誌、テレビなどで食情報を発信。「味の手帖」「朝日新聞WEB」「料理王国」「食楽」他連載多数。三越日本橋街大学講師、日本鍋奉行協会顧問。最新刊は「出世酒場」集英社刊。

鮨 登喜和ときわ

住所:
新潟県新発田市中央町3-7-8
TEL:
0254-22-3358
アクセス:
JR新発田駅西口より車8分、JR白新線西新発田駅北口より車12分
営業時間:
昼12:00〜14:00(L.O. 13:30)、夜18:00〜22:00(L.O. 21:30)
定休日:
月曜日
支払い方法:
各種クレジットカード可
URL:
https://tokiwasushi.top/

更新: 2020年3月12日

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