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マッキー牧元、完走! 青森ソース焼きそばトライアスロン 青森市編

実は相当な麺好き、青森県人

青森県ソース焼きそばトライアスロンの第2弾は、青森市内のソース焼きそば専門店5軒を食べ歩いた報告をしたい。

地元の人たちはめいめいに贔屓の店があって、聞くと「あそこがいい」「ここがいい」と熱弁を振るう。その言葉の隅々に、いかに青森県の人がソース焼きそばを愛しているのかが伝わってくる。元々、青森県人は相当な麺食いらしい。

それではトライアスロンを再開しよう。

これぞソース焼きそば! 上品なお母さんが店主の「小鹿ヤキそば店」

1軒目は、青森市金沢にある創業48年の「小鹿ヤキそば店」である。

なんと朝8時からやっている。つまり朝食がわり、“朝ソース焼きそば”という需要があるのである。

2代目のお母さんは白髪で、とても上品な雰囲気をお持ちの方だった。鉄板の上で、ソース焼きそばを巧みなヘラさばきで作り始める。キャベツと人参、次に豚肉、太麺、うま味調味料、ソースといった具合である。

地元の製麺店「原田製麺」製の太麺は断面が少し四角くなっていて、それが唇を通り過ぎる時に存在感を示す。麺はややもちで軟らかく、味わいはソースの味が前面に出て実にシンプルである。なにか旨みを欲張らないというか、凝り過ぎないというか……「ソース焼きそばってこんなもんでしょ」という潔さがある。

上品な顔立ちをしたお母さんと同じような、てらいのなさが身上である。そのシンプルさに少し追いソースをしてやると、下品さが加速していい。かき氷も置いてあり、交互に食べる人もいるという。熱い、冷たい、の繰り返しも面白いかもしれない。

「硬貨を握りしめた小学生が昔はいっぱい来たけど、今は集団下校になって来なくなったの」と語るお母さんの顔が寂しげだった。

上品な顔立ちのお母さんの撮影はNGで残念。メニューはシンプルな焼きそばと焼うどんのみ。焼きそばは、大でも450円(税別)とリーズナブル。

小鹿ヤキそば店
住所:青森県青森市金沢4-16-41
TEL:017-776-2377
営業時間:8:00〜20:00
定休日:不定休
支払い方法:現金のみ

東の横綱「後藤食堂」。母と息子、それぞれの味

次に訪れたのは、「東の横綱」と呼ばれる昭和39年創業の青森市茶屋町「後藤食堂」である。ちなみに西の横綱は「やきそば 鈴木」となる。

なぜ東、西と呼ばれるかというと、ソース焼きそばの発祥に起因する。青森のソース焼きそば文化の発祥は、市の中心部を流れる堤川沿いに終戦直後から昭和30年代中頃までにあった屋台とされ、この堤川の両側に古くからある「後藤」と「鈴木」を、東西の横綱と呼んで愛し続けているのだという。

さて、「後藤食堂」では「卵焼きそば並」400円を頼んでみた。巧みな手つきで作る、こちらのお母さんも上品なお顔立ちをされている方である。所作もきれいで、お花のお師匠さんと言われても違和感がない、品が漂っている。

「後藤食堂」の定番「卵焼きそば並」400円(税別)

ここでは中華鍋を使い、ラード、肉、キャベツ、麺といき、再びソース、うま味調味料、前に作っておいた麺にキャベツといく。見ていると、大盛り8人前を一気に作り上げていらっしゃった。

「3回腱鞘炎をやって、今は治りました」と笑われる。

面白いのは2回に分けて入れるキャベツで、しんなりとシャキッの両方の魅力を味わってもらおうという配慮だろう。 また、前に作った焼きそばと新しい焼きそばを混ぜる点もユニークで、よく見ると濃く味がしみた麺と、今ソースをまとったばかりの麺という2色の麺が混ざっている。

腱鞘炎の難を3度乗り越えたベテランの手さばきは見事。

味わいはソースの味がストレートに出たテキ屋風で、「小鹿ヤキそば店」と同じ原田製麺製なのにこちらは中細麺で、ネチッとした食感がクセになる。また、途中から目玉焼きの黄身をつぶして混ぜると、味がまろやかになって楽しい。さらに卵の上に追いソースをかけて、それを混ぜ込んでもいい。55年間やられているが、最初は他店を食べ歩いて研究したという。

そして、なんと20年間値段据え置きだそうだが、「昔は大盛りの多めは無料だったけど、今はいただくようになりました」と、申し訳なさそうにお母さんが言う。こういうところも、青森県人に愛される所以なのだろう。

今は息子さんも一緒にやられていて、試しに息子さんが作った焼きそばをいただいてみた。お母さんのはソースの香りと味が立ち上がってくる感じで、息子さんのはソース風味が丸い。息子は息子の味である。同じ素材と調味料でも、人によって味が違う。これもまた、ソース焼きそばの深さだろう。

お母さんは達筆で、店には品書きを書いた短冊が貼られている。ソースと客の愛着が染み混んだ達筆な品書きに、惚れました。

「後藤食堂」の次を担う息子さん。

後藤食堂
住所:青森県青森市茶屋町18-1
TEL:017-741-6067
営業時間:10:00〜18:00(土曜日は17:30まで)
定休日:月・火曜
支払い方法:現金のみ

青森焼きそばの進化系「自家製麺 焼きそば屋しょう太」

さて老舗系を2軒廻った後は、新進気鋭の焼きそば店に向かった。青森市大野前田の「自家製麺  焼きそば屋 しょう太」である。

店主はソース焼きそば屋を目指して、原田製麺所で製麺方法を学び、独立したという。自家製麺は無添加である。理由を聞けば「子供も食べる料理なので、そうしました」とさりげなく言う。

ソースはどうしているかと尋ねると、「ソースも3種類ブレンドして、りんごと玉ねぎを入れて煮ています」と言う。

これは只者ではない。

オリジナルのソース焼きそば「辛焼きそば 並」450円を頼んでみた。「清水森南蛮」をペーストにして入れているのだという。食べれば、ソースの甘辛さを辛味が引き締め、辛さの奥から南蛮の青い香りが漂ってくる。これはクセになるぞ! さらに卓上に置かれた季節のフルーツ酢をかけてみる。その日はライム酢で、その爽やかな香りを伴う酸味が加わり、俄然味わいが深くなった。

季節のフルーツ酢が各テーブルに。

見ていると、鉄板上で豚とキャベツ、麺を別々に炒めて合わせている。その丁寧な仕事で、麺と具材の味が際立つ。聞けば、季節の野菜を取り入れた「野菜焼きそば」やエビの粉と赤唐辛子入りの「エビ辛」など、惹かれるメニューも他にある。「ソース焼きそばトライスロン」でなかったら、これから後2軒行く予定でなかったら、注文していただろう。

「辛焼きそば 並」450円(税別)に「目玉焼き」50円(税別)をプラス。

夜は予約で鉄板焼きコースを3,500円からやっており、ソース焼きそばでは、ニラやニンニクの芽とかを使ってやっているという。ううむ、夜も行きたいなあ……。

青森県のソース焼きそば文化の奥深さ、今後の進化性を感じた店であった。こうして3軒食べ歩いて気になるのは、麺の存在である。

自家製麺 焼きそば屋 しょう太
住所:青森県青森市大野前田68-134
TEL:017-711-8169
営業時間:11:00〜18:00(麺が切れ次第終了)、18:00〜てっぱん焼や屋
定休日:木曜
支払い方法:現金のみ

変わり種、カレーソースをかけるソース焼きそば「原田製麺」

それならば、と4軒目は原田製麺が自らやられている、青森市駒込見吉の「原田製麺」へと向かった。原田製麺は、市内の焼きそば店17店舗ほどに麺を卸している。

こちらの作り方は、ラードで豚こま切れを炒め、キャベツを炒め、うま味調味料を入れ、麺、そしてソースを3回に分けて入れ混ぜ、完成である。

面白いのは、カレーである。

カレーというのは、別注文でカレーソースを頼めるのである。見ると常連客は、皆ソース焼きそばにカレーをかけて食べているではないか! 早速我々もやってみた。

ふむふむ、カレーをかけると、ソースの味が少し遠のいていく。強いカレー香という扉の向こうに、ソースの香りと味が隠れている感じである。さらに不思議なのは、カレーと青のりの香りが合うことである。この、カレーを食べているのだか、ソース焼きそばを食べているのかわからない、混沌とした気持ちがいい。

「焼きそば(並)」350円(税別)、「カレーソース」は150円(税別)。

さて麺は、今回巡った店の中で最もコシが強く、ズルルと麺が口に入ると、シコシコと噛む喜びが待っている。そして、ここが肝心なのだが、さすが製麺所直営だけあり、すべての店の中で麺の量は一番多いのであった。

原田製麺
住所:青森県青森市駒込字見吉169-1
TEL:017-744-5655
営業時間:11:00〜15:00
定休日:無し
支払い方法:現金のみ

東の横綱、「やきそば 鈴木」のお母さんも美しかった

「青森ソース焼きそばトライアスロン 青森市編」最後の店は、東の横綱と称される青森市青柳にある創業昭和36年の「やきそば 鈴木」である。3代目となるこちらも店主はお母さんで、お茶の先生といってもいいような、気品がある方であった。

青森市に美人が元々多いのか、はたまたソース焼きそばのお母さんに素敵な品のある方が多いのかはわからない。しかし今回、青森市で出会った3人のお母さんはとてもしとやかで、一般的に思い浮かべる「ソース焼きそば屋のお母ちゃん」とは、一線を画している。

原田製麺の太麺をおたふくソースで仕上げる。

さて、「やきそば 鈴木」のソース焼きそばの味は丸い。原田製麺製の、やや四角く太いシコッとした歯ごたえのする麺にソースが絡むのだが、穏やかな甘さがあって、妙な懐かしさが脳をよぎる。他とは違って、広島のおたふくソースの甘うまい味わいが、太麺とよく合う。5軒目なのにスルスルと胃袋に収まってしまう優しさがある。

「焼きそば(中盛り)」300円(税別)。「特盛」でも400円(税別)! お母さんが握ったおにぎりも絶品。

それはまるで「ソース焼きそばトライスロン、お疲れ様でした」と言われているような思いやりがあって、胃袋を穏やかに温めるのであった。

やきそば 鈴木
住所:青森県青森市2-8-9
TEL:017-777-8166
営業時間:平日10:30〜18:30(土・日曜は17:00まで)
支払い方法:現金のみ

マッキー牧元

マッキー牧元

1955年東京出身。㈱味の手帖 取締役編集顧問 タベアルキスト。日本国内、海外を、年間600食ほど食べ歩き、雑誌、テレビなどで食情報を発信。「味の手帖」「朝日新聞WEB」「料理王国」「食楽」他連載多数。三越日本橋街大学講師、日本鍋奉行協会顧問。最新刊は「出世酒場」集英社刊。

写真:広瀬 美佳 文・FOOD PORT.編集部

更新: 2019年11月5日

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