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金沢を代表する割烹「片折(かたおり)」|マッキー牧元の美味しいから旅をするのだ!

「片折」

今や金沢を代表する割烹。店主の片折卓矢氏と女将さんの裕美さんは、金沢の名店「懐石 つる幸」出身。浅野川の畔に2018年5月に開店した。魯山人、九谷焼の須田菁華など、器揃えもみごと。カウンター7席のみ。

北陸の地物で勝負する、金沢の割烹「片折」

金沢の割烹「片折」に出かけたのは、2018年の冬だった。 

コースは、カニ以外の季節では28,000円からである。 金沢の割烹では、高額な方だろう。 

「北陸には、優れた食材が多くあります。でも、それらはほとんど県外に行ってしまう。地のもので、最高の食材を使って料理を作ってみたかったんです」

そう言って、ご主人の片折卓矢さんは目を輝かせた。魚は、毎朝遠く離れた港まで通って、その日に揚がった一番の魚を仕入れて来る。 

「野菜も採れたての土の香りがするものを使いたい。市場では、生産者の顔が見えなかったんです」と、これまた四方へと足を延ばす。「正直まだお客さんも少なく、苦しいです。でも誰もやっていない高みを目指したい。ダメでもやりきりたいと思います」。 そう言われる片折さんの目には、覚悟の炎が燃えていた。 

「大丈夫、必ず繁盛店になりますよ」と、僕は心の中でつぶやいたが、その通りに、ほどなくして予約の取りにくい人気店となった。

あっという間に繁盛店に。自然への感謝を湧き起こす料理

その時にいただいた魚料理は、今でも忘れられない。 3日間寝かせて、食べる時間に合わせて骨から外したというブリは、カマの部分をお造りにして、ワサビを少しだけ載せて出してくれた。 

クリッ。音が立つかのように痛快に歯が入っていく。だが、その後に歯は、すうっと引き込まれる。脂はのっているが、いやらしくない。脂が澄んで締まっている。その態が、どうにも色っぽい。

 一方、寝かせて3日目だというフグのお造りは、雑味が微塵もなく、最初の一口は無味と感じるほど透き通りながら、噛むほどに旨みが湧き出てくる。これほどのフグのお造りは、東京でもいただいたことがない。これこそが、石川県の養分が産んだ味なのだろうか。

これまた一番のものを仕入れたという焼きガニは、なんとエレガントなのだろう。まだ海の中にいるかのように清らかで、みずみずしく、透明感のある甘みが、ポタリポタリと舌に落ちていく。白子焼きも艶やかながら、どこまでも清い。 

いい意味でしつこさや押し出しの強さがなく、精の神秘だけを教えながら、とろりと官能にしなだれてくる。どの料理にも自然の気高さがある。それゆえに、食べ進むうちに自然への敬いと感謝を湧き起こす。

里芋の優しさを引き出した理想の煮っころがし

去年の12月に訪れた時に最後に出されたのは、里芋の煮っころがしだった。

コースが28,000円の割烹で、こういう料理を出す店はなかなかない。今、野菜の炊き物を、単体で出す店も少ない。たとえ出したとしても、どうしても上に金目のものを置きたがる。しかし、この芋を食べればわかる。この里芋の炊き物には、振り柚子さえいらない。 

歯を入れれば、すうっと表皮から中心まで均一に歯が入っていく。それでいながら、軟らかすぎることなく、里芋の生物としての尊厳を感じる歯ごたえがある。味付けは、これ以上でもなく以下でもなく。洗練されすぎてもなく、野暮ったくもなく。心をほっこりと温める里芋の優しさを引き出しつつ、締めとして余韻を引きずりすぎない味にとどめている。これこそが、家庭では到達できない味わいである。大間のマグロもキャビアも、松葉蟹も鱧も松茸も、フグもフォアグラも花山椒もA5の牛肉も、いいかもしれない。でも僕は、こういう野菜料理に出合うために、割烹に出かけたい。素直にそう思った瞬間だった。

冬の味覚を存分に盛り立てる「片折」の12月の献立

12月のその日の献立を以下に記します。

1.「すっぽんのお粥」 熱く深い滋味が喉を開く。
2.「香箱蟹」肉体には、噛んではいけない気配の軟らかさがあって、どきりとさせられる。そして、儚く甘い。外子はプチプチ弾み、内子はねっとりと歯にしがみつく。そして、ミソがてろんと舌に甘えてくる。そのミソとて、雄のそれに比べれば少なく、淡く、繊細な美しさを宿している。
3.「アンコウとカブのお椀」アンコウの筋肉質のブリブリとした食感とカブの優しさの出合いがみごと。飲み進むうちに、次第にアンコウの香りがおつゆに満ちていく。
4.「ヒラメお造り」 これまた味が澄んで、噛むごとに深まっていく。
5.「あん肝酒蒸し」  こんなあん肝には出合ったことがない。まるで生きているような、味にみずみずしさがあり、雑味が一切ない。
6.「氷見迷い鰹のたたき」
7.「富山、山田村の網どり鴨炭火」

8.「焼きズワイガニ」カニの中の汁が沸騰している。この上なく肉感的な味わいが官能をくすぐる。
9.「大根の風呂吹き金沢の安原産」なんと綺麗な味だろう。
10.「金沢金石港のズワイガニ蟹味噌つけ」
11.「白ご飯」
12.「カニご飯」
13.「鯖寿司」
14.「葛焼き」  去り際が美しい。

マッキー牧元

マッキー牧元

1955年東京出身。㈱味の手帖 取締役編集顧問 タベアルキスト。日本国内、海外を、年間600食ほど食べ歩き、雑誌、テレビなどで食情報を発信。「味の手帖」「朝日新聞WEB」「料理王国」「食楽」他連載多数。三越日本橋街大学講師、日本鍋奉行協会顧問。最新刊は「出世酒場」集英社刊。

片折

住所:
石川県金沢市並木町3-36
TEL:
076-255-1446
アクセス:
バス停「橋場町」より徒歩7分程度
営業時間:
昼/12:00~14:30 (水曜・日曜のみ) 夜/17:00~19:30、20:00~22:30の2部制
定休日:
不定休
支払い方法:
クレジットカード可 (VISA、MASTER、JCB、AMEX、Diners)
URL:
https://kataori.jp/

更新: 2020年2月12日

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