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パーク ハイアット 東京のシェフが巡る、四国の東門・小松島の美味しいもん 後編

シェフと資材部が一緒に日本の食材を探す、小松島市への旅

左から田口マネージャー、三原さん、市塚シェフ。

「四国の東門」の別名を持つ徳島県小松島市。美しい山々と一級河川、そして紀伊水道の恩恵により、山海の幸に富む豊かな土地として知られています。その小松島市を、「パーク ハイアット 東京」のオールデイダイニング「ジランドール」の市塚学シェフと、ホテル全レストランの食材調達を担う資材部の田口朋浩マネージャーが食材探しのために訪れました。米、野菜、菌床椎茸、ちりめんじゃこなどの“小松島の美味しいもん”に出合った前編に引き続き、後編をお届けします。

小松島市が誇る、海の高級食材・鱧

小さな顔に似合わず、丸々と太った黄金の長い身。鱧といえば、京都の高級料亭ではなくてはならない夏を代表する食材です。小松島市が面する紀伊水道は、脂が乗って良質な肉質の鱧がたくさん獲れる、全国でも有数の漁場。市塚シェフと田口マネージャーは、鱧の水揚げ見学に「小松島漁業協同組合」の三原秀之さんを訪ねました。

「紀伊水道の中層階を底曳き編み漁船を使って漁をします。獲れた鱧はお互いに嚙み合って傷つけたりしないよう、船から「そうめん流し」という装置を使って直接水槽にたどり着くように工夫しています」と三原さん。なるほど、気の荒そうな鱧たちが、なすすべもなくスルスルと水槽に辿り着く様子が見られます。それからは、みんなで協力して急いで選別作業。この漁港では、200グラム以下の鱧は海に返すように決めているとのこと。資源保全のために課したルールです。

選別が終わった鱧は、小松島漁業協同組合が全国に先駆けて導入した鱧専用の水槽車へ。鮮度を保ったまま、関西方面に出荷されていきます。

「夏が旬と思われがちな鱧ですが、産卵に向けて栄養を蓄えようとする秋の鱧もとても美味しいです」と三原さんは語ります。「鱧=夏のもの」との思い込みは、もったいない。もっと鱧のことを全国の人に知ってもらい、美味しく食べてもらいたいと三原さんをはじめ、漁協組合の人たちは願っています。

小松島漁業協同組合
TEL:0885-33-1122
こまつしまはもサイト https://www.city.komatsushima.lg.jp/hamo/

鱧料理のハードル、骨切りをみごとにクリアしてブランド化

水揚げの見学に続いて市塚シェフと田口さんが向かったのは、漁港から目と鼻の先にある食肉加工会社「とり信」。同社は若鶏を中心に、様々な食材を加工・商品化する小松島を代表する会社の一つです。「鶏肉の加工・製品化の過程で培った、衛生管理の技術を鱧の加工にも取り入れています」とは、同社代表取締役社長の大西義信さん。

小松島漁港で水揚げされた鱧はこちらにダイレクトに運び込まれ、加工作業が行われます。鱧料理の最大の難関は、何と言っても皮を残しつつ骨を細かく切る「骨切り」。和食の料理人ならば腕の見せどころですが、そうでない人にはハードルが高いもの。その鱧の骨切りをみごとに機械化したのが「とり信」で、その過程は次の通りです。

①水圧式ウロコ取り機を使い、高圧水流でぬめりを取る。
②中骨取り開き機で、鱧を開き中身を取る。この間、たった数十秒!
③手作業で背びれを取る。
④鱧骨切り機で、一定の幅を保ちながら骨切り。
⑤用途ごとに加工してパッキング。冷凍へ。

こうして人の手をほぼ介することなく加工された冷凍の鱧を、フレンチや中華などのレストランをはじめ、一般家庭に届けることに成功。手軽に鱧料理が楽しめると好評で、小松島市では学校給食の食材やふるさと納税の返礼品としても採用されています。鱧の学校給食とは、なんとも贅沢で羨ましい限りです。

とり信
TEL:0885-35-0375
http://kk-torishin.co.jp/

明治30年から続く老舗の醤油蔵「濱醤油」

様々な種類の醤油のテイスティングをしてくれた濱真理子さん。

風格のある醤油蔵に近づくと、なんとも芳しい醤油の香りが漂ってきました。ここは1897年(明治30年)創業の「濱醤油醸造場」。専務取締役の濱真理子さんが案内してくれました。

「国産の無農薬栽培大豆と小麦、天然塩だけで醤油を仕込みます。醤油はもちろんですが、味噌や生麹など、発酵食品のよさをもっと知ってもらいたいです」と濱さんは語ります。

醤油蔵で仕込み体験をする市塚シェフ。醤油の他にも、だし醤油やすだちぽん酢などもラインナップ。

壁には「変えないという進化」と題された額が飾られ、そこには次のように記されていました。

醤油・味噌造りにおいて「発酵酵母の神秘的な力」こそが「源」と私は考えます。当醸造場は、明治30年創業以来百十数年、初代より継承されてきた「熟成」に拘り、「長期熟成古式醸造」を頑なに守り、製造する技に執着せず育て上げる技に惜しみなく時間を費やしてまいりました。短期大量生産では味わうことのできない「ほんまもんの味」をご賞味下さい。

全国的に醤油蔵の数が減少傾向にある中、この言葉は自らを律し、良いと信ずるものを届けたい、という濱醤油の強い志の表れでしょう。様々な種類の醤油のティスティングの折に濱さんの口から語られる醤油づくりのプロセスや特徴に、醤油造りのプロとしての豊富な知識と誇りを感じることができました。

濱醤油醸造場
TEL:0885-37-1128
https://www.oshouyu.com/

将来の有機農業の担い手を育てる取り組み、「とくしま有機農業サポートセンター」

地域全体で助け合い、小松島ブランドを発信していこうという姿勢が各所で見られる小松島にあって、それをさらに象徴する施設が「とくしま有機農業サポートセンター」です。ここは、有機農法での農業を目指す人たちが住み込みで学べる体制を整える、全国でも珍しいサポートセンター。徳島県内のみならず、県外からも希望者が絶えないのだとか。

採りたてのトマトを氏脇英也さん(とくしま有機農業サポートセンター センター長)から受け取り、早速試食する市塚シェフ。

同センターは有機農業技術者を育てることに加えて、「人と自然の関係を再構築する」「有機農業技術の普及を通じて田園社会を守っていく」というミッションを掲げます。畑での実習はもちろんのこと、教室内での講義では農業ビジネスを成功させるためのノウハウなど、実践型のカリキュラムが組まれています。

とくしま有機農業サポートセンター
TEL:0885-37-2038
https://www.komatushimayuuki.com/support

サポートセンターを地元農家もサポート

「とくしま有機農業サポートセンター」と連携を取って研修生をサポートするのは、地元のリアルな農家「阿波農産」です。同社のコンセプトは、「生物多様性農業の推進」。農薬や化学肥料をできる限り控え、鳥や虫などの生き物が暮らせる田んぼづくりをめざしています。また、野菜づくりでは、土壌分析に基づく堆肥設計やミネラルバランスを最適に施肥する技術など、クオリティを上げながら農業を営むノウハウを研究しています。

そんな「阿波農産」は、「有機農業サポートセンター」の研修生に実習授業をしたり、卒業生に農業の実践の場を提供するなど、有機農法の担い手を指導することにも熱心です。就農先が決まるまで研修生を雇用することもあるのだとか。

同社が掲げる「生物多様性農業の推進」が、こうして多くの就農希望者に伝授されることは、日本の農業の未来の大きな一助となるに違いありません。

阿波農産
TEL:0885-37-0955
http://www.awanousan.com/

1泊2日の食材探しの旅の終わりに……

初日の夜には、小松島の“美味しいもん”を楽しめる懇親会が開催されました。

1泊2日と駆け足で巡った“小松島の美味いもん”。旅を終えて、市塚シェフはこう語ってくれました。「最先端技術を駆使してグローバルな視点で運営される農園から、昔ながらの伝統的製法を守る醸造所まで、多彩なスタイルで取り組む方々のお話を伺い、大変感銘を受けました」。田口マネージャーからは、「それぞれの食材に込められた熱い思いをお客様に伝えていく使命を感じました」との感想を伺うことができました。

小松島の空、空気、水、土、そして、ここに暮らす人たち……。この“小松島コンビネーション”が育む食材の独自性とクオリティは、現地を訪れてこそしっかりと肌で感じられるもの。市塚シェフと田口マネージャーの感想からは、まさにそんなニュアンスが感じられます。

また小松島にも、トップクラスのホテルのシェフと資材調達マネージャーから数多くの発見とヒントがもたらされたことでしょう。パーク ハイアット 東京と小松島の“融合”が今後どのように発展していくのか、今から楽しみです。

ジランドール

住所:
東京都新宿区西新宿3-7-1-2 パーク ハイアット 東京 41F
TEL:
03-5323-3459
営業時間:
朝食6:30~10:30 (土日祝は11:00まで)、ランチ11:00~15:00(土日祝は11:30〜)、ライトスナック15:00~17:00、ディナー17:00~21:30
URL:
https://restaurants.tokyo.park.hyatt.co.jp/grd.html

写真・広瀬 美佳 文・FOOD PORT.編集部

更新: 2019年11月26日

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