安全・安心でおいしい「自然熟成豚」 長谷川自然牧場のこだわり

10か月飼育の子豚たちはピンク色で健康体そのもの

豚舎に入るといっせいに子豚たちがこちらを見上げる。同時に柵内から人懐こく集まってきた。ここは青森県鯵ヶ沢にある「長谷川自然牧場」。牧場内からは「津軽富士」と呼ばれ、地元の人たちから慕われる名峰・岩木山が雄大な姿を見せる。

「長谷川自然牧場」では豚を約10か月飼育する。通常、生後半年ほどで出荷されるので、はるかに長期だ。「丁寧に愛情持って育てます」とは、ここを営む長谷川光司さんと洋子さん夫婦。二人が大事に育てているため豚たちに警戒心はない。だから興味深げに来訪者の我々に近寄ってきたわけだ。

また、豚たちはそれぞれがみごとにピンク色で健康体そのもの。柵内を生き生きところげ、動き回り表情も豊か。養豚や養鶏でひんぱんに行われる、「密飼い」と呼ばれる狭い柵内での大量飼育とはまさに真逆。ストレスのない良好な飼育環境であるのが一目瞭然だ。そして、豚舎内に一切不快な匂いがないことに驚かされた。

楊枝で刺しても壊れない卵

長谷川さん夫婦は、以前は葉タバコ農家だった。だが、農薬散布により光司さんが体を悪くしたことから廃業。農薬を使用しない安全で安心して人が口にできるものを生み出そうと、牧場へと経営を切り替えたのだった。

当初はニワトリの飼育からだった。夫婦であれこれと調べていたところ出会ったのが発酵飼料。腐葉土、米ぬか、もみ殻、海水などを混ぜたオリジナルの飼料は、手を入れると熱いほど。活発に発酵している証拠だ。あちらこちらから集めた材料を混ぜ合わせ、一から飼料作りを行うのは非常に手間がかかることだが、長谷川さん夫婦の「安全な生産品を」という思いにゆらぎはない。外に出るとニワトリたちが広大な牧場に放し飼いにされ、あちらこちらを自由に走り回っている。自分たちで草や虫をついばむなど、自然のままの環境と良質な飼料により、滋味のある肉質とコクのある卵が生まれるのも当然だ。自然な色合いの黄身はぷっくりと艶やかで、生みたては楊枝をさしても倒れないほど新鮮だ。

自然と愛情で育つ熟成豚の旨み

養豚はニワトリ飼育で堆肥が不足し始めたことから始めたという。それが肉質がいい、おいしいと評判になり、今では「自然熟成豚」というブランドで牧場の中心的存在となっている。豚に与えるのは、もちろんオリジナル飼料。地元でとれる市場に出荷できない規格外のジャガイモや野菜などをたっぷりと与えている。豚舎内に匂いがしないのにも理由があった。もみ殻で作った炭を地面に敷き詰めたり、燻して散布することで空間全体を脱臭させているのだ。

この日、「試しに作ってみた」という生ハムを食べさせてもらった。脂身が甘い。噛みしめると肉の旨みがギュッと広がる。安全性とおいしさ。「長谷川自然牧場」の生産品のファンは全国に多く、東京など都市部の高級ホテルからも注文が届く。

「長谷川自然牧場」では、地元の学校の子どもたちの体験学習にも積極的に取り組んでいる。「命をいただく」ということがどういうことなのか。動物とふれあい、牧場体験をし、生産物を食べる中で子供たちに学びを与えている。自然に囲まれた津軽で誠実な夫婦が丁寧に育むものは、生産品だけではなく未来へ伝えたい日本の食環境でもある。

・問い合わせ

青森県西津軽郡鰺ケ沢町大字北浮田町字平野110
電話:0173-72-6579
http://www7b.biglobe.ne.jp/~hasegawasizenbokuzyou/index.html
※牧場体験は要予約
※商品の注文はファックスのみで対応。県内では鯵ヶ沢「海の駅わんど」、スーパー「K2マート」でも購入可能(仕入れにより品切れの場合あり)

文・写真 寺田 直子/トラベルジャーナリスト

更新: 2019年5月28日

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