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「また来るぞ」と唸らせるイタリアン 新潟・三条「IL RIPOSO(イル・リポーゾ)」|マッキー牧元の美味しいから旅をするのだ!

新潟県三条市でしか味わえないイタリアン「イル・リポーゾ」

新潟県三条市。この地を訪れなければ、食べることの叶わないイタリア料理がある。それが住宅街でひっそりと営まれる「イル・リポーゾ」である。

店主の原田誠シェフは東京のイタリアンの名店「アルポルト」で修業後、故郷の新潟に戻り、2010年に店を開かれた。イタリア語で「憩い」を意味する店名は、祖父が創業した「憩食堂」に想いを重ねてつけたのだという。常に地元の生産者を巡って共によき食材を開発するだけでなく、「ラボクチ」という、新潟県のシェフたちと組んだ料理研究会(発起人は原田シェフ)も行っている。それでは10月にいただいた料理をご紹介しよう。

「Prima di tutto unantipasto di riscaldamento」〜まずは、ウォーミングアップの前菜」〜紅ズワイガニ はるかジャガイモのムース シソのソース、ミョウガや大葉、穂紫蘇〜

カニの淡い甘みとジャガイモの優しい甘みが溶け合い、ゆるりと食欲を刺激する。穏やかでいて、ほのかに優美なスタートである。

「Un toffo mare  海へダイブ」〜0度で1週間寝かせた新潟県新湊の甘鯛をポワレ レモン泡と甘鯛のソース とネギのソースを添えて〜

その甘鯛は潤っていた。人間がその名をつけたことを証明するかのように、エレガントな甘みを宿しながらそっと潤っている。白い肌を今まで見せたことがないような薄桃色に染め、潤っている。0度で1週間寝かせたことによって、命の雫が膨らんだのだろうか……。カリリと香ばしく焼かれた皮を噛めば、歯は甘鯛の肉に吸い込まれてうっとりとなる。

豊潤にして繊細なる甘みが、口を満たす。完全なる美と色気が、張り詰める。

「ああ」

思わず、歓喜の嗚咽が漏れる。そこへ、昆布とアサリで淡く抽出したという出汁を合わせる。異なる海の滋養と出合った甘鯛の味が、さらに膨らんでいく。

目を閉じれば、さながら新潟の海の底に自分が沈んでいるような感覚がした。

「la passione de ll' agricoltare 親愛なる農家の情熱」〜糸魚川 越の丸茄子 ストラッキーノチーズと玉ねぎのピクルス 豚と牛のラグー かぐら南蛮のオイル〜

「越の丸茄子」は、ナスの作付け日本一の糸魚川で長く愛されてきたナスで、東京の高級料亭などで扱われているという稀少なナスである。それは、なんとも甘く、きめ細かい。ムースのようである。その甘みが、豚肉や牛肉に、チーズに優しくしなだれ、肉やチーズの味わいに輝きを与えている。

その甘みを、かぐら南蛮(新潟県の山古志村で栽培されてきた唐辛子の在来種。肉厚でゴワゴワした、ピーマンのような外観が神楽面に似ていることから名付けられた。地元では味噌漬けなどにして使う)の辛味が引き締める。

「Ci facciamo due Spaghil パスタ食べましょう」〜新潟県栽培きのこのパスタ アルバ産白トリュフ〜

むせ返るような白トリュフの香りの中から、地元で栽培された様々なキノコの香りが立ち上がって、体全体を包み込む。目を閉じれば、新潟の山奥にいるかのような感覚を呼び起こす料理である。

「Un altimo piatto!? もう一皿!?」〜魚介の出汁のリゾットと体温調節の鮭 笹川流れの塩とコラトゥーラ〜

この料理に使われている「笹川流れの塩」とは、新潟県の最北端にある「笹川流れ」と呼ばれる美しい海岸線で作られている塩のこと。

旨みがさりげないのだが、実に深い。

体温調節の鮭とは、43度に保った湯で加熱した鮭である。フランス料理のミキュイ(半生状態)に似ているが、それより少し高い温度で鮭を加熱している。

そのため生のようにしっとりとしながらも、繊維がホロリとくずれていく食感があり、妙な色気がある。それも長く鮭を愛してきた新潟人ならではの、長所の活かし方なのだろう。

その鮭と、滋味がたっぷりと染み込んだ米を合わせて食べると、しみじみと美味しい。イクラもしつこくなく、きれいな甘さを広げて、鮭と米の関係に調和している。

「Adesso e il momento 今はお肉の時間です」〜新潟和牛ランプA4 梨のピクルス セップ 玉ねぎピュレ〜

肉汁あふれる新潟和牛のランプを、梨のピクルスの甘い酸味が軽くいなし、再び肉に気持ちを向かわせる。その仕掛けが心憎い。

「Dulcis in fundo 最後の〆はデザートで」〜三条産バターナッツかぼちゃのプリンとヘーゼルナッツのジェラート〜

バターナッツかぼちゃとヘーゼルナッツという、ほっくりとした甘いもの同士が出合う暖かさに満ちたデザート。どこか懐かしさがよぎる味わいが心に暖かい。

「イル・リポーゾ」原田シェフが見せるのは、新潟の食材の底力

紅ズワイガニとはるかジャガイモ。甘鯛。丸茄子やかぐら南蛮と豚。きのこに鮭。牛肉と梨。バターナッツかぼちゃにイチジク……。

新潟の里と海の恵みが交差する。だが、そこにはけっして都会のような派手さを感じないのは、雪国新潟県民のしぶとさだろうか。だから、料理を食べて、よく噛んで、噛んで、味わってほしい。食べるほどに、ゆっくりと味わい、嗅ぐごとに、新潟の食材を愛し、深め、広めようとしている原田シェフの熱情が伝わってくる。それは、自己の主張を加え過ぎることなく、静かに食材に寄り添いながら花を開かせる料理である。雪の下で春を迎える植物のような静かな強靭さがあって、心を打つ料理である。

豪雪の時には、どんな料理に出合えるのだろうか……。

春や夏は、どんな食材が登場するのだろうか……。

この店で料理をいただくと、東京ではうかがい知れなかった、新潟食材の底力を痛感し、違う季節への期待が高まっていく。

そして、「もう一度来るぞ」と自分に誓うのだ。

マッキー牧元

マッキー牧元

1955年東京出身。㈱味の手帖 取締役編集顧問 タベアルキスト。日本国内、海外を、年間600食ほど食べ歩き、雑誌、テレビなどで食情報を発信。「味の手帖」「朝日新聞WEB」「料理王国」「食楽」他連載多数。三越日本橋街大学講師、日本鍋奉行協会顧問。最新刊は「出世酒場」集英社刊。

IL RIPOSOイル・リポーゾ

コースは5500円と7500円(税サ別)の2種類が用意されている。完全予約制なので事前に予約を。

住所:
新潟県三条市島田2-5-21
TEL:
0256-33-4411
営業時間:
18:00~21:00(完全予約制)
定休日:
不定休(水曜)
支払い方法:
クレジットカード可 (JCB、AMEX、VISA、MASTER)

更新: 2019年12月17日

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