食のプロが訪れた島根県石見 前編〜緑豊かな清流の里

石見と書いて「いわみ」。島根県西部地方の名称で、鉱山遺跡としてアジア初の世界遺産に指定された石見銀山でも有名です。北は日本海、南は中国山地に面し、海の幸・山の幸が一年を通して豊富なこの土地を、東京をベースに活躍する3人の料理人が訪れました。

羽田空港から萩・石見空港へ

石見の食を巡る旅の参加者とは、「細小魚」店主・大貫淳一さん、「ななかぐら」オーナーシェフ・内田奈々さんと「青山16℃」店主・天田賢二さん。大貫さんは六本木で鮨屋を、内田さんは神楽坂で会員制の料理店を、そして、天田さんは表参道でバーを営んでいます。一行は、羽田空港から空路、萩・石見空港へ。そこからバスに乗り込み、2泊3日のツアーがスタートしました。

水質日本一に選ばれた、高津川の恵み

最初に訪れたのは、益田市と津和野町。この地域をゆったりと流れる高津川は、一級河川では全国で唯一ダムのない川として知られ、国土交通省が実施する水質検査では、日本一に何度も選ばれています。

そんな清流の恵みの一つは、鮎。解禁となる6月から9月には、友釣りに挑む釣り人が大勢ここを訪れます。高津川漁業協同組合で3人を迎えたのは、事業課の篠原史朋さん。「友釣りした鮎を生簀で一晩泳がせ、翌朝に締めて発送します。刺身でも食べられますよ」。

高津川漁業協同組合事業課の篠原史朋さん。

落ち葉やごみなどの不純物が少なく、澄んだ水が流れる高津川。ここの良質な苔を食べて育つ鮎は色合いもよく、質感や味が養殖とは比べ物になりません。「シュッとした体躯はアスリートのよう」とも。飲食店への出荷では、なるべく希望のサイズをそろえてくれるそう。「鮎を刺身で食べられるとは驚きですね」と、天田さんも興味津々の様子。

高津川漁業協同組合
住所:島根県益田市神田イ614
TEL:0856-25-2911
URL:http://www.takatugawa.or.jp

高津川の清流で、美しい苔を食べて育った鮎。

島根わさび〜高津川のもう一つの恵み

全国的に意外と知られていない、この地区のもう一つの名産がわさび。「島根わさび」として、ブランド化されています。わさびの成長には、冷たい水温と水量が一定であること、透水性の高い土壌であること、柔らかな日差しであること、などの自然条件が必須。この「島根わさび」も、高津川の恩恵を最大限に受けています。

鮎の塩焼きとわさび。いずれも高津川から恩恵を受けている。

高津川の上流、津和野町日原地区のわさび田に案内してくれたのは、「フロンティア日原」の常務取締役、村上一真さん。同社は、生産者が手塩にかけて育てたわさびを引き受け、生わさびはもちろん、醤油漬などの加工品にして販売しています。「島根わさびの特徴は、辛みの中にあるほのかな甘み、新緑の香り、そして粘りです」と村上さん。

左から、内田さん、大貫さん、村上さん、そして、天田さん。津和野町のワサビ田にて。

早速その味を、津和野駅でSL列車の運転日にのみ販売される幻の駅弁「鮎弁当」と味わうことに。大貫さんが手慣れた様子で擦り下ろした瞬間から、わさびの爽やかな香りが鼻腔をくすぐります。また、一緒に出された「わさび醤油漬」は、ご飯やお酒が止まらなくなる絶品。津和野のお土産にぴったりです。

フロンティア日原
住所:島根県鹿足郡津和野町池村1997-8
TEL:0856-74-1725
URL:http://www.shimane-wasabi.jp/

島根県内で最大のトマト産地、益田市

翌日は、高津川下流域のトマト産地・益田市へ。女性が活躍する合同会社「農夢」の中島明日香さん、代表社員の田原裕司さんを訪ねました。

ハウスに入る前に、「ここでスリッパに履き替えてください」と案内されて驚く3人。「トマトを虫や病気から守るためです」と中島さん。地面にはシートが張られ、草どころか土も見えないという景色にさらに驚く3人。「養液栽培といって、杉や松の樹皮で作った培地に養液を流してトマトを育てます」。

清潔なハウスの中でトマトについて説明する中島さん(写真右)

夏野菜のイメージが強いトマトですが、「農夢」の出荷は9月から6月にかけて。酸味が控えめで肉質が硬く、種が少ないのが特徴とのこと。内田さんは、「生でも美味しいですが、煮込みにも適していますね。型崩れしにくいので、セミドライトマトにするのもいいです」と教えてくれました。

農夢
住所:島根県益田市幸町5-12
TEL:0856-31-1822

ふるさとを荒地にしたくない! 一念発起で農家に転身

続いて一行が訪れたのは、浜田市弥栄町の「小松ファーム」。

代表取締役の小松原修さんは、10年前はごく普通のサラリーマンだったそう。「この土地が大好きで……。年々、遊休化して寂れていく農地を見るのが辛かったんです」と語ります。

一念発起して農家に転身。農業について先輩から学び、日夜研究を重ねた結果、今では10の農家を束ね、共同出荷でスーパーや卸、生協をはじめ、全国各地に野菜を出荷するまでになりました。育てているのは、ほうれん草や小松菜などの葉野菜を中心に、原木しいたけ、人参、ピーマンなど。約48棟のハウスで年間を通じて様々な野菜を育てています。

農林水産省が認定する「有機JASマーク」を全ての野菜で受けている「小松ファーム」。「野菜そのものが強いので、味も良くて長持ちです」と言いながら、冷蔵庫で保存していたピーマンを大貫さんたちに手渡します。一口かじった3人は、一様に「甘い!」と目を見張りました。食感の良さ、フレッシュな香りも驚きの一言!

「最近は、一度に多品目の野菜を注文する業者が増えています。良い土を育て、1つのハウスを年間7回転させて様々な野菜を育てることで、狭い面積でも経営が成り立っています」。小松原さんのような若手農家の姿に、再生を試みようとする農業分野の転換期の糸口を見たようでした。

小松ファーム
住所:島根県浜田市弥栄町小坂332-2
TEL&FAX:0855-48-2415

伝統工芸「石見焼」の窯元「石州宮内窯」

食の旅の合間に、料理とは切っても切れない間柄、器の窯元を訪れました。

「石州宮内窯」は、1970年から続く窯元。「石州」と呼ばれるこの地で採れる、塩分に強く、耐水性、耐酸性を兼ね備える土を使って、大型の甕や日用雑器を作っています。茶色の地に刷毛でさっと模様をつけた甕は、昔は各家庭に備わる必需品でした。現在は、そうした甕に加えて、和食器・洋食器の分野にも幅を広げ、用の美を備えた暮らしを彩る器として、多くの人に親しまれています。

「宮内窯」では直売所も併設。窯元の宮内孝史さんのお話を聞きながら買い物を楽しめます。

お父様から事業を引き継いだ石州宮内窯の宮内孝史さん。

石州宮内窯
住所:島根県江津市二宮町神主2211-3
TEL: 0855-53-0304
http://miyauchipottery.com/

3人の食のプロと巡る石見。その後編も近日公開予定です。

(フェア情報)
石見地域の食材が東京で食べられる!「石見レストランフェア」開催
参加した3名の料理人が、食材はもちろん、風土や生産者などに触れて感じたことを東京でプレゼンテーション。石見地域の食材の魅力を味わって!

9月30日まで
細小魚
ななかぐら ※通常は完全紹介制。本企画限定で利用可能 ※来店時は事前に各店へお問合せください。

島根県 しまねブランド推進課

TEL:
0852-22-5128

更新: 2019年9月21日

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